岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】   作:雷鳥

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何故巻き込まれるのか? それは彼が白野だからさ! なんせ原作ではほぼ九割は巻き込まれているからな(しかも巻き込まれた後は自分から首を突っ込んでいくと言うドMっぷりである)



【巻き込まれていくスタイル!】

 ライザー・フェニックス。純血悪魔であるフェニックス家の三男。

 

 フェニックスとはまんま不死鳥フェニックスの事だった。流石に自分の家の事になると、頼んでもいないのにライザー自らが色々自慢気に語ってくれた。

 

 レーティングゲームという悪魔同士が戦うゲームが流行り、それがきっかけでフェニックスの再生能力の高さが同族である悪魔達にも明確化され、フェニックス家は一目置かれる純血悪魔となった。

 

 そして現在、フェニックス家は悪魔界で一番潤沢な財力を持つ家系にまで上り詰めたそうだ。

 

因みにゲームでは負けを認めたり、ダメージが危険域に達すると強制的に自動で転移する仕様なため、消滅してしまうほどの強力な一撃を受けたりしない限りは死ぬ危険性は低いらしい。スポーツやルールのある格闘技と言った感じだ。

 

 一通り話して満足したのか、ライザーはこちらへの興味を無くしてリアス先輩へのちょっかいを再開した。

 

 にしても不死身かぁ。その程度ならいっぱい見てきたし、今更だな。それよりなんで先輩の両親は婚約を許したんだろう。どう考えても相性が悪い気がするんだけど。

 

 リアス先輩は所謂典型的なお嬢様だ。本人は否定するかもしれないが、彼女には我侭な部分がある。が、同時に家や悪魔と言ったもののルールに対して従順な部分もある。

 

 そしてライザーもまた典型的な御曹司って感じだ。家柄に恥じぬ才を持つが故に、他者を見下すエリート思考。はっきりって我の強いこの二人が意見を合わせられるとはとても思えない。

 

「いい加減にして!!」

 

 頭を悩ませていると、突然リアス先輩が叫んだ。どうやら我慢の限界が来たらしい。

 

「以前にも言ったはずよライザー! 私はあなたとは結婚しない! 私の婿は私が決めるわ!」

 

「それは前にも聞いたよリアス。だがそういう訳にもいかないだろ? 既にグレモリー家に純血の跡取りを残せるのは君一人。まぁ君のご両親が子を成す可能性も無きにしも非ずだが、悪魔の出産率、それも純血同士の出産率が極めて低いのは君も理解しているだろ? もっとも、家のように宿りやすい家系があるのは認めるけどね。それだって他の家に比べればましな程度だ」

 

 純血……ああ、なるほど。だから同じ純血のフェニックス家って訳か。でも他にも純血はいるよな? 宿りやすいってところがポイントなのかな? でもそれって旦那が偉いんじゃなくて、奥さんが偉いんじゃない?

 

「最近じゃ君の所の様に神器を持つからという理由で人間からの転生悪魔も増えた。まあそういう新しい血を入れていくのもいいさ。同族が増えるのは嬉しい事だしね。でも純血は純血でこれまでの歴史を、そしてこれからの歴史を支える使命がある。途切れさせるわけにはいかない。俺達の結婚には悪魔の未来が掛かっている。君もそれくらいは理解しているだろう?」

 

 おっと、ライザーはどうやら個人的な理由では落とせないと考えて種族や家の問題で落としに来たらしい。せこい。せこいよライザー。

 

「理解しているわ。婿養子を迎える事だって認めている」

 

 リアス先輩はどこか達観した表情でそう呟いた。

 

「だったら――」

 

「けれどあなたとは結婚しない。私が婿に迎えるのは、私が認めた相手だけよ」

 

 しかしすぐに表情を引き締め、決意の篭った視線をライザーへと向ける。

 

 ライザーはリアス先輩の返答に心の底から呆れたような表情で嘆息し、鋭い目つきでリアス先輩を睨み返した。

 

「リアス、俺もフェニックスの看板を背負っている純血悪魔なんだよ。その名に泥をかけられる訳にはいかない。俺達の婚約はほとんど知れ渡っているからな」

 

 ライザーが立ち上がると、奴の周囲から殺気と共に炎が立ち上る。

 

「俺は君の下僕を燃やし尽くしてでも、君を冥界に連れ帰るぞ」

 

「そんなこと、させると思っているの?」

 

 二人の殺気を含んだ魔力が一気に部屋に充満する。一誠とアーシアは全身を震わせ、祐斗と小猫ちゃんは全身から汗を流して臨戦態勢を取るのがやっとな状態だった。

 

 不意に、右手を誰かに握られたので振り返ると、隣に座っていた朱乃先輩が緊張した面持ちでリアス先輩を見ていた。多分緊張から近くにあるものを無意識に掴んでしまったのかもしれない。

 

 次にその反対側に座って自分と同じように先程まで我関せずと言った感じに静かに周りを監視していたグレイフィアさんに視線を送る。

 

 あれ?

