岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】   作:雷鳥

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今回で合宿終了です。次回からようやくゲームです。もうすぐフェニックス編も終わりだなぁ。



【合宿終了】

 合宿もついに八日目。

 

 最近ではみんな少し余裕が出来たのか数日前は部屋に戻るとすぐに泥のように寝ていたが、少なくともお喋りするだけの余裕が出来た。朱乃さんなんて自分がお風呂に入っている時に乱入してくるくらいだ。

 

 セクハラもいいところなので、合宿中は一人では風呂には入らない宣言したら朱乃さんが絶望の表情でその場に崩れ落ちた。彼女のそのセクハラにかける情熱は一体なんなのだろう?

 

 それと魔法の訓練をしていた一誠にも成果が現れ、一つの魔法を修得したらしい。本人は本番まで内緒と言って教えてくれなかったが、全容を知っている朱乃先輩が問題ないと判断したので追及はしなかった。

 

 そして自分との会話の中で一つの可能性に気付いた一誠は、その事を強く思いながら訓練をしていた最中に神器を進化させる事に成功した。

 

赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)

 

 増加させた力を他者に譲渡する能力で、使用時に『Transfer(トランスフォー)』という掛け声で発動する。現在の譲渡可能数は最大二人まで。だたしその場合譲渡する能力も分割される。

 

『俺はまだ弱い。なら強い奴を強化すればいい、逆転の発想だぜ! これでみんなのために戦える!』

 

 そう言って新たな能力をみんなに見せた一誠の顔はとても嬉しそうだった。他のみんなもそんな一誠の想いを理解しているか、自分の事のように喜んで一誠を褒め称えた。

 

 実際一誠のこの新たな能力は今度の戦いで間違い無く勝敗の鍵を握る能力となるに違いない。

 

 なにより最大のアドバンテージはこの情報をライザー陣営が知らないという事だろう。少なくとも毎晩周囲を偵察しているが部活のみんな以外の気配や魂を感じたことは無い。

 

 アーシアも防御系メインの魔法をいくつか修得したが、新たな神器の技は習得できていない。

 

 小猫ちゃんの格闘術も鍛えられ『騎士』の恩恵を使っていない祐斗になら勝ち越すようになった。後半では互い恩恵を使って決闘していたが、はやり恩恵有りでは祐斗の方が優勢なのは変わらないみたいだった。

 

 祐斗や朱乃先輩は属性の切り替えはだいぶ早くなった。

 

 特に朱乃先輩は色々な形で魔法を発動できるようになったと自分の背中に抱きつきながら耳元で何故か妖しく囁くように報告してくれた。セクハラである。

 

 リアス先輩も調子が良いようで、かなりの滅びの魔力を錬れる様になったらしい。

 

 そこいくと自分はあんま成長してないなぁ。

 

 自分がしていた個人特訓は祐斗に頼んで騎士の速度を体験させて貰ったのと、朱乃先輩に属性魔法を体験させて貰った事くらいか。

 

 正直『騎士』の恩恵を使った祐斗は目視できなかった。相手が動く前の段階で視覚と直感をフルに活用して行動を先読みして動かなければ回避は不可能と言っていい。

 

 そのタイミングを身体で覚える為に何度も祐斗の攻撃を受け続けた。現状では防ぐなら五割、回避はせいぜい三割と言ったところだろうか。

 

 もっとも、祐斗が狙いを甘くして威力を下げてくれているから防いだり出来てるだけで、実戦ではもっと苦戦するだろう。

 

 朱乃先輩の属性魔法も同じような訓練内容だ。

 

 火や風、土や氷といった普段では受けることの無い痛みを覚え、同時にそれらを実際に見る事で対処法を模索する。

 

 ……アーシアがいたから出来た修行方法だな。

 

 祐斗に木刀でボコボコにされ。朱乃先輩には火で身を焼かれ、氷で刺さられ、風で切られ、岩で殴られ、爆発で吹き飛ばされ、雷で痺れ、という拷問のような日々だった。

 

