岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】   作:雷鳥

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今回は主人公の浄眼についての説明です。型月の『浄眼』設定が曖昧なので、いくつか独自設定を織り交ぜています。原作通りではないので注意してください。(そもそも原作に明確に登場しているは志貴のお父さんの話の時だけかな?)

あと、今回登場するキャラが原作より残念になっています。タイトルで誰かは分かると思う。




【堕天使との邂逅】

 帰りにお気に入りの和菓子屋でタイヤキをいくつか購入し、この辺りでは比較的大きい公園に足を運ぶ。

 

 食べ歩きは流石に帰宅ラッシュ時は人に迷惑だからなぁ。

 

 噴水近くのベンチに座って学園での事を思い出し、自分の特異な眼、【浄眼(じょうがん)】について考える。

 

 そもそも浄眼という言葉を教えてくれたのはキャスターだ。切っ掛けはある『化物』との戦い。

 

 そいつに切られた瞬間、サーヴァントの行動が『完全に殺される』のだ。攻撃という行為を殺され、防御という行為を殺され、果てにはスキル能力まで殺される。

 

 ……よく勝てたな。

 

 多分向こうが本気じゃなかったのだろう。自分達の前に99体のサーヴァントと戦っていたみたいだし、獲物もナイフだった。倒した後も余力を残した感じで去っていった。

 

 でも、どこか放っておけない感じの人だったな。

 

 化物と形容したが、相手は人間だったしかも女性。彼女が言うにはムーンセルに『迷い込んでしまった』だけらしい。きっと藤村先生のせいに違いない。

 

 そんな彼女が使っていた能力。セイバーやアーチャーは経験則と直感でどういったものかは理解していたみたいだが、キャスターは正確に見抜いていた。

 

『御主人様、あれは『死を視る』能力者です』

 

 戦闘後のマイルームで化物について考察している時にキャスターが教えてくれ。

 

【死を視る眼】

 

 位置づけとしては魔眼でもいいらしい。あまりにも珍しく正確な名は存在していないんだそうだ。

 

 能力はその名の通り『物の死』を視覚的に捉え、その死を切るなり突くなり破壊するなどすることでどん存在でも殺せると言う。なんとも反則じみた能力だ。

 

『いいですか御主人様、アレはダメです。決して自ら欲してはいけませよ』

 

 珍しく真剣な表情で語る彼女に更に詳しく尋ねると、まずその『死を視る眼』になった時点で世界が一変すると教えられた。

 

『あの化物がどのように世界が視えているか分かりませんが、まともな世界でないのは間違いありません。想像してみてください。常に死の見える世界を』

 

 キャスターの言葉に自分も頷いた。それはそうだろう。『死』なんてものが現実世界と合わさって常に見えるということは、それはもう『別世界』と言ってもいい程の違いがあるはずだ。

 

『まぁ適性があったのか、あの化物はあの眼を使いこなしていたので、多分視覚化の強弱くらいは出来ているとは思います』

 

 とりあえず『視え無くなる』ことはないが『視え難くする』ことはできるらしい。もっとも、それにはかなりの集中力がいるので、常に気を張っていないといけないらしい。

 

 魔眼の類について興味が湧いたので更に色々とキャスターに尋ねると、彼女は自分に頼られたのが嬉しいのか、嬉々として色々と教えてくれた。その中にあったのが浄眼だ。

 

 浄眼とは簡単に言えば『人ならざる物を見極める』眼の事だ。

 

 まず浄眼に共通しているのは『異質を見抜く』ことであり、結界の類や呪詛などの異質な現象も視界に捉えれば『感じ取る』ことができる。

 

 しかしその在り方は宿す者の性質で変わるらしく自分は相手の『魂』を視る事に特化した浄眼だった。

 

 浄眼は死を視る眼同様に常に発動していて、視覚化の強弱が可能だ。通常時は相手の魂の本質がもっとも解りやすい形として視覚できる。

 

 悪魔なら背中に悪魔の羽、動物の妖怪なら耳や尻尾といった物が半透明で確認できる。因みにハーフや別の種族が別の種族に生まれ変わった時にその種族の特性が残っている時は両方見える。黒歌が良い例で、彼女は猫又から悪魔に転生した為、耳と尻尾以外にも悪魔の羽が見える。

 

 集中する事でより詳しく具体的に視覚できるようになる。まず見えていた特長はそのままに、体の中心に魂の核であるソフトボール大位の光る『球体』が浮びあがる。

 

 核の色も種族によって違う。人間や動物は水色。悪魔が赤紫。妖怪は青だ。黒歌は赤紫と青が含まれた魂だ。

 

 ここまではなんら問題ない。だが、ここから更に集中し、自分が【完全開眼】と名付けた領域まで眼の力を上げると……世界が灰色へと一変する。

 

 まるで写真から色を抜き取ったような景色となり、色がついているのは核である『魂』と、それを護るように灯る『炎』と、そこから放たれる『光の線』だけになる。

 

 魂とは精神の器でもある。炎はその精神を視覚化したもので、炎の大きさ、灯る色、色の明暗が相手の感情によって変化し、それを視覚する事で相手が何を考えているのかを直感で理解できる。

 

 更にその炎から光りの線が放たれる。炎は精神そのもので、光の線が『これからこう動く』という思念の『予告線』として視覚化されているみたいだ。戦闘時には助かるが、正直日常生活ではあまり見たくない光景だ。

 

 もっとも浄眼を完全開眼する事は戦闘時でもないかりぎり殆ど無い。何せ魂と炎と線にしか色がない世界になってしまうのだ。正直居心地が悪い。もしかしたら死の眼もこんな感じに別世界に見えていたのかもしれない。

 

 それに完全開眼した後に元に戻すと眩暈が起きることから、少なからず身体か脳に負担が掛かっているとみて間違いない。最悪見える世界が元に戻らなくなる可能性がるのではないかと思っている。

 

 正直浄眼はせいぜい大勢の中から特定の相手を見つけたり、相手の嘘を看破するくらいにしか役に立たないと思っている。相手の気配や動きを探るなら別に黒歌に教わっている仙術による気配察知で十分だ。

 

 そんな事を考えながら、買ってきたタイヤキの入った袋をいざ開けようとしたその時――突然目の前にありえないモノが空から降り立った。

 

「うん。やっぱり候補の中じゃ、ヤるならここよね」

 

 黒い鳥のような羽が生えた痴女が現れた!?

