岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】   作:雷鳥

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タイトル通りの戦いです。多分白野がまともに戦うのは初めてかな。




【聖剣VS聖剣】

「いやはや悪魔でも結晶に耐えられるとはな。今後の研究のテーマの一つに加えるとしよう」

 

 バルパーがパチパチパチと拍手しながら、興味深げに先程までの現象について口にする。

 

「さて、術は発動した。わたしはここで引き篭もらせて貰おうか。フリード、聖剣を使え」

 

「ほいほい」

 

 フリードが嬉々として一本になった両手剣の聖剣を掴む。瞬間、聖剣から眩い光が迸る。

 

「うほほう! 最高だぜバルパーの爺さん! 落ちたテンションが一気に爆上げ! こりゃもう誰かを殺すまで止まらねえぜ!」

 

 フリードがまるで新しい玩具を手に入れた子供の様にはしゃぎ、聖剣を軽く素振りしながら結界から出てくる。

 

 あの結界内に引き篭もるって事は、あの結界は少なくとも地震には耐えられるのだろう。そうでなければ彼らも地震に巻き込まれて死ぬ可能性があるのだから。

 

「……祐斗、バルパーは任せるぞ」

 

「……分かった。白野君、聖剣は任せるよ」

 

 祐斗がバルパーとフリード、正確にはフリードが持つ聖剣を交互に一瞥したあと……自ら聖剣に背を向ける。彼から託された想いを受け止め、フリードの前に立ち塞がる。

 

 時間もない。最初から……全力全開だ。

 

 聖剣を腰に帯刀し直す。

 

 肉体、脳、細胞、魂。あらゆる物を演算機とする。ただし意思だけは明確にそれを手繰り、己の意識を、先程作り上げた回路を通って『心象世界』へと接続する。

 

「おいおい天然で聖剣を扱えるからって、ずいぶんと舐められたもんだなぁ。ただの人間が、最強の聖剣を持った俺に勝てると思ってるのかぁ?」

 

 目の前でフリードがこちらを挑発するが、それを無視してフリードを警戒したまま背後に軽く視線だけを送る。

 

 後ろでは既にリアス先輩達の戦いは終わっていた。これなら大丈夫か。

 

『レイナーレ、黒歌、お前達の力を貰う』

 

『はい御主人様』

 

『ええ。持って行きなさい』

 

 念話で断りを入れて自分のエネルギーの不足分を、黒歌とレイナーレが活動に支障が出ない限界まで魔力と光力を貰う。

 

 概念情報の塊である心象世界から、一つの技能と一つの装具の情報を引き出す。

 

「『物質化制御(マテリアライズ)技能体現(スキルコード)――剣術」

 

 肉体に刺青のように術式が刻まれ浮かび上がる。その瞬間、肉体が『剣術も使える』体へと細胞レベルで変化する。

 

「『物質化制御:礼装具現(ミスティックコード)――永遠に遥か黄金の剣(エクスカリバー・イマージュ)

 

 肉体からオーラが掌に集まり……そして、その手に一人の正義の味方が抱き続けた黄金の夢が現れる。

 

「は?」

 

 目の前にいたフリードが呆けた表情をする。その間に、剣の柄を掴む。

 

 手に平から熱い何かが身体を駆け巡ると同時に、その手に掴んだ剣の輝きが増す。

 

 ――成功だ。

 

 この身に宿る力の体現、この手にした剣の具現、それら全ては見劣りする程の低ランク。

 

 それでも――これらは全て本物(実現)だ。

 

 己の目指した魔術の完成に心の中で歓喜する。

 

『情報の物質化』

 

 岸波白野が目指した魔術はそれのみ。

 

 ヒントはあった。

 

 聖杯が行っている英霊を実体化させる術式だ。

 

 あの術式は言ってしまえば『座』という英霊本体の情報が存在する場所から英霊の『霊子』、つまりその者を形作る情報をダウンロードし、魔力で作られた器である『擬似霊子』へとインストールする。

 

 擬似霊子にインストールされた霊子は固定化され『霊核』となる。自分達で言えば魂と同じだ。そして器である擬似霊子は送られた霊子通りの形を成す。

 

 演算機(ハイテク)に出来たのだから、人間(アナログ)でも同じことが出来るのでは無いかと考えた。

 

