異空生物―喰種―イクーセイブツ―グール―   作:中2病人間M

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野村

「よく眠れたかい?」

「はい」

「それはよかった」

 

 

僕はミウラ部長と対策部の測定室に来ていた。

 

 

「さてと、これが君の喰種(グール)マスクとヒトの顔マスクだ」

「……」

 

 

白いマネキンのような被り物と眼帯のマスクがあったのだ。

 

 

「眼帯……」

「うん、君は隻眼(セキガン)喰種(グール)だからこれにした」

「なるほど……で、このマネキンは?」

「やっぱマネキンに見える?被ってみ」

「あ、はい」

 

 

僕はそのマネキンマスクを被ってみたのである。

 

 

「!?」

 

 

すると、マネキンマスクは粘土のように変形し違うヒトの顔になった。

 

 

「鏡見て」

 

 

僕は鏡を見ると僕とは全然違う顔になっていたのだ。

 

 

「これはスゴいですね、しかも、すごく薄くて気にならない」

「うん、それ撮影するからスーツに着替えて、スーツも作ったよ」

「あ、はい」

 

 

僕はスーツに着替えるとマネキンマスクの顔写真を撮影したのである。

 

 

「あっ、じゃ次は眼帯マスクね、あー、喰種(グール)の名前どうする?」

「……マスクに合わせて眼帯で」

「それがベストだね、じゃこれに着替えて」

 

 

今度は背中にPOLICEと書かれた警察の機動隊と同じ服だった。

 

 

「……」

 

 

僕はそれに着替えてマスクをつけて再び撮影をした。

 

 

「おけおけ、じゃフジが来たら喰種(グール)の世界に行くからフジが来るまで軽く喰種(グール)の世界を教えるよ、まず、向こうに行くときは眼帯マスクを持っていくこと、また、向こうでは喰種(グール)であることを人間にバレないようにすること、向こうには喰種(グール)処理省っていう喰種(グール)の捜査の組織があってこっちと違って喰種(グール)は殆ど駆逐されるからね、また、喫茶店にも人間のお客さんはいるから気を付けてね」

「はい」

 

 

そこへ、

 

 

「……お待たせしました」

「お、来たかフジ、じゃあ連れてって」

「……わかりました……いくぞ」

「はい」

「あ、ソラ、忘れてた、はい、これ」

 

 

ミウラ部長は僕にカードを渡したのだ。

 

 

「これは?」

「使い捨てタイプの異空通行許可カード、入って戻ってくるまで使えるよ、君はまだ登録されてないから後でちゃんとしたもの渡すよ、ひとりじゃ通れないからフジと一緒にね」

「はい、ありがとうございます」

「……行くぞ」

「はい」

 

 

そして、僕とフジさんはラウンジの奥へと進み扉の前へと来たのである。

 

 

フジさんは扉の横の電子機器に何かの手帳をかざすと電子音がして扉が開いた。

 

 

「……カードをちゃんと持っているか?」

「はい」

「……持っているならそのまま進んでいい、こい」

「はい」

 

 

そして、僕とフジさんは扉の奥へと進んだ。

 

 

『冨士 喜一及びゲスト通過確認、ゲストの期限は24時間です』

「……許可カードは持っているだけでいい、ゲストはお前のことだ、24時間以内に戻らなければならない、また、ゲストは他の許可者と一緒でないと出ることはできるが入れない」

「戻らなかったりひとりで通ったら?」

「……対策部が出向き強制連行する、そいつの度合いによっては二度と許可が出ない」

「なるほど」

 

 

僕らは喫茶店のような場所に出たのである。

 

 

「あ、フジさん、だれその人」

「……新人らしい、今日はシフトはないが店長に頼まれて連れてきた」

 

 

僕とフジさんは喫茶店の事務室のような場所へと来た。

 

 

「……喰種(グール)もいれば人間もいる、人間にはバレないようにな」

「はい」

「……店長、どこだ」

 

 

フジさんがとある部屋の扉を開けるとそこには首のない死体が3つ並んでいたのだ。

 

 

「っ!?」

「……叫ぶな、客に怪しまれる」

 

 

フジさんは叫ぼうとする僕の口を塞いだのである。

 

