岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】   作:雷鳥

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と言うわけで前回の続き。今回からだんだん物語が動いて行く予定。



【聖剣使い】

 バルパー。そいつが全ての元凶か。

 

「それじゃあ次に聖剣計画について説明するわ。その前に、ハクノンはどれくらい聖剣計画について知っているかを教えてくれる?」

 

「ああ。自分が知っているのは――」

 

 とりあえず知っている聖剣計画の内容と、その実験で祐斗達に起こった出来事を二人に伝える。

 

 あまり気持ちの良い話ではないのは二人も理解しているのか、話の最中は難しい表情をしていた。

 

「……そう。まあ聖剣計画事態については殆ど理解しているのね。でも、誤解しないでね。バルパーがクズだっただけで、計画自体はとても素晴らしいものなのよ? 実際その木場祐斗の一件以降、計画の内容は見直され、わたし達聖剣使いが誕生したの」

 

「薬も使う者が愚かなら毒薬になる、の良い例だな」

 

 ……んん?

 

「え? 二人って聖剣使いなの? というか、それって教えて大丈夫なのか?」

 

 しれっと告げられた事実を二人に確認すると、二人共しばらく固まったあと、汗を流しながら視線を明後日の方へ逸らす。

 

「だだ、大丈夫うん。ほら、嘘はいけないじゃい? 信徒として!」

 

「そ、そうだな。正直者であることは悪い事ではない」

 

 あ、これ絶対知られたら後で怒られるな。

 

「……まあ別に言い触らすつもりも無いからいいけど……でもそう考えると気になる点がいくつ出てくるな」

 

「それは?」

 

「祐斗達を『子供』の段階で殺したことだ。普通、才能や素質というのは時間と言う水を与えて育てるモノのはずだろ? 事実二人はその聖剣使いとして適任だと思われるまで訓練をしてきたはずだ。にも関わらず祐斗達の場合は『適性が無い』と言うだけで殺した」

 

 リアス先輩から聞かされた祐斗の話と、二人から聞かされた話を頭の中で纏め、推理した結果を二人に伝える。

 

 こちらの推理を聞いた二人は驚いたように目を見開いたあと、真剣な表情で考え込む。

 

「……確かに。盲点だった。何故子供の段階で殺したのか、か」

 

「記録では用済みだから処分したと証言したらしいから、バルパーの趣味ってことは無いわね……」

 

「つまり、聖剣を使うにはなんらかの『必須条件』があって、バルパーはそれを知っているって事か……そう言えば、そのバルパーは今は何所に居るんだ? さすがにそんなヤバイ奴に監視をつけないって事は無いだろ?」

 

 とりあえず考えが煮詰まったので、今度はバルパーについての情報を収集する。

 

「奴は今、堕天使の陣営に組している。最後の監視記録がそうなっている」

 

「ええ。聖剣使いとして、彼の事を反面教師としてかなり教えられたからね。間違いないわ」

 

 ――ちょっと待て。

 

 何かが頭にはまりそうだった。

 

 足りないピースがあった。

 

 今日までの出来事。

 

 今日までに手に入れた情報。

 

 それを結ぶ大事な何かが足りなかった。

 

 ――その大事なピースを……目の前の『聖剣使いの二人』が持っている予感がした。

 

「単刀直入に訊く――」

 

 二人がこちらの変化に気付いたのか、何を言われるのかと、表情が険しくなる。

 

「――二人は何しにこの街に着た」

 

「わたし達は――っ!?」

 

「っ!? まさかそういうことなのか!?」

 

 自分の言葉の意味を最初は理解していなかったのか、イリナが首を傾げたが、すぐに何かに気付いて表情を険しくさせ、隣のゼノヴィアも何かに気付いて慌てる。

 

「そうよ。どうして気付かなかったの。奴なら聖剣の保管場所くらい熟知しているわ!」

 

「ああそうだ。そして聖剣を求める理由も『聖剣使いを作れる』理論を知っている奴なら求めて当然だ!」

 

 二人が慌しく立ち上がる。

 

「ごめんハクノン! 悪いけどわたし達、すぐに行動を開始するわ!」

 

「ああ。もしもコカビエルがただの陽動で、奴がこの街を出てしまったら、最悪の事態になる!」

 

「あ、おい!」

 

 二人はこちらが呼び止めるのも聞かずに慌てて出て行ってしまう。

 

 コカビエル。新しい名前だ。確か聖書に出てくる堕天使だったか。なるほど。つまり今この街で起きているのは、天使陣営と堕天使陣営の聖剣争奪戦っと言ったところか?

