岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】 作:雷鳥
と言うわけで今回で原作一巻は終了です。
次回から二巻、つまり焼き鳥様の登場になります。
う~ん。今日は風が気持ち良いね。
にしても、ようやく落ち着いたかな。レイナーレもこの街には少しは慣れたみたいだし。
頭上に広がる青空を見上げながら、レイナーレがやって来てから今日までの出来事を振り返る。
レイナーレがやって来たその日の内に彼女をオカルト研究部に連れて行った。リアス先輩からも警告されていたし、なるべく早く彼女の存在を伝えて安全を確保すべきだと思ったからだ。
『なんか堕天使のお偉いさんに押し付けられました』
そう伝えた時の部員達の呆れとも同情とも取れる表情は今でも思い出せる。約一名、朱乃さんだけはレイナーレを睨んでいたが、堕天使がそんなに嫌いなのだろうか?
そんなオカルト研究部の反応が気に入らなかったのか、レイナーレはいつものすまし顔でふん。と鼻を鳴らした。
『ふん。アザゼル様のお願いじゃなければ人間に隷属するなんて絶対にありえないのに。いい悪魔ども、私に迷惑を掛けるんじゃないわよ』
予想通りの反応だったので、ちょっとお灸を据える。
『言い過ぎだぞドジっ子堕天使』
『気をつけるわドジっ子堕天使』
『ご安心を。関わる気はありませんわドジっ子残念無能堕天使』
『ガンバ、ドジっ子堕天使』
『うう。まさか初恋の相手が残念美人な上に親友にNTRされるなんて!』
『現実は非常だね。一誠君』
『あわわわわ』
『誰がドチっ子堕天使よ! あっ、白野あなた! あの事を喋ったのね。酷いわこの人でなし!』
高圧的な態度で威圧するつもりだったであろうレイナーレを全員で弄る。すると彼女は顔を真っ赤にして涙目で地団駄を踏み、自分を睨む。うん。可愛い。
その後もレイナーレが高圧的な態度を取る度にレイナーレ弄りは続き、仕舞いにはレイナーレが耐えきれずに膝を抱えて座ってしまい、不憫に思ったのかアーシアが慰め続け、話し合いの最後の方では二人はすっかり仲良しになっていた。
そんなレイナーレは普段は家の近くにあるデザートの美味しい店でウェイトレスをしている。働かざる者食うべからずの精神で、家に居候させる代わりに働きに出したという訳だ。
『黒歌は働いていないじゃない!』
と最初は言って働こうとしなかったので、なら鳥にでもなってくれと言ったら出来ないといわれた。
黒歌が『じゃぁ人型のままペット生活するにゃん♪』と、新しい玩具を見つけたようなイイ笑顔でレイナーレに告げた瞬間、彼女はすぐに働き口を探し始めた。結構評判になっているらしい。本人も楽しんでいるからまぁ問題ないだろう。因みに黒歌はペット兼家政婦を自称している。まぁ実際普段は猫の姿だし、元の姿で家事の手伝いもしているので間違ってはいない。
それとレイナーレを隷属させた事で彼女の加護を得たらしく、オーラを光力に変えて扱えるようになった。そのお陰で拾った柄と銃が扱えるようになったのは大きい戦力アップだ。
整備の仕方はレイナーレに教えて貰った。もっとも彼女も最低限のやり方しか知らなかったので、色々試行錯誤中である。構造はある程度把握できたので、刻まれていた堕天使の術式についてはレイナーレに訊きながら勉強している。いつかもっと使い易い武器に改造するのが自分の目標だ。
それと最近は黒歌も堕天使の術式に興味を示してレイナーレに色々質問していたりする。なんだかんだで彼女も強くなることに貪欲だ。逆に黒歌は見返りとして魔法を教えている。そもそも堕天使は種族の特性上、光力と魔力の両方を扱える。基本的に天使の頃に使っていた光力の方が扱い易いのと、悪魔との戦いを考慮してそちらを安易に使う堕天使は多いらしい。レイナーレもその一人だ。
『にゃああ! 違うにゃ! そこはこうにゃ!』
『痛い! ちょ、叩く事ないじゃ!』
と言った会話が最近自分の部屋で繰り広げられている。なんだかんだで黒歌は面倒見が良い。そして訓練のときは何気にスパルタなのだ。頑張れレイナーレ。
最後に、一番大きく変わったのが一誠だ。