 

「なんで……死体が……ヒト……」

「……喰種(グール)だ、ここでRc結晶をつくる」

「でも……この人達は……」

「彼らはね、若い女性を中心にヒトの肉を食べていたんだ、それに補食の際、随分と酷い食べ方をしていたしね」

 

 

眼鏡をかけた優しそうな人が話に入ってきた。

 

 

この人だれ?……でも、だからって殺していいわけないよ。

 

 

「……店長」

「店長!?」

「どうも、野村珈琲店(ノムラコーヒーテン)、店長兼レストラン野村(ノムラ)、オーナーのノムラです。話はフジ君から聞いてるよ、南雲 颯君」

「はいっ……よ、よろしくお願いいたします!!」

「うん、それじゃ店の中を案内するよ、そこで他の人たちにも挨拶してね」

「はい!!よろしくお願いいたします」

 

 

そして、店長に連れられて僕は先程の喫茶店スペースにやって来たのだ。

 

 

「どうも、初めまして、ナグモ君、石井 美代(イシイ ミヨ)です。日替わりで喫茶とレストランの厨房を交代交代でやってます」

「よろしく、お願いいたします」

「はい、よろしくね」

「ミヨさん~、ブレンドおかわり~」

「はぁい」

「こっちはミックスサンド」

「かしこまりました……あ、ミックスサンドこれで終わりか」

 

 

ミヨさんはミックスサンドを注文した客に提供すると電話の受話器をとったのである。

 

 

「ミックスサンドがなくなったから追加で」

 

 

そして、ミヨさんは 珈琲(コーヒー)の準備を始めた。

 

 

「うん、上へいこうか」

「はい」

 

 

さらに上へ行くとレストランになっていたのだ。

 

 

「お客さんがレストランへ行くときは外から上がってもらうんだ」

 

 

レストラン、普通の席やカウンターのようなのもあるけど席によってはカウンターに仕切り、他に完全個室も何席もある。

 

 

「店長、どうして、カウンターにまで仕切りがあるんですか?」

「ん?ああ……食べてるものを見られたくない人だっているからね、ほら、女性とか」

「……そうですか」

 

 

そして、厨房へ入ると男の人がミックスサンドの材料を仕込んでいた。

 

 

「よし、完璧と……」

 

 

ミックスサンドの材料を並べるとその人は扉を開けトレイを入れるとレバーを下げたのだ。

 

 

その扉の向こうは食事を運ぶためのエレベーターだった。

 

 

そして、受話器をとったのである。

 

 

「ミヨ、ミックスサンドの材料を送ったよ……え、なんで僕が作ってるかって……ハハ、いつもよりおいしいんじゃないかな……え、なんか色が悪いって……冗談キツいね~」

 

 

その時、電子版にナポリタンと表示された。

 

 

電子版なんだね。

 

 

「おっと、注文だ、はい、ただ今~」

 

 

男の人はパスタを茹でその間にナポリタンのソースを作り始めたのだ。

 

 

「お!君がソラ君だね、古田 丸吉(フルダ マルキチ)です」

「フルダ君、どうして君がここに?」

「いやぁぁ……」

 

 

そこへ、

 

 

「マルキチ、ごめん」

 

 

女性がひとり慌てながらやって来たのである。

 

 

「いいんだよ、お腹壊すことぐらいみんなあるよ」

「ありがとう……これ、ナポリタンのソース?」

 

 

そして、女性はそのソースを一口味見した。

 

 

「えっ!?」

「うん、酸味多い、もう少し炒めないと、ナポリタンに酸味はいらないよ」

「さすが」

「まぁね」

 

 

なんで吐かないんだ……喰種(グール)だよな……

 

 

「ん?ああ、君がソラ君ね、初めまして、レストラン厨房担当の白石 彩乃(シライシ アヤノ)です」

「……よ、よろしくお願いします」

「うん、マルキチ、ありがとう、もう平気よ、向こう戻っていいよ」

「そうさせてもらうよ」

「じゃソラ君もいこうか」

「はい」

 

 

そして、フルダさんについてゆくと別の厨房があったのだ。

 

 

