岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】   作:雷鳥

10 / 66
と言うわけで彼女がまたもや登場。そして現在の白野の持つ能力最後の一つの紹介。



【三度の邂逅と白野の魔術】

 一誠の悪魔としての仕事が始まって数日だ経った。登校の時に一誠が初めての戦闘について興奮気味に語ってくれた。なんでもはぐれ悪魔と戦ったそうだ。

 

『もし主が酷い奴で、自分を守る為に殺すなんていう理由だったら?』

 

 黒歌の件もあるのでその日の放課後にそれとなくリアス先輩に尋ねたら、捕まえた悪魔次第だろうと言われた。支取先輩も似たような答えだった。やはり黒歌についてはもう少し様子を見てから相談した方がいいかもしれない。

 

 他にも『はぐれ悪魔祓い』と呼ばれる所謂教会を追われた神父やシスターもいる。基本組織から追われた連中は『はぐれ』呼ばわりされるのかもしれない。

 

 そして一誠の始めての戦闘だが、一誠自身は戦っていないらしい。悪魔の駒の説明と実戦を知って欲しかったみたいだ。

 

 戦った悪魔は上半身裸で胸から硫酸を出す下半身が蜘蛛みたいな悪魔だったらしい。なんでも悪魔は力に飲まれて正気を失うと人の形を保てなくなってくるんだとか。やっぱり悪魔の世界は怖い。そりゃ黒歌が妹を助ける為に一線を越えるわけだ。

 

 悪魔の駒についてや、悪魔界でもっとも盛んな『レーティングゲーム』なるものを教えて貰ったが、レーティングゲームに人間の自分が参加する事は無いだろうからあまり覚えていない。

 

 そんな感じで今日も一誠の悪魔の話から始まり、いつものように授業を終えて家に帰った自分だったが、妙な胸騒ぎがした。

 

 なんか嫌な予感がするんだよなぁ。

 

 虫の知らせとはこういうことを言うのだろうか? さっきから気持ちがザワついて仕方が無い。

 

 ……少し散歩にでも行ってみるか。

 

「どうしたにゃ?」

 

「ちょっと嫌な予感がするから散歩に行ってくる」

 

「……にゃ? 嫌な予感がするのに出歩くの!?」

 

 一瞬意味が分からずに固まった黒歌だったが、言葉を意味を理解した瞬間にありえないとばかりに目を見開いた。いやだって部屋に居ても嫌な予感するんじゃ、仕方ないだろ?

 

「にゃ~、じゃあ私も隠れながら付いて行くにゃ」

 

「いやでも……」

 

 黒歌の提案に少しだけ難しい顔をする。彼女がもしリアス先輩達に見つかった時の事を考えると、できれば家に居て欲しいというのが本音だ。

 

「悪いけど引かないにゃん。嫌な予感がするなら尚更にゃん」

 

 猫の姿ではあるが、彼女は真剣な表情でこちらを見上げ、更に闘気を漲らせて威圧までしてくる。

 

「……はぁ。分かったよ」

 

 立場が逆なら自分もそうすると思うので、溜息を吐きつつ頷く。それを見届けた黒歌は満足そうな笑顔で頷き、闘気を散らしていつものように自分の頭の上に乗っかる。

 

 二人で両親にちょっと気晴らしに散歩に行くと伝えて家を出て、嫌な予感に突き動かされるまま、とりあえずいつものランニングコースを歩く。黒歌は既に自分の頭から降りて夜の闇に隠れながら自分を見守っている。

 

 その途中――空から聞き覚えのある声に呼びかけられた。

 

「止まりなさい」

 

「その声は、レイナーレ?」

 

 声のした方へ視線を向けると、そこには初めて出会った時の格好で空中で腕を組み、真剣な表情でこちらを見下ろすレイナーレが浮かんでいた。どうやらあれが堕天使時の彼女の正装らしい。やだヤラシイ。

 

「三度目ね白野。よくよく縁があるわ。ええ本当に……」

 

