岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】 作:雷鳥
と言うわけでフェニックス編開始です。
ドーナシークの事件が語られなくなって数十日のある朝、一誠がどこか上の空で登校してきた。アーシアも心配そうにしていたので事情を尋ねると、一誠がゆっくりと話してくれた。
まず昨日の深夜、一誠とアーシアが帰宅したあと、何故かリアス先輩が一誠の部屋に転移してきたらしい。そして開口一番『私を抱きなさい』宣言の下、服を脱いで全裸で一誠をベッドに押し倒したらしい。一誠曰く軟らかくも弾力のある素晴らしい双球だったそうだ。
話が進むに連れてアーシアが少しむくれた顔をする。可愛いとは思うが後が怖い気もするので、口を挟まずに一誠の説明を聞き続ける。
一誠も流石に何かあったと思い、スケベ心を血の涙を流しながら押し殺してリアス先輩に事情を尋ねていると、突然グレモリー家のメイドのグレイフィアと名乗る銀髪悪魔がやって来たらしい。一誠曰く服の上からも判る美乳
だったらしい。
アーシアが涙目で頬を膨らませる。一誠、あとで機嫌を取るのが大変だぞこれは。あと、お前はいちいち胸の情報を入れないと気が済まないのか?
そして今朝はリアス先輩から訓練中止のメールを貰ったが、家に居てもモンモンとしてしまうので、自主的に行ったが、結局今現在もモンモンとしている。ということだ。モヤモヤではなくモンモンな辺りが一誠らしいというかなんというか、もはや別の感情な気がする。
「部長、すごい切羽詰った顔してたんだよ。一体何があったんだろう……」
「心配ですね」
アーシアも一誠の心配そうな表情を見て、リアス先輩のことが気になったのか、先程とは打って変わって心配そうな表情をする。彼女のこういう切り替えの早さは素晴らしいと思う。
「とりあえず朱乃先輩なら事情を知っていそうだし、部活中にでも聞いてみたらどうだ?」
「そうだな。そうするか」
正直情報が少なすぎて事情は分からないが、たぶん厄介ごとだろうなぁ。
昨日と同じ朝なのに、何故か平穏の日々が遠退いた気がした。
「ごめん。僕も事情は知らないな。でも部長がそこまで悩むということは、たぶんグレモリー家関連の悩みかもね」
旧校舎に向かう途中で自分と祐斗、一誠とアーシアの四人でリアス先輩の悩みについて話し合う。
結局あのあと一緒に部室に寄ってくれと言う一誠の申し出を断れずに、付いて来てしまった。まぁ話し合いに参加するだけだから大丈夫だろう。部室には何度か遊びには行っているわけだし。
「実家問題か。俺はそういうの無縁だけど、中々難しそうだよなぁ」
「まぁまだ実家の問題とは決まって――っ。一誠、祐斗、アーシア、神器を出せ。何かいる」
旧校舎に一歩踏み込んだ瞬間、強烈な魔力の気配を察知する。
護身用にいつも鞄に入れて持ち歩いている光剣の柄を取り出して力を送って光刃を出現させる。銃の方は流石に持って来てはいない。警察に見付かったら言い訳できないし。柄だけのこっちなら玩具で通せそうだしね。
「お、おいどうした?」
「強い気配がする。殺気は感じないが……」
しかし知り合いの気配でもないので用心に越した事はない。
「……っ! 本当だ」
祐斗も気配に気付くとその手にロングソードサイズの魔剣を出現させる。
「えっと、はい! 準備できました」
「俺もだ!」
アーシアが念じると、彼女の両の薬指に緑色に光る指輪が現れる。二人に少し送れて一誠も神器を出す。
アーシアを中心にして守るように前と左右で固めて警戒しながら旧校舎を進む。
敵意は無いが、ならもっと気配を抑えるはずだ。何が目的だ?
気配はオカルト研究部に近付く度に強くなる。
「……一誠はアーシアを守ってくれ。祐斗、ノックして扉を開けてくれ。自分は一応剣を構えておく。殺意は感じないが一応な」
「分かった」
一誠とアーシアを背にして、祐斗が扉をノックすると中から少し不機嫌なリアス先輩の返事が聞こえ、祐斗に目配せして扉を開けてもらう。
武装状態で表れた自分達に驚いた表情をするリアス先輩から視線を移して、先程から濃厚な気配を放つ銀髪のメイド、多分一誠が言っていたグレイフィアさんという女性に声を掛けた。
「できればその物騒な魔力の気配を消してもらえませんか?」
「……ふむ。いいでしょう。中々の探知能力です」
僅かに口元に笑みを浮かべたグレイフィアさんから溢れていた気配が収まる。やっぱりわざとだったか。こちらも武装を解除する。それを見届けたあと、リアス先輩が溜息と共にグレイフィアさんへと視線を向けた。
「満足したかしらグレイフィア?」
「ええ。とは言っても私の気配に一早く気付いたのが人間というのは正直どうかと思いますが、中々将来有望そうな下僕達で何よりで御座います」
なるほど。こちらの技量を確かめる為のテストか何かでもしていたのか。抜き打ちなのはその方が本来の実力が測れるからか?