「ここは?」

喰種(グール)のお客さんに提供する食事をつくる厨房さ」

「え」

「さっき君は私にカウンターに仕切りがある理由を聞いたね」

「はい」

「その本当の理由は喰種(グール)のお客さんに安心して食事をしてもらうためなんだよ」

「その食事って……」

「うちでは人肉は提供しない、全て動物の肉さ」

「この厨房は僕とミヨで日替わりでやってるのさ、この厨房の電子版は喰種(グール)のお客さんが注文すると注文がここに出るんだ」

 

 

このお店には会員カードのような物がありそれを発効する際に奥で喰種(グール)であることを対策部から提供された機器で確認すると会員カードのデータに喰種(グール)であることが登録されその客がメニューを注文すると奥の喰種(グール)用の厨房に注文がいくという仕組みらしい。

 

 

「あのひとつ聞いていいですか?」

「なんだい?なんでも聞いてくれよ」

「さっきのシライシさん、食べてましたよね」

「ああ、ソラ君、そのことについて説明するから奥へ来てね、フルダ君、引き続きよろしくね」

「了解!!」

 

 

そして、事務所へ来ると椅子へかけたのである。

 

 

「あと、さっき喰種(グール)の死体をおいてあった部屋はRc結晶を作る部屋だよ……っと、これこれ」

 

 

店長はテーブルに何やら粉の入った小瓶を置いた。

 

 

「これは?」

「僕らは嘔吐神経麻痺剤(オウトシンケイマヒザイ)と呼んでいるよ」

「嘔吐神経?」

「これを飲めば嘔吐神経が麻痺され食べ物を食べても吐かなくなるよ」

「えっ、味は……」

「それは残念ながら変わらないよ、アヤノちゃんはこれを飲んでいるんだ、まぁ、アヤノちゃんは不味い物でもどうやったら味がヒトにとって美味しくなるかわかっているんだ」

「すごい!!ん?この薬の原料は何ですか?」

珈琲(コーヒー)とハッカだよ」

「ハッカ?ハッカ飴のですか?」

「うん、ハッカには喰種(グール)にとって嘔吐神経を麻痺させる効果があるんだ、ハッカを珈琲(コーヒー)に混ぜて粉にすれば薬にできる、まぁ、栄養にはいっさいならないけどね」

「なるほど……味は変わらないのか」

「私はね、人間の食べ物の味がわかるんだよ」

「えっ!?」

喰種(グール)も訓練次第で味がわかりハッカがなくても吐かないようになるんだ」

「すごい!!その訓練って僕も受けられますか!!……え、どのぐらいかかったんですか?」

「うん、僕は30年使ったよ」

「え、30年……」

「うん、でも、君の場合、もっと早くできると思うよ」

「えっ?」

「慣れてない喰種(グール)だったらまずハッカなしで人間の食事作ってるとこ通ったらそれで吐くよ」

「……」

「君は人間に近いんだと思う、どうする?やるかい」

「………………………はい、やります」

「うん、決まりだね、ああ、明日から高校にも復帰するんでしょ、じゃあ学校が終わったらシフトに入ってね、制服も用意するから」

「はい!!……あの」

「ん?」

「僕にも出来ますか?」

「うん、初めから教えるよ」

 

 

 

 

その後、僕は喫茶スペースに向かったのだ。

 

 

「あれ、フジさん」

「……店はまわったか?」

「はい、フジさん何故、珈琲(コーヒー)を?」

「……俺はここの店員じゃない」

「え?」

「……対策部の捜査官、こっちの人間には店長の友人で常連ということになっている」

「なるほど」

 

 

フジさんは周囲に聞こえないように小声でそう言ったのである。

 

 

そして、店長が喫茶店の厨房に入ってきた。

 

 

「ソラ君も1杯飲むかい?」

「いいんですか?」

「もちろん、何杯でもおかわりしてね」

 

 

何杯ってそれは遠慮するな。

 

 

そして、店長の淹れてくれた珈琲(コーヒー)はやはりおいしかったのだ。

 

 

 

 

その後、僕はフジさんと一緒に対策部へ帰るのだった。




野村珈琲店の店員はみんなソラより年上です。だから恋愛フラグは起きませんよ、でも、一番年が近いのは白石 彩乃です。

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