岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】 作:雷鳥
いきなり後日談だと!?
「なんか釈然としないまま終わったんだが」
「まあ……な」
「身体は大丈夫なのかい白野君?」
「ああ。ただの生命力の消費による疲労と、身体を無理に動かした筋肉痛だけで済んだよ」
祐斗、一誠、匙、自分の男四人でファミレスで話し合う……実は既にあの戦いから三日経っている。
「にしてもお前の神器、いやその神器に『収得』されている道具の能力マジでチートだな。魔方陣に込められた魔力すら吸収するのかよ」
そう。結局魔方陣に込められていた魔力は自分の神器、いや神器だと思っていた『豊穣神の器』で全て生命エネルギーに変換する事ができた。お陰で自分が消費した分を回復できた。もっとも『物質化制御』で無茶な動きをした為にあのあと二日間ばかり筋肉痛で生活に苦労した。
「それにしても驚いたのは白野君の神器だよ。まさか本来の神器は別にあったなんて。よく気が付いたね?」
「知る機会が合っただけだよ」
本来の自分の神器の名は『王の証』。
その能力はシンプルだ。『ケルト神話派生の物の主権と所有権を得る。またその道具を己の概念に収納したり取り出したり出来る』と言ったものだ。
前者は解かりやすく言えば自分はケルト神話の派生品なら無条件でそれを扱えるということ。後者は能力を行使できるという点を除けばギルガメッシュの
収納する時は『
もっとも、一番怖かったのは『なんで豊穣神の器を持っていたか』なんだけどね。
そう。王の証は神器と言う理由はあるが、豊穣神の器の方も自分が生まれた時から持っていた物だ。
……誰かに渡された? だとしたら誰が?
「あとはあの白野の聖剣も凄かったよな。フリードが持ってた奴よりすげー綺麗だったし。前の白野仲間が使ってたんだよな?」
「ああ。あれはそれを再現したに過ぎない」
一誠が興奮しながら自分が作った黄金の剣を褒める。
みんなには物質化制御について詳しくは説明していない。過去の自分の仲間のスキルや武具、能力なんかを一時的に扱えるようにする魔術だとだけ答えた。
理由は一応自分の切り札でもある為、他に情報を漏らされたくなかった。リアス先輩とかは聞かれたグレイフィアさんやサーゼクスさんに言っちゃうだろうしね。全容を知っているのは協力してくれた黒歌だけだろう。
【
心象世界と繋がる事でそこにある知識と経験によって蓄えられた『情報』を数秒~数十分間『物質化』させ、それを魔力を送り続けて維持する。という魔術でその使用方法は三つの分類に分けられる。
一つ目は技術や技能を己の身体に書き込み、その技術や技能を一時的に使いこなせるようになる『
デメリットは使用するのに肉体がその技術を扱うのにどの程度適しているかで肉体への負担が増減するところか、普段鍛えているのに剣を扱えるように変化させただけで二日も筋肉痛で身体を動かすのも辛かった。
それとこのコードを使用すると右腕に刺青が浮かぶ。スキルを使っている証のようなものだ。能力が切れるにしたがって薄くなって行く。
二つ目は一般的な装備品や道具から、概念礼装、サーヴァント達が使っていた武装等を具現化する。『礼装具現ミスティックコード』。
特殊な効果を持つ物ほど具現時の消費が激しいが、その場合は効果を再現せずに武器として具現させれば、少しは消費を抑えられる。フリード戦ではこれを行った。ぶっちゃけサーヴァント達の武器ならその頑丈さだけでも十分に具現するに値する。
それと試してみたが、どうやら自分がかつて所有していた礼装や特殊な品も、その説明文通りの性能を発揮するみらいだ。
例えば『守り刀』を物質化したら、なんと破魔の力を宿した短刀が現れた。黒歌が言うには異形相手なら十分護身になりえる加護はあるらしい。短刀としては普通の強度なのであまり過信はできないとも言われた。
三つ目は自分が目標としている『
正直このために作った魔術だが、必要な魔力量が他を圧倒するほどの量となっている。
サーヴァントの召喚には少なくとも魂、精神、肉体、保有スキル、保有装備と全ての情報を物質化する必要がある。そのため現在では自分、黒歌、レイナーレ、朱乃の全エネルギーを費やしても不可能だという結論に至った。
そして一見万能そうな魔術だが、もちろん弱点がある。根本の弱点は二つ。
一つ。物質化できるのは自分の内側にある情報のみということ。現実世界の情報は物質化できない。
二つ。燃費が悪い。ただの武器として『永遠に遥か黄金の剣』を具現するのに黒歌とレイナーレのエネルギーをほぼ全て持っていかれた。剣術も、戦闘維持の為に常に自分のエネルギーを注いで維持していたが持って数分だった。