 表情は険しいまま、レイナーレは探るような視線をこちらに向ける。

 

「何か用か? 急いでいるんだけど?」

 

「……実はさっき私の加護を受けた下僕が悪魔と交戦したらしくてね」

 

 レイナーレはこちらの言葉を無視して語り始める。

 

「私が出向いた時にはそこにはもう悪魔はいなかったけれど、下僕の話じゃどうやら交戦したのは私が殺したはずの兵藤一誠というガキだということが解かったの」

 

 ……まずいかもな。

 

 レイナーレの話を聞き、目を逸らさないままゆっくりと身体に『気』を練る。気配がより感じやすくなる。ふと見ると彼女の背後の道の影で黒歌が鋭い目で彼女を睨んでいた。あまり言いたくないが――あれは確実に殺る目をしている。間違い無くヒットマンの目だ。

 

 今の自分ではこの技は一発が限界。つまり確実に当てないと……レイナーレが死んじゃうな。

 

 正直に言えばせいぜい知人程度の知り合いのレイナーレにそこまで気を使うのもどうかとは思う。が、どうしても夕暮れで出会った時に見せてくれた人らしい仕草をする彼女が頭にチラついてしまう。

 

「正直、もう私の中では彼の事なんてどうでもよくなっていたのよ……でもね。本当に、本当に偶々思い出したのよ。彼には『幼馴染がいる』という話題と、その幼馴染さんの名前を……ね」

 

「そうなのか。それはまた、随分と唐突だな」

 

 まったく。そのまま忘れてくれれば良かったのに。

 

「ええ本当に。さて、ここまで言えば解かるわよね幼馴染さん。確か日本には『三度目の正直』という諺があるらしいわね……それじゃあ今度こそ……さようなら」

 

 レイナーレが別れの言葉を放つと同時に光の槍をその手に生み出しこちらに投擲する。その瞬間、その場を飛び退き光の槍を回避しながら彼女に向かって手の平にオーラを収束させる。

 

「《code:rel_mgi(b)》!」

 

 腕の周りに数列が浮び、そこから三日月形の青白い光が放たれる。

 

「なっ!? きゃああああ!?」

 

 反撃を予想していなかったのか、レイナーレはこちらの放った一撃を頭部にまともに受けると、軽く弾かれそのまま地面に向かって落下してくる。

 

 まずい!!

 

 慌てて駆け出し、地面とレイナーレの間に自分の身体を滑り込ませる様にダイブする。

 

「ぐっ!」

 

 落下してきた彼女を受け止めながら、地面に背面を強く打ちつける。

 

「いっつぅ」

 

 つい助けてしまった。

 

 演技だったらどうしようと思いながらレイナーレに視線を向けるが、彼女はどうやら今の一撃で気絶したらしい。この場合、立場的には当たり所が良かったと言うべきなのだろうか?

 

「――御主人様。なんでそいつを助けたのかしら?」

 

 そんなどうでもいい事を考えていると、いつの間にか黒歌が人の姿で背後に立ち、物凄い冷たい視線でこちらを見下ろしていた。正直チビりそうなので止めてください。

 

「……ちょっと腑に落ちないところがあるから」

 

「どういうこと?」

 

 助けた理由の大部分が個人的感情なのは間違いないが、他にもちゃんと理由がある。

 

「どうしてレイナーレは自分を殺そうとしたのかなってさ」

 

「にゃ?」

 

 黒歌が意味が解からないと首を傾げる。

 

「だってそうだろ? 確かに自分は一誠と知り合いだが普通の人間だ。レイナーレは自分に神器があるとは気付いていなかったようだし、それなら無用な殺人を犯すよりも、他の連中にしたように暗示なりして記憶を消した方が穏便に済む」

 

 自分の説明を聞くうちに、黒歌も『それもそうね』と言って顎に手を当てて理由を考え始める。

 

「とりあえず家に連れて帰ろう。で、理由を聞く。場合によってはリアス先輩達に引き渡す」

 