 ……ホント、よく生きてたな。

 

 自分がやって来た修行を思い出して涙が流れそうになる。しかしこの程度で泣いてはいけない。ゲームでは手加減無しでそれらを食らうのだ。事前にその痛みを知っておくのと、知らないのとでは動きにかなりの差が出る。少なくとも生前はそうして戦っていた。

 

 痛くても怖くても、目を逸らさずにそれらに耐えて勝機を探し続けた。自分と大切なパートナーの為に。

 

 今度の戦いでその経験が役に立てばいいが。

 

 そんな事を考えながら今日もみんなと一緒に修行し、そして合宿残り二日は体調を万全にするために修行はお休みして、屋敷のリビングでみんなでゲームの為の作戦を話し合った。

 

 

 

 

「ただいま~」

 

「おかえりなさい御主人様! 寂しかったにゃ~ん♪」

 

 猫モードの黒歌が玄関で出迎えると同時に自分の胸にジャンプしてくる。それをキャッチして、彼女の背中を撫でる。ああ、癒される。

 

「ただいま黒歌。お休みの間に何かあった?」

 

 頬をペロペロと舐める彼女に近況を尋ねる。

 

「特に何も無かったにゃん。で、修行はどうだったにゃん? 勝てそう?」

 

「う~ん、どうだろう。やれる事はやったし、考えられる事は考えつくしたと思う。あとは当日次第だね」

 

 黒歌を抱かかえたまま一度部屋に戻る。

 

 レイナーレはまだ仕事か。一応メールを入れておいて、あとは……。

 

「……なあ黒歌」

 

「なんにゃん?」

 

「フェニックスとの戦いについて、二人には伝えた方がいいかな?」

 

「……にゃぁ。難しい質問にゃ」

 

 二人と言うのはもちろん父さんと母さんだ。

 

 レーティングゲームの資料を見ると、確かに死亡者は殆どいない。そう、『殆ど』だ。つまり死んだ者もいるのだ。

 

 一番多いのは強大な力を受けて転移が間に合わずに消滅したり、受けた怪我が大き過ぎて転移後の治療が間に合わなかった場合だ。

 

 もちろんそういった事例が起き次第改善はされている。例えば相手の攻撃を見て、王がリタイアを申請して緊急転移させたりも出来るし、医療道具にフェニックスの涙を常備させたりして最悪な事態だけは避けられるようになってもいる。

 

 それでも運が悪ければ死者が出てしまうあたりは格闘技と同じだな。やはり戦いに絶対の安全なんて無いってことだな。

 

 しかも自分は人間だ。レーティングゲームのルールも『頑丈』な悪魔や人外を基準にしでいる。その為悪魔にとっては軽傷で済む怪我でも人間の自分では致命傷になる可能性がある。

 

 そういう意味で両親には伝えるべきだと思う自分と、心配をかけたくないと思う自分がいる。

 

「……やっぱり伝えない方がいいか」

 

 もしもの時はリアス先輩達に丸投げしてしまおう。

 

 今更ながら、ゲームに勝とうが負けようが、自分が怪我した場合は確実に母さんのおしおきが待っていることを悟り、他のみんなも巻き込む事にした。不幸は分かち合うべきなんだよ!!

 

 いきなりゲームへのモチベーションを若干下げながら、みんなで話し合って立てた作戦の草案を取り出し、黒歌を交えて改めて見直し、改善する。

 

 さて、やれることはやとかないとな。明日の結果次第で、自分達の今後が決まるのだから。

 




という訳で一誠には原作では試合中に得た技を合宿中に習得して貰いました。実力と切っ掛けさえあれば進化するらしいから別にいいよねってことで。

あと、本当は朱乃さんのイベントも入れるか最後まで悩みました。
でも、ここでトラウマ解消して光力使えちゃうと正直この合宿自体が無意味に(多分全力雷光くらったら今のライザーじゃ痛みに堪えられないと思うんだ……)


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