リアルで色々と在って投稿が出来ずにいました。
この作品はリハビリ作品です。
2020年/月の裏側
人類が宇宙開発を止め、地球に閉じこもる事を選択し、人が訪れる事が無くなった月の大地。
地球から遠く離れた天高く聳え、夜に輝く星。生命を一切感じさせない石で出来た荒野だけが広がっている衛星。
その衛星の裏側。宇宙開発を止めた為に、地球からは観測する事も出来ない裏側の大地。其処に動く影が一つ在った。
(此れは凄いですね……まさか、こんな物が月に在るなんて)
それは人の形をしていた。蒼い髪を腰まで伸ばし、真紅に輝く瞳に異常なほど輝かせた白衣を着た女性。
その時点で女性は異常だった。月は地球と違い、人間が活動する為に必要な酸素は一切無い。だからこそ、人は様々な精密な道具を持って嘗て月にやって来ていた。だが、女性は宇宙服など一切身に着けていない。何らかの調査機器らしき物を手に持っている以外、女性が着ているのは地球上で見られる一般的な服だった。
明らかに異常で在りながら、女性は気にした様子も見せず、ただ静かに何らかの作業を行なっている。
(…欲しいですね。しかし、迂闊に干渉するのは不味そうです。此れは策を持って動くべき)
ゆっくりと女性は白衣の中に手を入れる。
白衣から出された手には何らかの器具が握られていた。その器具を女性は大地に押し当て、すぐさま操作する。両手は凄まじい速さで器具を操作し、真剣さに満ちた瞳で表示されて行くデータを見つめ、カッと目を見開く。
(今です!!)
会心に満ち溢れた笑みと共に、一つの因子を月に隠されている遺物に送り込んだ。
危険過ぎる因子故に女性自身でさえも使用を控えている因子。その因子は月の裏側から遺物内部に女性の手によって入り込んだ。
(……この遺物の裏側を構成しているデータは、あの
女性は器具を白衣の中に仕舞うと共に立ち上がる。
流石にこれ以上留まるのは不味い。幾ら月の表側が関心を払わない裏側からの干渉と言え、女性にとっても危険な因子を送り込んだのだ。表側が僅かに裏側に目を向け、女性のした事に気が付けば全部台無しになってしまう。
もはや振り返ることなく女性は撤収し、再び月は静寂に包まれたのだった。
????年/月の裏側の領域内部。
その領域は知的生命体にとって害にしかならないもので構成された空間だった。
表側が観測し、不要と判断したもので構成された空間。悪性に満ちたその領域に送り込まれた因子。本来なら送られた瞬間に悪性に呑み込まれてもおかしく無い筈のはソレは、まるで居るべき場所に戻ったかのように構成を開始し始めていた。
だが、例え形を構成出来ても其処まで限界だった。何故ならば因子には意志が無い。所詮ソレは本来の存在の欠片とも言えない一部でしかないのだから。構成が完了したとしても、ただ悪性の領域に漂うだけで終わる。それだけの存在で終わっていただろう。
表側に人類が干渉する事がなければ。そして表側で■■が幾度となく繰り返されなければ、永久に目覚める事は無い筈だった。
――……い
感じるのは、因子の元に取って自らの大半を構成していたと呼べる■■の気配。
――………い
あらゆる時代の英傑と呼ばれた存在達が繰り広げる■■の気配。
――…………い
例え欠片とさえ呼べない因子でも、ソレは■■を求めていた。
――…………たい
何度も何度も繰り返される表側での常識を超えた■争の気配。
表側と裏側の領域の壁さえも超えて届く英傑達の気迫。現在の地球では失われてしまった己の生涯を駆けて鍛えた技と象徴の激突。
因子の元になった存在が何よりも渇望していた■■が手を伸ばせば、届くような場所で繰り広げられている。
――……せろ……■を……せろッ!!
一度や二度で■争が終わっていれば、因子は幾ら最適な場所に在ってただ元の存在を象るだけで終わっていた。
意志など目覚めず、月の裏側の領域に漂うだけの存在で終わっていた。だが、何よりも望む事が幾度となく繰り広げられたせいで、因子は意志を宿した。いや、覚醒したと呼ぶべきだろう。
――■■■■■■ッ!!!
一つの意志を宿した覚醒の咆哮。ただの因子に過ぎなかった筈のソレは、悪性に満ちていた空間に響き渡る咆哮を上げた。
『させません!!!』
――■■■■ッ!?
因子だけしか存在しない筈の空間に、切羽詰まった鋭い声が響いた。
それだけではなく、次々と因子が此れまで月の裏側で蓄えていた力が、何処かへと抜けて行く。
『まさか…こんな存在が、月の裏側に潜んでいたなんて。でも、おかげで裏側の領域の力をかなり取り込めました。其処だけは感謝します』
――■■■■ッ!!!