「……ふぅ。まぁ私の存在に気付けない程度の力の堕天使なら瞬殺できるから、といらえず今はそれで納得するにゃん」

 

 彼女を背中に背負い、黒歌が猫化して頭に乗る。

 

 ……美女と猫を運ぶ自分の姿をいったい周りの人はどう見るだろう。

 

 そんな不毛な事を考えながら、重い足取りで来た道を引き返すために踵を返す。

 

 にしても、上手くいって良かった。黒歌との訓練では何度か使ったけど、実戦では初めてだし。

 

 歩きながら先程レイナーレに放った一撃を思い出す。

 

 先程の術は元々は生前居た世界で使用していた『簡易術式(コードキャスト)』と呼ばれる詠唱等の工程を必要とせず魔力を通して念じるだけで発動できる魔術スキルの一つだ。

 

 もっとも、自分の力量不足でこの世界では発動に一小節必要だ。

 

 そもそも元の世界でも自分は礼装と呼ばれる装備品が無ければ簡易術式どころか魔術すら使えなかったのだから、当然と言えば当然の結果だ。

 

 この世界を生きる上で、肉体を鍛える以外で強さを求めた時に最初に浮かんだのが生前の霊子魔術だった。

 

 元々オーラは形無き身体エネルギーである生命力を精神力で扱う為、魔力と殆ど変わらない力だ。

 

 生前の知識とこの世界の魔術を知る黒歌の協力を得て、お互いに話し合い、試行錯誤してようやく基礎が完成したのが一年前だ。

 

 改めて凜やラニ、慎二が、いかに優秀な魔術師だったかを身を持って実感させられた。なんせ自分と黒歌が数年近く頑張って作った物を、彼らは高速に、正確に、短時間で行い、実行可能にしてしまっていたのだから。

 

 しかも神器と違ってサポートが無いから扱いが難しいしエネルギーの消費も激しいんだよなぁ。

 

 その為効果に段階を付けることでネルギー消費の無駄を抑える事にした。

 

 だいたい(a)が二倍。(b)が七割。(c)が五割。(d)が三割の増減基準となる。攻撃や回復の場合はそのままランクが高いほど高威力であり消費エネルギーも高くなる。

 

 それより、この状況についてなんて説明すればいいんだろう。

 

 帰宅後の両親への説明や安全を考えたりと、やる事が一気に増えたなと思いながら、そう言えばレイナーレが一誠が戦闘したと言っていたのを思い出す。

 

 連絡が無いって事は少なくとも大事には至っていないって事かな? 嫌な予感も無くなったし、一応後で無事かどうかの確認はしておこう。

 

 帰ってからやることが一つ増え、心の中で溜息を吐いた。

 

 




と言うわけで生前の世界の霊子魔術の使用が、最後の能力ですね。

まじこいではハンターハンターの法則でオーラその物で『模倣』してましたが、こっちはちゃんと術式を組んでいるので模倣ではなく完全に『再現』しちゃっています。

その分上位の礼装の魔術(完全回復や攻撃無効化など)やサーヴァントのスキルなんかは消費が激しいので滅多に使用できない感じですね。まぁ、だからこそ主人公にエネルギー回復系の能力を持たせた訳ですが。


【原作の技・装備解説】
『注意:効果の名称が略称で正式名が分からない物もあるのでルビは振っていません。申し訳ない』

装備名:『空気撃ち/ニの太刀』
効果:『rel_mgi(b) ○ボタンで2手スタン+低レベルの敵撃破』
解説:『魔力放出ランクBを使用できる』

フィールドで○ボタン押すと敵に向かって魔力が飛び、当たれば消滅するか、バトル時に相手が二手行動不能にできる礼装です。
正直使い勝手はいまいち(敵が動きまくるし、ゲームの性質上戦ってパネルを開けないといけないので)

解説を見る限り、原作の魔力放出とは仕様が違うようなので、普通に魔弾の扱いとしました。

因みに三の太刀も有り、解説だとランクは上ですが効果が下回るせいか消費MPは二の太刀の方が上だったりします

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。