まあ自分一人では物質化できるスキルや出来る品も限られる。それを上手く扱いながら、コードキャストと豊穣神の器を駆使して頑張るしかないだろう。
「にしても……やっぱり魔王様ってすげーんだな。広域暗示であの夜の出来事は俺達以外は誰も覚えてない」
思案しかけた自分の意識が元士郎の言葉に引き戻される。
またあの変な装置によるピカーだったんだよなぁ。もう少しこう、夢のある暗示の掛けかたがあったと思う。
「にしても、討伐に協力した白い龍のアルビオンの宿主ヴァーリか。まったく、どうせ宿命を背負うなら女の子との出会いなら良かったのに。あ、でも戦いの宿命って考えると男の方が良かったのか?」
一誠が腕を組んで首を傾げつつ、若干どうでもいい事で悩み始める。
それにしてもまた新しい奴が現れたのか。
グレイフィアさんから聞かされたことだが、実際にコカビエルと戦ったのは、堕天使の長であるアザゼルがコカビエル粛清の為に差し向けたヴァーリという男性らしい。
レイナーレが教えてくれたが、なんでもアザゼルが幼少の頃から面倒を見ていて、戦闘力だけで言えば堕天使の中でも一桁台には入る強者らしい。
それに続くようにドライグが教えれくれたことだが、ヴァーリの神器は翼の形をした【
能力を効いた時に随分と反則だなぁと思った。チート能力の多い世界だ。羨ましい。
それとドライグとアルビオンは互いの戦いに決着を付ける為に、自身を宿した人間を巻き込んで何度も戦い合っているらしい。
この話を聞いた一誠がドライグに向かって怒りをぶつけていた。まぁ勝手にそんな戦いに巻き込まれていると知ったら、そりゃあ怒るわ。
「ヴァーリはコカビエルを圧倒したって言うし、今のままじゃ勝てそうにないな。俺ももっと強くならないと」
一誠の良いところは自分の弱さを受け入れ、それを克服しようと努力するところだよな。
一誠の諦めない姿勢に共感を覚えながら、他に起きた出来事を話し合う。
「そう言えば白野は良かったのか? せっかく聖剣が使えるって分かったのに教会に返しちゃってさ?」
「元々はゼノヴィア達の物だしね。それにあんな物を持ち続けたら教会に拉致監禁されて正規の聖剣使いにされそうで怖い」
それに向こうが欲しいのは自分の神器だろう。便利な道具袋扱いされるのは目に見えている。なんせケルト神話がある西ヨーロッパは彼らのお膝元なのだから。
「……連中ならやりかねないね」
元士郎の疑問に答えると、祐斗が呆れた表情で賛同してくれた。まぁ復讐を終えても、教会の組織に対する感情は別問題だから仕方ない。
「ま、今回の事件については今度の会談で話し合うって言っていたし、俺達下っ端は関係ないな」
「そう言えば部長が言ってたっけ。三陣営のトップ会談が開かれるって」
ついに三陣営のトップ会談か。このタイミングと言う事はたぶん今後のお互いの方針についての話し合いだろう……しかし準備が良過ぎる気がする。もしかしてどの陣営も切っ掛けを待っていたって事か?
「それより一誠、白野、聞いたぞ……まずは一誠! お前今回頑張ったからって、アーシアちゃんとグレモリー先輩に裸エプロンで添い寝して貰ったんだってな! そして白野、おまえハーレムに姫島先輩まで加えたんだってな!」
元士郎がこの世の全てを呪うかのような、おどろおどろしい表情を一誠と自分へと向ける。
「い、いや~あははは。まぁ、あれだ、うん。俺が言えることは一つ。あれは……良いものだ」
「まあ将来を誓っちゃったし」
「爆ぜろ!! なんだよこの差は! 俺だって頑張って結界張って次の日ヘトヘトになりながら学校行ったら『みんな良く頑張りました』で終わりだぞ!」
元士郎がありえないとばかりに天を仰ぎながら叫ぶ。
「匙君落ち着いて、お店の迷惑になるから!」
祐斗が必至に宥めるが効果はいまいちのようだ。
「はぁ~~。俺の会長を嫁にするって目標はまだまだ遠いなぁ。そういや、お前らの夢、つうか目標ってあるの?」
「俺はもちろんハーレム王だ!」
「知ってる。個人的にはそっちの二人に聞いてる」
一誠が胸を張って答えるが、元士郎は雑に対応してこちらに話を振る。
「僕は……正直今はそういうのは無いかな。とりあえずみんなに迷惑をかけた分、これからはグレモリー眷属の『騎士』として精一杯頑張るつもりだよ。今度こそ、僕自身の意思でね」
そう答えた祐斗の笑みは少し幼く見えたが、自信に満ちた曇りの無い良い笑顔だった。
「良いんじゃないか? 自分もそう言う夢とか無いし」
「へー意外だ。白野はなんと言うか、人生設計はもう考えてるのかと思ったよ」
「そうでもないさ………正直いきなり三人の嫁さんを得てしまってどうすればいいのか……どうやって養えば……」
全員子供は欲しがってるから最低でも一人は作るとして、自分と父さん母さんを入れて将来九人の家族を養う方法……う~ん……もっと勉強は頑張った方がいいか? それとも手に職をつけるべきか?