一誠はあの事件以降、アーシアと暮し、アーシアの面倒を見ている。悪魔の下積みの手伝いも一緒だし、願いを叶える時も何かあったときの為に一緒に付いて行く。
過保護過ぎるかもと思ったが、彼女は一度命を狙われているし、目の前で死に掛けたという経験をしている一誠からすれば、当然の行動なのかもしれない。
「おっす白野!」
「おはようございます白野さん」
「ん? ああ二人共おはよう」
まるで恋人のように揃って歩く二人に背後から声を掛けられ、三人で雑談しながら学園へと向かう。これがここ数日で定番となった、新しい日常の一つだ。
「ただいまー」
「あらあらお帰りレイナちゃん。お仕事お疲れ様」
「お帰りにゃん。レイナーレ」
「ただいまお母様。黒歌。今日もデザートを買ってきたわ」
「あらありがとう。レイナちゃんが働くお店のデザート、美味しいわよねぇ」
「当然よ。私が暇を見つけて食べ歩いて味を確かめ、雇用の条件と従業員特権を吟味して選んだお店なんだから」
「にゃあ。その情熱をもっと別の事に活かした方がいいと思うにゃん」
母さん達と楽しげにお喋りするレイナーレ。ホント、彼女は順応能力が高いと思う。
彼女の居候が決定した日に、改めてレイナーレを両親に紹介した。とりあえず掻い摘んで事情を説明すると、両親はこちらがお願いする前に『じゃあうちに居候しなさい』と言う流れになった。我が両親ながら大らか過ぎる。
今まで見下してきた人間と対等に接することになり、いまいち距離感が解からずにいたレイナーレも、今ではその図々しい性格を徐々に発揮し、すっかり地で母さんと父さんに接している。
「で、どうなの? 白ちゃんとはBまで行った?」
「ななな!? わ、私は白野に興味なんて無いわ。私の好みはワイルドで野生的な男なの!」
「うふふ。それはまだまだレイナちゃんが若いからだよ~。男はみんなワイルドウルフなんだから。むしろそうじゃないなら男として終わってるとお母さんは思うなぁ~チラリ」
「はいはい。どうせ自分は草食系男子です」
「御主人様は渡さないわ!」
そう言って黒歌が人型になる。
「ええ。もちろん黒歌ちゃんでもいいわよ~」
と、笑顔のお母様。いやホント、うちの両親は懐が深すぎて泣けてくるね。
レイナーレという存在に何かの危機感でも覚えたのか、黒歌は自分が人型になれる事を夕食時に自分から暴露、その場で元の姿に戻った。
最初は父さんも母さんも驚いていたが『まあ妖怪ならそんなものなのかもね』とすぐに笑顔で受け入れてしまった。
結局我が家で変わったことと言えば、黒歌が元の姿で食事を摂るようになったこと、家事を手伝うようになったこと。そして母さんがレイナーレと黒歌に自分の貞操を奪わせるような発言が増えたことか。
ま、手は出してないからいいけど。
実際手を出してはいない。お仕置き意外で。
お仕置きの内容はお尻ペンペン。いい歳の大人がお尻ぺんぺん。精神的に凄いダメージが来るみたいで、流石のレイナーレも泣きながら謝罪した。因みに実体験でもある。あの日以降、母さんだけは決して怒らせないようにしようと心に誓った。因みにこの家で母さんのお仕置きを受けていないのは黒歌だけだ。
「はぁ。早く孫の顔がみたいわ」
……まぁ、その台詞を発しても問題ない年ではあるけど。外見の違和感が凄い。
「ただいま。おや、四人とも楽しそうだね」
レイナーレから少し遅れて父さんが帰宅し、騒がしくもいつも通りの夕食を過ごして自室に戻る。現在レイナーレと黒歌は空き部屋の一つを二人で使っている。まぁ黒歌は寝る時は猫の姿で殆ど自分の部屋に来るから殆どレイナーレの一人部屋だ。
まぁ、緊急時に召喚できるから離れていても問題はない。
日課の筋トレとオーラ操作の練習に学園の勉強を終わらせ、猫の黒歌と一緒にお風呂に入って布団に潜り込んで眠りに付いた。一応枕元に封魔銃と光剣をしのばせてある。何かあったときの為の保険だ。
黒歌の幸せそうな寝顔を見ながら、この新しくも楽しい日常が明日も続きますようにと、月に祈りつつ眠りに着いた。
現在の月野家の力関係→母>越えられない壁>父>白野>黒歌>レイナーレ。
月野家のお仕置きはどうするか悩みましたが、三巻で一誠達がやられたのを見てこうなりました。『見た目幼女に良い大人が叩かれる図』……ダメ人間待ったなしな絵図らである!