 己の心象世界を『座』とし、そこにある情報を『霊子』とし、それをエネルギーで作った『擬似霊子』に送る事で霊核として固定し、一時的にその情報を現実に物質化するというものだ。

 

 この魔術に複雑な手順はいらない。プログラムと一緒で必要なのは核となる『情報』と器となる『エネルギー』と、それを固定し維持する『意志力』のみ。

 

 複雑な事が出来ない自分にはこのくらいシンプルな方がいい。なんせやっている事は情報収集と肉体と精神を鍛えるだけだ。まさに脳筋極まれりな魔術だ。

 

 ……考察はあとだ。まだやるべき事がある。

 

 そして初めて『本来』の神器の名を口にする。

 

「【王の証(リア・ファル)――収得(アクイジション)】」

 

 帯刀していた聖剣に触れながら唱えると、聖剣は光となって自分の体に『収得』される。

 

 そして収得したエクスカリバーの能力情報が頭に送られてくる。

 

 なるほど予想していた通り『加速』能力か。

 

 もっとも解かるのはそれがどういった能力かだけだから『どういったことが出来るのか』までは分からない。豊穣神の器同様に模索して行く必要があるだろう……まぁ聖剣はゼノヴィア達に返すつもりだけど。

 

「は、おいおいなんだよそれ! バルパーの爺さん、こいつの聖剣はなんだ!? それになんで天閃の聖剣(エクスカリバー・ラビットリー)がこいつの体内に吸収された!」

 

「馬鹿な。ありえない。わたしの知らないエクスカリバーだと!?」

 

 初めてフリードとバルパーが二人揃ってうろたえる。

 

 その前で、祐斗もまた一本の剣を作り出そうとしていた。

 

「……僕の今までの思い。そしてこれからの願い。その二つを合わせる!」

 

 祐斗の両手に白と黒の光が浮かび、それがまるで螺旋を描くように収束し、一本の剣が現れる。

 

「禁手――『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』。お前のその防壁と僕の剣、どちらが優れているか勝負しようじゃないか」

 

 そう宣言した祐斗が、こちらに一度視線を向けたので、強く頷き返すと同時に自分達はそれぞれの敵目掛けて駆け出した。

 

「はっ! そいつがなんだか知らねぇが! 統合された最強のエクスカリバーに勝てる訳がねぇ!」

 

 フリードが振り上げた聖剣を勢い良く振り下ろした瞬間、地面が砕けて石礫が襲い掛かってくる。

 

 その攻撃を『加速』を使って回避し、フリードの背後に周って剣を振り下ろすが、フリードは咄嗟にエクスカリバーを盾にする。

 

「なっぐお!?」

 

 剣と剣がぶつかり合って火花が散る。その場に着地すると同時に、身体の捻りを利用しながら、横に斜めに縦にと、踊るように連続で剣を振り続ける。

 

「な、ぐ、ああ、くそが!!」

 

 凄いな。

 

 肉体が耐えられる限界まで加速して動いているのに、フリードはこちらの剣撃を防ぐ。その事実に驚くが、勢いは緩めない。そもそも長時間戦えない以上、余力を残すつもりは最初から考えていない。

 

「うおおおおおお!!」

 

 体力の消耗を無視して体に流れる『剣術技能』に従って体を動かし続け、そしてついに捌き切れなくなったフリードの左肩を切り裂く。

 

「ぐああっ!? ふ、ふざけんな! なんで最強のエクスカリバーを持つ俺様が傷を! それも片手の奴なんかに!」

 

 フリードが再度地面に聖剣を叩きつけて地面を爆裂させる。咄嗟にその場から飛び退くが、無理矢理距離を取らされてしまった。

 

 戦い慣れしている上に機転も利く。それに確かエクスカリバーにはそれぞれ能力があった筈だ。となると姿を消されたら厄介だな。

 

 浄眼を開眼する。これで奴が姿を消しても魂で追えるので問題ない。もっとも、戦闘の熱に当てられたのか殺気のせいで気配はバレバレだから、浄眼を開眼しなくても見つけられる気はする。

 

「伸びろ!」

 

 接近戦を嫌がったのか、フリードの聖剣が鋭さはそのままに、まるで意思を持った蛇の様に無軌道に動いてこちらへと向かってくる。

 

 ……遅いしそもそも聖剣の気配が強すぎて死角を突く意味がまるでないな。

 

 上下左右に動き回って死角を突いて来るが、そのことごとくを迎撃して弾く。

 