「おおう、物凄く重い理由だった。なんかゴメン」
自分が真剣に悩んでいると元士郎が物凄く慌てて謝って来た。
一誠も『そうか、俺もそういうの考えないといけないのか』と感心すると共に似たような表情で悩み始めた。
「あ~この話題は止めよう。でもそっか、今更だけどこの中じゃ人間なのはもう白野だけな訳だから、俺達は大人になったらいずれ冥界に行かなきゃいけないんだな」
元士郎の言葉に今度は祐斗も含めて全員が黙ってしまう。
……確かにそれは寂しいが、まあ仕方ない。
「まだまだ先の話だろ? とりあえず今は目先の事だな。これからもきっと何かあると思う」
とりあえず空気を変える為に率先して話題を振ると、元士郎がそれに乗ってくれた。
「うわ~そう考えると今年一年はかなりしんどい事になりそうだ」
「そうだね。一誠君の死亡事件以来、まるで何かに引き寄せられるかのように色々な事が起きているよね」
「待て木場。その台詞だと俺が元凶みたいに聞こえるだろうが。確かにドライグの話だとドラゴンは災いを呼ぶらしいけど。あ、あと女の子も寄って来るらしいから今から楽しみだぜ!」
「おい白野、お前の魔術で壁を作ってくれ。壁パンの時間だ」
「嫌だよそんなエネルギーの無駄遣い。自腹で代行に頼んでくれ」
「あはは、一誠君はブレないね」
結局その後は四人で他愛ない話をして、三人は悪魔の仕事があるので学園に向かい、自分だけで帰宅する。
一誠達と別れて、改めて自分の陣営の戦力を鑑みる。
基本家の最大戦力は黒歌だ。彼女は遠近どちらにも対応できるオールラウンダーとしての強さがあるし、仙術や魔術による結界術も得意で、普段からのサポートもこなせると、まさになんでもこなせる天才だ。
逆にレイナーレは今のところ一番弱い。そのことは本人も自覚しているらしくサポートに徹すると公言している。黒歌や朱乃から魔術を色々教わっているらしい。縁の下の力持ちになりそうで今から楽しみだ。
そして新しく加わった朱乃。彼女は完全な遠距離タイプだ。今はトラウマを克服する意味も含めてレイナーレから光力の扱いを習っている。レイナーレの性格が普段のリアス先輩に似ているせいか、そこまで険悪な関係にはなっていない。
早朝訓練では主に体力作り以外では自分達のマネージャーのような感じになっている。そして平然とセクハラしてくる。流石に今後は注意を厳しくしている。じゃないと他の二人もやりかねないからな。
そして今日……自分にはあるイベントが待っている。
「……お待たせしました白野君」
やって来たのは裸に白無垢といった格好で、お風呂に入ったばかりなのだろう。肌を赤くし、髪を僅かに湿らせた朱乃がやって来た。
「……優しくしてくださいね」
そういう彼女の瞳は……猛禽類の目をしていた。
アカン。これまた自分が食われる側だわ。
窓から差し込む朝日と雀の鳴き声で目が覚める。
結局予想通りの結果となった……。
襲われる女性の気持ちが解かった気がする。
隣を見れば、幸せそうに寝息をたてる朱乃の可愛らしい笑顔があった。
……まあ幸せそうな寝顔が見れたからいいか。
我ながら単純だなと思いながら、それでもそれで自分も幸せを感じるのだから、まぁいいかと開き直り、しばらくその寝顔を眺める事にした。
という訳でエクスカリバー編はこれ終了です。
急に時間飛ばした理由は後始末を書く労力と、全部白野の回想で済ませるのも内容的には一緒だと判断したので、丸々一話に纏めました。コカビエルも出ませんからね。
という訳で次回から三陣営の会談編ですね。ギャスパー君がやっと出てくるぞ!