『ですけど、このまま貴方を月の裏側に残しておくのは危険過ぎます。なので♪ 貴方には虚数空間に消えて貰います』
――■■■■ッ!?
『では、虚数の闇の中に消えて下さい』
衝撃が全身を襲う。
声の主との距離が離れて行くの感じ、無意識に動くようになった右腕を伸ばす。
闇の中に呑み込まれる最後の直前に目撃したのは、ステッキを持った黒衣を着た紫色の髪の少女の姿だった。
2032年/????
体感時間で幾星霜、幾億、幾万の時の経過を感じ、全ての感覚が消え失せた。
目も見えず、耳も聞こえず、手足の感覚も無く、ただ果てが無く、底知れない闇の奥底に落ちて行く。
いや、既に落ちると言う感覚さえも無く、全てが失われかけていた。だが、終わらない。諦めるという意志だけをソレは持ちえない。
謎の少女の手で虚数の闇の中に飛ばされた直前、奪われずに済んだ力が身に宿っている。
残された力を用いて虚数から脱出する機会を、ソレは待ち続けていた。
今虚数から脱出出来たとしても、月の裏側から虚数に追いやった存在が居る。残された力を全て使って脱出すれば、後に残されるのは弱体化し切った己だけ。
そんな状態で月の裏側に戻れば、一瞬の内に消滅されてしまう。故に、幾星霜が経ったとしても機会を待ち続ける。虚数空間から脱出出来る機会が出来る瞬間が来るのを。
――……ない
(……何だ?)
強い意志が籠もった声が聞こえた。
自ら以外に何も存在しない筈の虚数空間。だが、確かに聞こえた。
無明の闇の中で確かに強い意志。小さく本来ならば消え去っても可笑しく無い筈なのに、確かに強い意志の火種を宿した声が。
――忘れないッ!
「……面白い。貴様は面白いなッ!!」
声の主が驚く気配を感じる。
だが、そんな事は構わなかった。動くだけでも、口を動かすだけでも残された力が減って行くのを感じながらも、それでも感じた火種の主に声を飛ばす。
「この空間に呑み込まれれば、普通ならば何もかも呑み込まれる筈なのに、己を失いながらも『忘れない』とほざけるとは……面白い」
愉快だった。何故此処まで愉快なのか自分でも分からないが、それでも愉快だった。
「良く聞け。この空間から脱出する方法が在る」
――ッ!?
「だが、俺と貴様が一緒に脱出する為には力が足りん。だから、力を貸せ。貴様にはそれが宿っている筈だ。『聖杯戦争』に参加している
相手側が手を伸ばす気配を感じる。
ゆっくりとその手の動きに続くように、自らも右腕を伸ばす。
――マスターとして、命じるッ! この空間から脱出させて!!
強い意志が籠もった声と共に、膨大な力の奔流が
「ほう、まさか令呪全てを使うとはな。忘れているのか。それとも形振り構っていないのかは分からんが、まぁ、良い。充分過ぎる力だ!」
全ての力を解放する。
解放された力は暗闇を一瞬の内に崩壊させ、星の輝きが光る空間が目の前に広がった。
同時に空間に浮かぶ薄茶色の髪に、茶色の制服を纏った少女が居る事を認識する。
酷く驚いたように、自身を見つめている少女の左手の甲に刻まれている輝きを失った令呪を目にする。
「さて、道は出来た。どうやら俺が知らん間に、裏側も様変わりしているようだ。さっさと脱出するぞ」
最早言う事は無いと言うように少女の制服の襟首を掴み上げた。
いきなりの行動に少女は目を見開くが、構わずに移動を開始する。
星の輝きも消えて行き、意識が覚醒するような感覚に囚われる。
「貴様には借りが出来た。だから、貴様が望めば力を貸してやる。良く覚えておけ。俺の名は………『ブラック』と呼べ」
目覚める。長い、幾星霜の時の流れに囚われて、虚数の闇に封じられていた『漆黒の竜人』の因子が強き意志に寄って目覚めた。
このブラックは本気で弱いです。
ゲームと同じようにステータスはオールEです。
本来の姿で戦ってもE+が精一杯です。
他の二作品で所持している『オメガブレード』も『全てを従える意志力』、そして『ルインフォース』も居ません。
正しゲームと同じように戦えば、戦うだけ成長していきます。
因みに本物のブラックは『にじファン』時代に投稿したゼロ編での最後です。アレにフリートの最後が無くなった形で死にました。