「クソが、なんで当たらねぇ! 無敵の聖剣様なんだろ! 昔から最強伝説を語り継がれてきたんだろうが!」

 

 フリードは中々殺せないことに焦りを覚えたのか、苛立った表情で己が扱う聖剣に罵声を浴びせる。

 

 ――そろそろ限界か。

 

 物質化制御の限界を感じ、次で決める為に一度距離を取り、片手故に肩にかけるように『永遠に遥か黄金の剣』を構える。

 

 

 

「ああ? その目はあれですかぁ? 次ぎで決めてやるって目ですねぇ。ヒヒ、いいですよ受けて立とうじゃあっりませんか!」

 

 フリードの持つエクスカリバーが鞘の部分も含めて消え、フリードは上体を屈めて腕を引き、刺突の構えを取る。

 

 自分はその構えに注意を払いながら……一気に加速する。

 

「ぎゃははは! 串刺しになりな!」

 

「……悪いけど」

 

 急に『枝の様』にこちらへと伸ばされた複数の刀身の気配を感じながら、その気配を頼りに体や顔に切り傷を作りながら最短ルートを駆け抜ける。

 

「自分を串刺しにするなら地面から槍でも生やすんだな!!」

 

「はああ!? なんで避け――っ!?」

 

 驚愕するフリード目掛けて剣を振り降ろし、フリードの右肩から腹部目掛けて引き裂いた。

 

「ぎゃあああああああっ――!!」

 

 フリードは絶叫するがその絶叫は途中で止み、奴はそのまま白目を向いて倒れ伏す。誰がどう見ても致命傷だ。気絶したのはせめてもの生存本能だろう。もっとも、出血具合と傷の深さを考えると街がなく死ぬだろう。

 

 それを確認すると同時に『永遠に遥か黄金の剣』が砕け、身体の刺青が消える。物質化の限界時間に達したか。

 

 一気に肉体を疲労感が襲い、集中していた頭は頭痛で響くが、それらを堪えて傍に落ちていたい聖剣を『収得』で己の中に仕舞う。あとで全てゼノヴィアに返せば問題ないだろう。

 

 振り返って祐斗の方を見ると、どうやら向こうも決着がつくところのようだ。

 

 祐斗は突きの形で聖魔剣をバルパーの結界に突き刺していた。

 

 放電のような音を放ちながら徐々に防壁には皹が入り、それはどんどん広がって行く。

 

「馬鹿な。こんな馬鹿なことが有り得るのか!? 聖魔剣に八本目のエクスカリバーだと!? いいや、八本目の聖剣は兎も角、貴様の聖魔剣は絶対に有り得無い! 反発し合う聖と魔が合わさる等、ある筈が無い!」

 

 うろたえるバルパーはそのまま結界内で後ずさる。

 

「……終わりだバルパー。覚悟を決めてもらう」

 

 祐斗の宣言通りあと数秒で防壁は砕けるだろう。

 

 だというのに、バルパーはまるで別の事を考えるように恐怖に慄きながらブツブツと何かを呟き続ける

 

「……そうか、バランス。聖と魔のバランスがそもそも崩れているとしたら……だとしたら……魔王だけではなく」

 

 バルパーの呟きの最中。ついに防壁は砕かれ、祐斗はそのまま突貫し……バルパーの胸を貫いた。

 

「がはっ!? あが、か、がみも、すでにじんで……ごぼっ!?」

 

 祐斗が剣を引き抜くと共に、バルパーは最後に意味深な事を呟きながら仰向けに倒れ、血反吐を吐き……動かなくなる。

 

「……みんな、仇は取ったよ」

 

 祐斗は空へ向けて聖魔剣を掲げる。

 

 その姿を見届けたあと、背後へと振り返れば自分達を信じて戦いを見守ってくれていたみんなが駆け寄ってくるところだった。

 

 ……さて、良い雰囲気だが……あとはあれだな。

 

 自分は祐斗の立つ下で、今も尚輝く魔方陣をどう処理するか悩むのだった。とりあえず『豊穣神の器』を使ってみて、駄目だったらまた別の対処法を考えよう。

 

 そう考えながら、自分は掌を魔方陣へと置いた。

 




という訳で白野の新しい魔術と本来の神器の公開でした。正直イマージュはやりすぎたかもしれないと若干反省。しかし後悔は無い!


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