岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】 作:雷鳥
う~んオチまでの持っていきかたで悩む……。
部活動対抗試合のドッジボールはオカルト研究部が優勝した。そりゃそうだ。だって悪魔だもん。それに参加している面子が学園でも有名な美少女だ。ボールを当てた日にはファンクラブからどんな目で見られるか分かったもんじゃない。
もっとも、部活のみんなは心から優勝を喜べてはいないのは間違いないので、クラスに戻る前にみんなの元に向かう。
校舎に入ってすぐにみんなを見つけて声を掛けながら駆け寄ろうとしたその時、祐斗がリアス先輩に平手で叩かれた。
「どう? 目は覚めたかしら?」
怒気を含んだ声色と不機嫌を隠さないイラついた表情で冷たく言い放つリアス先輩。正直かなり怖い。が、同時に当然だろうとも思う。
祐斗は今回の試合で終始上の空だった。
注意されればしばらくは動いているのだが、しばらくするとまた呆けて立ち止まる。その繰り返しだった。試合中、リアス先輩と一誠の表情がどんどん険しくなって行き、試合が終わってついに爆発したのだろう。そしてその行為を誰も止めないと言う事は、みんなそれぞれ思うところがあったと言うことだろう。
一誠なんてリアス先輩の行動に凄い頷いている。まぁ一誠はこの日の為に部員全員分の鉢巻を作るくらい活き込んでいたからな。
しばらく祐斗と一誠が何かを言い合っていたが、祐斗が頭を下げてみんなの元から去る。たく。何やってんだ。
「祐斗……」
「……白野君?」
こちらに歩いて来た祐斗に声を掛ける。
「痛そうだな保健室に行くか?」
「大丈夫だよ。それと、今日は悪かったね」
短くそう告げて祐斗はすぐに自分を通り過ぎる。そんな彼の背中に向けてある単語を告げる。
「聖剣」
たった一言、それだけで彼は足を止めた。
「お前がおかしくなったのは一誠の家で聖剣を見てからだ。いったいお前と聖剣の間に何があった?」
「……君には関係ないよ」
「それで引くなら腕なんて無くしてない。諦めが悪い性格なのは知っているだろ? 事情を知っていようが居まいが……首を突っ込むぞ?」
自分の決意を伝えると、祐斗は溜息を吐きながら空を見上げた。
「思い出したんだよ――僕が成さなければならない事を」
そこで言葉を切った祐斗はこちらに振り返る。その顔は……憎悪で歪んでいた。
「聖剣エクスカリバーの破壊。それが僕の本当の戦う意味だった。その為に僕は……生かされたんだ」
祐斗は今度こそ話は終わりだと言うようにその場を去ろうとする。
「それは……自分が腕を失った時に言った誓いよりも、成さねばならない目的か?」
足音が止まる。
しばらくそのままお互いに背を向けたまま沈黙する。
そして……祐斗の足音が再開される。
結局、祐斗は何も答えなかった。
振り返りってどこか寂しげに沈んだ印象を受ける彼の背中を見送る。
多分、今の祐斗に何を言っても自分の言葉は届かないだろう。今は少しだけ時間を置いて、祐斗が少しでも冷静になれる事を祈るしかない。
さて、こっちはこっちで話を訊くか。
自分達のやりとりを遠巻きに見守っていてくれた部活のみんなの元に向かう。
「白野、祐斗はどうだった?」
リアス先輩が少し不安げな表情で開口一番にそう質問してくる。その問いに自分は首を横に振って答え。今度は自分からリアス先輩に質問する。
「先輩、祐斗と聖剣に何があったのか、教えて貰えますか。祐斗は言いました。エクスカリバーの破壊こそが、自分の戦う意味だと」
「……そう。ここ最近、特に白野と過ごすようになってから鳴りを潜めていた彼の復讐心が何かの切っ掛けで顔を出したという訳ね。……いいわ、教えてあげる。みんなにも説明するから、放課後部室に集まってちょうだい」
リアス先輩の言葉に全員が頷き、一度その場で解散する事になった。
教室でHRを終えて一誠とアーシアと共に部室に向かう。気付けば外は雨が降っていた。祐斗は大丈夫だろうか……。