 

 視線を向けると、何故か彼女はこちらを見ていた。一体いつからこちらを見ていたのだろう。

 

 視線が合うと、グレイフィアさんは視線を逸らしてリアス先輩達へと移し、先程見かけた時と同じように成り行きを見守る姿勢をとる。

 

 何故こちらを見ていたんだ? 

 

「リアス……」

 

 グレイフィアさんに対しての疑問に感じていたその時、朱乃先輩の沈痛な呟きが聞こえた。

 

 ……はあぁ。しょうがない。

 

 自分は一度朱乃の先輩の手を強く握り、安心させるように笑ってから彼女の手を離して立ち上がり、できる限り大きな音でパンパンと拍手をする。

 

「はいはい、リアス先輩も、フェニックスも落ち着け。それとグレイフィアさん、いい加減何かあるなら二人に伝えては? その為にここにいるんでしょ?」

 

 先程から二人を眺めているだけだったグレイフィアさんへと話題向ける。

 

 そもそも彼女がここに居るのは、二人の婚約について何かしらの提案があるからだと推察できる。そうでなければわざわざここには来ないはずだ。リアス先輩だけに伝えるなら、それこそ実家で彼女だけに話せば済む話な訳だし。

 

「どういうこと?」

 

 リアス先輩が険しい表情のまま、とりあえずライザーから視線をこちらに移す。よし、誘導成功。

 

「客観的に見て、リアス先輩とフェニックスは仲が悪い。というかどっちも頑固でプライドが高い以上、婚約の話なんて絶対に成り立たない筈だ。となると最終的にさっきの二人のような危険な状況になる。だからグレイフィアさんは人間界に来たんじゃないんですか? 二人を止めるため、そして多分、いい加減この問題を解決させるために」

 

 自分が考えていた推察を説明する事でこの場にいる全員の注意をグイレイフィアさんへと向ける。これで彼女も理由を説明してくれるはずだ。

 

「……その通りです。私がここに来たのはお二人を止めるためでございます。お二人を同時に止める以上、私も全力で事に当たらせて頂きますが?」

 

 みんなの注目の中、グレイフィアさんは自分の言葉を肯定し、殺気は放たずに、涼しい顔で魔力だけを周囲に充満させる。その魔力の気配は二人を軽く凌駕していた。そして全力といいつつ、間違いなく手加減している。この人怖い。

 

「……最強の『女王』である貴女にそんなことを言われては、止めざるを得ないね」

 

 ライザーは少しだけ顔を青くさせつつ、深く深呼吸して自身を落ち着かせる。

 

「分かったわ。それで、後半の白野の台詞も肯定しているみたいだけど、解決させるための方法があるのね?」

 

「ございます。お二人の御両親および周りの者はこの縁談が穏便に纏まるとは思っておりませんでした。そして今回が話し合いで解決する最後の機会だったのです。ですが、それも破綻した以上、最終手段を取らせていただきます」

 

「最終手段?」

 

「レーティングゲームでございます。本来なら成熟した悪魔しか参加できませんが、非公式の純血同士でなら、半人前でも問題なく参加は可能です。勝った方のご意思を尊重する。それが両家の出した結論でございます」

 

「つ、つまり部長が勝てば、今後は部長自身が婿を選んで良いってこと、ですか?」

 

「その通りでございます」

 

 一誠の期待の篭った視線と言葉に、グレイフィアさんは表情を変えずに頷く。が、当の本人であるリアスは忌々しげな表情で拳を握っていた。

 

「聞こえは良いけど、それってつまり、私が拒否した時のために最終的にゲームで決めさせようって魂胆よね?」

 

「その通りでございます。それとも拒否なさいますか?」

 

 グレイフィアさんはリアス先輩の言葉を否定せず逆に問い返す。そしてその問いにリアス先輩首を横に振って答えた。

 

「いいえまさか。こんな好機を逃すつもりは無いわ。いいわ。ゲームで決着を付けましょう、ライザー」

 

「へぇ、受けるんだ。もちろん俺はかまわない。それよりリアス、俺はもう成熟した悪魔だから何度もレーティングゲームには参加している。それに勝ち星の方が多い。それでも本当に俺と戦うのか?」

 

「くどいわ。必ずあなたを消し飛ばしてみせる!」

 

「OK。じゃあ俺が勝ったら即結婚だ」

 

 フェニックスの言葉にリアス先輩が頷く。

 

「承知いたしました。では御両家には私からお伝えいたします。そして私がゲームの指揮を採らせていただきます。よろしいですね?」

 

 二人は互いに睨み合ったまま、短く返事を返し、グレイフィアさんは返事を聞くと律儀に頭を下げて了承したことを二人に伝える。

 

 やれやれ大変なことになった。

 

「よっしゃ。部長の為に『一緒』に頑張ろうぜ白野」

 

 ……んん?

 

 一誠に肩を組まれながら、今さっき発言した一誠の台詞をもう一度思い出す。

 

『一緒に頑張ろうぜ』

 

 あれ? もしかして自分、またなんか引き際を間違えたか?

 




と言うわけで引き際を間違えた白野でした(お約束だね!)
にしてもまた分割する羽目になった。そんなに内容は多い訳じゃないんだけどねぇ。


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