「ごめんなさいね四人とも。どうしても私の眷属の実力を知りたいと言って聞かなくて」
「申し訳御座いませんお嬢さま」
うわ。全然申し訳ないと思って無いなこの人。
優雅で自然な動作の謝罪だったが、表情には変化が無く、自分の行いに対して一切迷いが無い目をしていた。
「まぁいいわ。これで全員揃ったし、部活の前に少しみんなに話があるわ。ついでだから白野も聞いていって」
「お嬢さま、私がお話し致しましょうか?」
グレイフィアさんの申し出をリアス先輩が首を横に振って断る。
「……実は――っ!?」
リアス先輩が意を決して話そうとしたその時、床の魔方陣が光ると、グレモリーの紋章から別の紋章へと変化する。
「これはフェニックス家の紋章……」
祐斗の口から呟きが漏れ、それからしばらくして魔方陣から炎と共に人影が現れる。シルエットと的には男性に見えた。
一誠がこちらに跳んでくる火の粉からアーシアを守りながらアチアチと言っていた。確かに熱い。なんとも傍迷惑な登場の仕方だ。
人影が腕を振るうと、炎が晴れてそこから赤いスーツを着崩して胸元を露出させた二十代後半くらいの金髪の男が、前髪をかき上げながら現れた。
あれが祐斗が言っていたフェニックスって奴か?
何故か目の前の相手が生前友人だった『
なんだろう外見や年齢は全然違うけど自尊心に満ちた表情や、キザな仕草が凄い似てる。なんというか、大人版慎二とでも言えばいいだろうか……絶対プライドが高くて我侭だろこいつ。
そんなことを考えていると隣で一誠が『ワイルド系ホストみたい』と呟いていた。つい頷いてしまった。格好が格好な上に、現れた瞬間リアス先輩に近寄ってイヤらしい笑みを浮かべたし。
「やあ愛しのリアス。会いに来たぜ。そろそろ式の日取りも決めないといけないからな。こういうことは早い方がいい。俺って気が利く男だろ?」
まるで『お前のためにしてるんだぜ』といった言い草で男はリアス先輩の腕を掴む。そういう自分勝手な子供っぽい所もそっくりだった。
まずいな。こういうタイプは友人として付き合うのは面白いが、敵として相手すると色々面倒なんだよなぁ。
「放してちょうだい、ライザー」
リアス先輩は冷めた眼差しでライザーと呼んだ男の手を払う。しかしライザーは苦笑するだけで特に何も言わない。ふむ。少しは慎二より大人みたいだ。
「おいあんた。部長に対して無礼だぞ。つーか女の子にする態度じゃねぇだろ今のは!」
一誠が我慢の限界とばかりに声を荒げてライザーに物申す。
「あ? 誰、お前?」
「俺はぶ――リアス・グレモリー様の眷属の悪魔、『兵士』の一誠だ!」
嫌悪感を隠そうともしないライザーに、ますます苛立った表情で名乗りを上げる一誠。そんな状態でもちゃんとリアス先輩を様付けで呼べた事を褒めてあげたい。
「あっそ。でなリアス……」
が、ライザーは一誠の殺気も気にした様子もなくリアス先輩に向き直り、その姿に身構えていた一誠がずっこけそうになる。
「はぁ。おいあんた。いい大人なんだから、いい加減に自己紹介くらいしたらどうだ?」
とりあえずそう言ってリアス先輩へのちょっかいを止めさせる。
「はぁ? お前誰だって……おい、こいつ人間か? なんで人間がここにいるんだリアス?」
「プっ。自己紹介も出来ないのか」
流石にちょっとイラっと来たので向こうのプライドをくすぐるような言動で言い返す。
さて、慎二はこういうやり方をすると反応したもんだが、こいつはどうかな。
「……ライザー・フェニックスだ人間。次に俺をそんな小馬鹿にしたような顔で見たら骨も残らずに燃やし尽くすぞ」
やっぱり慎二と近い性格みたいだな。接し方としては慎二と同じでいいだろう。なんか懐かしいし。
鋭く眼を細めてこちらに睨みながら自己紹介するライザー。しかしその程度の眼光や殺気には慣れっこなので受けん流しつつこちらも挨拶を返す。
「覚えておくよ。自分は月野白野、ただの人間だ。よろしく」
「ふん。それにしてもリアス、他の下僕達の反応を見る限り、俺のことをちゃんと伝えていなかったのか? 婚約者として悲しいぜ」
「こ、婚約者ぁぁああ?!」
一誠が驚愕の表情で叫び、アーシアも口元を押さえて驚いていた。他のみんなは気にした様子がないから婚約者がいること自体は知っていたのかもしれない。ただ相手が目の前のライザーとは知らなかったみたいで、二人ともあまり好い顔はしていない。まぁ性格に難がありそうだもんなぁ。
というか、いい加減誰かコイツの詳細を教えてくれ。まだ名前しか知らないぞ。
と言うわけでライザーフェニックスならぬシンジとライザーをフュージョンさせたシンザーさんの登場だ。(いや、なんかこの二人は近しい物を感じたので……)
因みにこの二人を実際に融合しても性格は変わらないし、性能も変わらないが、悪ノリは二倍になるからきっと弱体化するぞ!!(流石だぜ!)