 

「人通りも少ないし、ここにしましょ――」

 

 目の前に降り立った際どいボンテージスーツを身に纏った女性は、こちらに気付いた様子もなく、大きな胸と黒く長い髪を揺らして得意げに頷き、こちらに振り返った瞬間……その得意げな笑みのまま硬直した。

 

「…………」

 

「…………」

 

 なんとも言えない時が流れた。どうしよう。声掛けるべきか?

 

「……タイヤキ食べます?」

 

「あ、これはどうも」

 

「いえいえ。では私はこれで」

 

 袋からタイヤキを取り出して人外の女性に手渡し、そそくさとその場を後にしようとしたその時、背後から思いっきり肩を掴まれた。

 

「待ちなさい! 今あなたって、これウマっ!?」

 

 焦ったような怒ったような顔でこちらに迫る女性だったが、タイヤキを口に含んだ瞬間に驚きの表情を浮かべる。というか、この状況で食べるか普通。

 

「ちょ、もぐ、待ってなさい! いい、んぐ、命令よ!」

 

「あ、はい」

 

 必至にタイヤキをもぐもぐする仕草が妙に可愛くてつい言う通りに指差されたベンチに座ってしまった。

 

 それからしばらくして満足気な顔でタイヤキを食べ終えた女性は、先程までの緩んだ顔から引き締まった表情でこちらに振り返る。

 

「……ふぅ。さて人間、わたしの正体を見たからには――」

 

「口の端に餡子ついてます。どうぞ」

 

 台詞の途中でどうしても気になったのでハンカチを取り出して注意すると、女性はしばらく固まったあと、胸元から手鏡を取り出して、渡したハンカチで口元を拭った。というか今の手鏡、胸の谷間から出てきたぞ!?

 

「………ふっ。では人間、私の正体を見たからには、生かしては帰さないわ」

 

 理不尽だ。勝手に目の前に降りて来たのに。そしてなんだこの可愛いドジっ娘。

 

「そもそもお姉さんは何者ですか? 鴉の妖怪?」

 

「あんな雑食動物と一緒にするんじゃないわよ! そうね。自分を殺す相手くらいは教えてあげるわ。いい? わたしはレイナーレ! この世でもっとも崇高な種族である堕天使よ。覚えておきなさい」

 

 高笑いと共にドヤ顔で宣言される。堕天使、そうか、あれが堕天使の羽なのか。

 

「そうですか。自分は月野白野って言います。殺されるのは嫌なので……タイヤキで手を打ちませんか? 色々種類がありますよ?」

 

 そう言って、彼女がタイヤキを頬張っている間に考えていたこの場を収める方法を実行する。まぁ成功する可能性は極めて低い作戦な訳だが。なんせ食べ物で釣るだけだし。

 

 袋の中からタイヤキを取り出して堕天使の女性、レイナーレに見せる。

 

「……いくつ?」

 

 タイヤキを見るなりそう口にした。真剣な目で。あ、これ行けるかもしれない。

 

「四つ。味は白餡、栗餡、カスタード、チョコ!」

 

「…………いいわ。美味しくなかったら殺してあげるから、あなたはそこで座って待っていなさい」

 

 間をたっぷり空けた彼女は、同じペンチに少し離れて座り、タイヤキを頬張り始めた。それにしても、際どい衣装のままタイヤキを食う女性の絵と言うのは……なんともシュールである。

 

「これは……カスタードがこんなに……チョコの香ばしさが際立って……和菓子、侮れないわ。まさか餡の違いでここまで違うなんて……」

 

 四つのタイヤキを完食したレイナーレは、渡したハンカチで今度はちゃんと口元拭き、『ふぅ~』とご満悦な表情で溜息を吐いた。

 

「まさか人間界にこんなに美味しい物があるとは。ま、いいわ。今回は見逃してあげる。でもいいわね。私の事は誰にも喋るんじゃないわよ。ま、話したところで信じないでしょうけどね。フフフ」

 

 これ以上話すことはないと言いたげに飛び立つレイナーレ。そして気付く。

 

「あ、ハンカチ返して貰ってない」

 

 まあハンカチを持っていなかったみたいだし、プレゼントしたと思えばいいか。

 

「よっと」

 

『エネルギー』を消費して小倉味のタイヤキを『作り』、口に含む。

 

「う~ん自分で作って自分で食べても意味無いんだけど、まあ食べることに意味があるよね。うん、やっぱりここのタイヤキは美味しい」

 

 自分で作り出した味と触感が完全再現されたタイヤキを食べながら、自分のこの能力は便利だなぁと改めて思い知った。

 




と言うわけで原作よりもレイナーレが残念美人になってしまいました。

……いや、なんかね。何故かアニメや小説のレイナーレを見ていたら甘い物に弱いイメージが浮かんだんですよ。結果こうなりました。



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