そんな事を考えながら部室で合流した小猫ちゃんと共に先輩方が来るのを待つ。
「お待たせ。それじゃあ話しましょうか、祐斗と聖剣について」
やって来たリアス先輩はいつものソファーに座って神妙な面持ちで語ってくれた。
『聖剣計画』
キリスト教内で行われた聖剣エクスカリバーを扱える者を育てる計画。
聖剣は悪魔に対しての最大の武器である。その為扱える人間を増やすという考えのこの計画は教会、天使側から見れば当然の計画だとも思う。
しかし計画は難航し、祐斗を含んだ同志達全員が、聖剣に適合できなかったらしい。
その結果、祐斗以外の全員が処分された。ただ聖剣が扱えないというそんな理由で。祐斗が生き残れたのは祐斗の仲間が彼を逃がしたからだそうだ。
共に育った仲間を殺された祐斗にとって、聖剣という存在、特にエクスカリバーは決して許せる存在では無かった。
「わたしが始めて祐斗と出会った時、彼は瀕死の重症だった。そんな状態でも彼の目には強い生への執着があったわ。だからわたしは彼を助けたの。その執着が例え憎悪と復讐の念だったとしても、そういう想いがある者は強くなる。実際、祐斗は剣士としてかなりの才能を有していた。いずれその想いと力を新たな生の為に振るって欲しいと思っていたのだけど……はぁ。世の中ままならないわね」
リアス先輩は顔を顰めて眉間に手を当てながら溜息を吐く。
「木場にそんな過去があったなんて……」
「知りませんでした……」
一誠とアーシア、小猫ちゃんが沈痛な面持ちで顔を下げる。
「――首謀者は?」
可能な限り冷静さを失わないように勤めてリアス先輩に尋ねる。
「残念だけど解かっていないわ。流石に教会側の情報は得るのが難しいし、何より今の話も祐斗本人から聞かせて貰った話だもの」
なるほど。その計画を進めた者が誰か分からないから……祐斗は復讐の対象を聖剣にしたと言うわけか。
結局その後の話し合いは有益な内容とは成らず、結局見守るしかないと結論付けて解散する事になった。
正直な話し、復讐の対象がいない以上はどうしようもないとも思う。自分達に出来る事は今まで通り祐斗に話しかけてあげることくらいだろう。
何か切欠でもあればいいんだけどな。そんな事を考えながら家に帰ると黒歌が少し慌てた様子でやって来た。
「あ、お帰り御主人様。大丈夫だった?」
「ん? どういうことだ黒歌?」
「どうもこうも。家の周辺に二回もエクソシストの反応を感じたのよ。それで何かあったのかと思ってメールしたのに返事が無くて心配したわ。あ、レイナーレにはもう送って注意するってメールが来たわ」
「そ、そうか。色々あって確認してなかった。こっちは特に何も無かったよ」
黒歌の罪が許され、晴れて自由の身になった彼女には、今はこの家を、父さんと母さんを守って貰っている。
彼女は彼女でずっと独自に結界術の特訓を詰んでいたようで感知タイプの結界を家の周囲に球体状に張り、人間以外の者や光力を扱う悪魔祓いが結界内に侵入すると、彼女が感知するという仕組みだ。
「白音にもさっき注意するようにメールしたから多分グレモリーのお姫様にも話は行ってると思うにゃん」
黒歌がスマフォを揺らしながら答える。レイナーレと黒歌が本格的にこの家に住む事になった時に彼女達の連絡用に買った物だ。因みに自分は携帯である。愛着があるのでずっと使っている。因みに黒歌はスマフォの扱いを一日で完全にマスターしてレイナーレが悔しそうにしていた。やはり黒歌の基本スペックは高いと思う。
「一応自分もリアス先輩にメールを入れて支取先輩にも伝えるように言っておくよ」
黒歌の話の内容をメールで送る。
「それじゃあ今日はレイナーレを迎えに行こうか。何かあったら困るし」
「そうね。わたしも付いて行くにゃん」
それにしてもまた何かが起きようとしているのか、今のオカルト部はバラバラだしなぁ。
嫌な予感を感じながら、時間になるまでリビングで黒歌とボードゲームで遊びながら時間を潰し、レイナーレを迎えにいった。
因みにボードゲームは黒歌の圧勝である(ハクノンは実戦派だから仕方ない)