 

 推理としてはそれ程間違ってはいないはずだ。まずはこの情報をグレモリー眷属のみんなに伝えよう。少なくとも事件が起きている事はイリナ達が接触しているだろうから分かっているはずだし。

 

「……まずはレイナーレにコカビエルについて訊いてからだな」

 

 まずはもう少し情報を集めよう。

 

 さて、とりあえず会計を済ませよう。なんせ店員が物凄くこちらを見ているからだ。

 

 そりゃ同席していた奴らが駆け足で店を出て行けば当然の反応だよな……食い逃げなんてしませんよ。

 

 レジで店員さんにお金を払って店を出て、レイナーレに連絡を入れる。

 

 確か今日は非番の日のはず。

 

『もしもし?』

 

「あ、レイナーレか? 自分だけど」

 

『……偶に思うけど、自分の事を自分って呼ぶ奴って珍しいわよね。まあおかげで誰だか一発で判るんだけど』

 

 ほっといて欲しい。ずっとそうして生きてきたんだから今更変える気は無い。

 

「そんな事より訊きたい事があるんだ。コカビエルって堕天使を知っているか?」

 

『――ちょっと待ちなさい。なんでその名前を出したのかを説明しなさい。あんた、ぜえええええったい! またなんか厄介事に巻き込まれたでしょ!』

 

 す、鋭い。さすがのレイナーレも鍛えられてきたのかこっちの言動で何かを察したらしい。

 

『やっほ~御主人様~。だから何かあった時の放課後は早く帰宅するよにっていつも言ってるにゃん』

 

 レイナーレの叫びでやって来たのか、呆れたような声色の黒歌が携帯に出る。

 

「お説教は後で聞くから、今は情報が欲しい。コカビエルについて知ってるなら教えてくれ。どうやらこの街に潜伏しているらしい」

 

『――マジ?』

 

「ああ。奴を追っているらしい人物達からの情報だ」

 

『最悪だわ。どうしよう。そうよまずは逃げる準備を義母様(おかあさま)義父様(おとうさま)の安全確保を……』

 

『おおお落ち着きなさいレイナーレ! そんな判りやすくパニクってるんじゃ無いわよ』

 

『落ち着けるわけ無いでしょ! 堕天使の陣営でも戦いが大好きな戦闘狂で知られる幹部がこの街にいるのよ! 理由は知らないけど戦いの無い場所に奴は来ない! この街で幹部レベルの堕天使が力を振るったら、数分でこの一帯なんて焦土と化すわ!』

 

 携帯越しにレイナーレの必死な言葉が耳に届き、正直戸惑う。

 

 おいおい、そんなにヤバイのかよ。そのコカビエルって。

 

 だが組織の幹部だというのならそれも当然なのかもしれない。少なくとも魔王レベルなのは間違いないのだから。

 

「落ち着けレイナーレ! とりあず自分はすぐに帰宅する! その間に情報をグレモリーのみんなに伝えて対策を立てて貰う! 黒歌、悪いがレイナーレと一緒に母さん達の安全確保を頼む!」

 

 周りの人の視線を無視して可能な限り大声で喋ってレイナーレを落ち着かせ、傍に居るであろう黒歌に指示を出して携帯を切る。

 

 とりあえず冷静に対処してくれそうな人にまずは連絡を入れよう。

 

 そう考えたときに一番に浮かんだ相手に連絡を入れる。

 

 何かあった時のためにって、腕を無くした時に教えてくれたんだよな。まさかこんな形で役に立つなんて。

 

『はい。支取です?』

 

「あ、支取先輩ですか! 白野です!」

 

『そんなに大声じゃなくても聞こえています。それで、何があったのですか?』

 

 さすがは生徒会長! 連絡しただけで既に何かあったと察してくれたぞ。そこに痺れる憧れる!

 

 って、ふざけてる場合じゃない。

 

「はい。実は先程――」

 

 走りながら先程までイリナ達と話し合った内容やレイナーレから聞いたコカビエルの情報を出来るだけ簡潔にまとめて伝える。

 

『――なるほど。分かりました。対処はこちらで行います。あなたはそのまま帰宅してください。いいですね。決して関わってはいけませんよ。あなたは今、片腕なのですから』

 

「……分かりました」

 

 厳重に注意される。だが確かに、この街全体の規模となると人間の自分に出来る事なんて家族を守ることくらいだろう。

 

『よろしい。ではわたしもすぐに動きます。情報提供、ありがとうございます月野君』

 

 最後にお礼を言って支取先輩からの連絡が切られる。

 

 さて、伝える事は伝えた。あとはみんなにまかせよう。

 

 携帯を仕舞い、とりあえず今はレイナーレ達との合流を優先する事にした。

 




原作読んでて思っていた疑問点を上げ、それを推理した結果このような展開になりました……と言うわけで、イリナとゼノヴィア……特にイリナの出番はここで終了です。因みに擬態の聖剣は登場する(能力として)

イリナ「……え?」
擬態の聖剣(ドヤァ)


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