異空生物―喰種―イクーセイブツ―グール―   作:中2病人間M

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詩音

「ほら、お食べ詩音(シオン)

「……うん」

 

 

少女は目の前に並べられた肉をかじった。

 

 

それはとてもまずい肉だった。

 

 

「ねぇ、お父さん」

「ん?」

「どうして人は食べちゃいけないの?」

「たしかに人は俺たちより多くの命を奪う……けどな、人はな俺たちとそんなに変わらない生き物なんだ、俺たちの中にはそんなの構わず人を殺す連中もたくさんいる、父さんはシオンにそうなってほしくない、けど、それだとシオンは弱くなり他の喰種(グール)に狙われちゃう、いざという時にはシオンには自分の身を自分で守ってほしい、だから、人を殺す喰種(グール)の肉を食べてくれ」

「………うん」

 

 

幼少の頃から少女はこうして過ごしたのだ。

 

 

そのため、少女は人の肉を食べることに対して大きな抵抗があったのである。

 

 

 

 

 

それから、数年経過し少女は高校生となった。

 

 

父が家の冷凍庫を開けたのだ。

 

 

「もう、肉が底を尽きるか」

 

 

その時

 

 

家のインターホンが鳴ったのである。

 

 

「……先生か」

 

 

父はインターホンの相手を家の中に招き入れた。

 

 

「やぁ先生」

「どうも大沢(オオサワ)君」

「先生、こんにちわ」

「シオンちゃん、こんにちわ、っと、どうだい高校は?」

「学食まずい」

「やっぱそうかい」

 

 

この先生と呼ばれる男は医者なのだ。

 

 

先生はシオンを検診し一通りみると笑顔を大沢に見たのである。

 

 

「特に変わりはないようで、それと、大沢君、君はどうかい?」

「俺の体調は特に問題ない……それより、肉が少ないから一回向こうに行って狩ってくる」

「そうか、気を付けてな」

 

 

先生が出ていくと大沢は首からかけていたペンダントを強く握った。

 

 

すると、ペンダントを握っている手から光が溢れ大沢の姿が消えたのだった。

 

 

 

 

 

しかし、大沢がここへもどることはなかったのだ。

 

 

 

「お…お父さん……」

 

 

暫くシオンは戻ることを信じて冷凍庫の肉を食べて過ごしていたが一向に父が戻ることはなかったのである。

 

 

「私、どうしたら……」

 

 

その時

 

 

インターホンが鳴った。

 

 

「は!!先生……」

 

 

シオンが扉を開けるとそこには先生がいた。

 

 

「シオンちゃん無事かい!?」

「お…お父さんが戻ってこない……」

「やはり、そうか」

「え……」

「食料は?」

「もうない」

「………よく、聞いてくれ、君のお父さんのペンダント」

喰種(グール)の世界とこっちを行き来できるペンダント」

「そうだ、あのペンダントは僕の持っている置時計と連動していてペンダントが破壊されると時計が止まる、そして、今、時計が止まってるんだ」

「……それって」

「……君のお父さんに何かあったのかも知れない」

「……死んじゃったの?」

「………わからない、けど、ペンダントがない以上何もできない、シオンちゃん、君は食料を調達する必要がある」

「食料!?」

「そうだ、けど、こっちじゃ喰種(グール)は手に入らない、仮にいたとしても人間の僕じゃ敵わないし君でも危険だ」

「じゃ、どうしたら」

「……幸いにも僕は医者だ、その気になれば病院から出る肉を君に届けられる」

「……人ってことですか」

「そうだ、喰種(グール)がない以上、君の食事は人しかないんだ、後は山とかの自殺現場から遺体を集める等するしかない」

「……………でも、人は……」

「ダメだ、でなきゃ君を生かせられない、君のお父さんと約束してるんだ、お父さんに何かあったら俺が君の面倒を見るって」

「……無理です」

「シオンちゃん!!」

「無理です、人なんて食べたくありません!!」

「人も喰種(グール)も同じようなもんだろ!!」

「ちっ…違います!!人と喰種(グール)は違うんです!!だから、私は……」

「うるさいっ!!食うんだよ、でなきゃ生きられない!!」

「嫌です!!絶対に嫌です!!」

「あ、こら!!」

 

 

シオンはそのまま先生を押し退けアパートを飛び出したのだった。

 

 

 

 

 

それから数日間、シオンは何も食べずに街をさ迷っていたのだ。

 

 

「………肉…食べたい…………いやぁ…人なんて食べたくない」

 

 

その時

 

 

どこからか何かの匂いがしたのである。

 

 

「…………………何この匂い、なんか、おいしそうな、匂い……」

 

 

 

 

 

「なぁ、ソラ、なんで筋トレしてるんだよ」

喰種(グール)殺すため」

「……おま、怖いこと平気で言うなよ……てか、喰種(グール)に筋トレ効果あるの?」

「とうとう、僕のこと喰種(グール)扱いしたか」

「あ…いや、わりぃ」

「冗談だ、僕は再生が早いから赫子出して筋トレとかすると赫子が破壊された筋肉をそのまんま治しちゃうから筋トレの意味がないらしい、けど、赫眼なしで筋トレすれば早い速度で少量流れるRc細胞が筋肉を再生させるからより早く強って無駄に筋肉膨張させず細く密度の多い筋肉になるらしい」

「へぇ~」

「わかってるのか?」

「………」

「わかってないな、そーいや、カナさんは?」

「うん、なんか女子たちで家庭科室使ってなんか作ってるみたい」

「女子だね」

「だな」

 

 

 

 

「はい、卵」

「ありがとうカナ」

 

 

カナは大量の卵をテーブルに置いた。

 

 

「ってカナ、なんで卵!?」

「え、カルボナーラ作るんじゃないの?」

「違うって、ナポリタンだよ」

「え、カルボナーラじゃなかったけ?」

「違うぅぅ!!」

 

 

その時

 

 

「あっ!?」

 

 

カナは使わない卵を退かそうとしてうっかり卵を落としてしまったのだ。

 

 

「あーあ、やっちゃったね」

「……掃除だる」

 

 

ドアが全て空いておりそこから卵の匂いが外へと流れていたのだった。

 

 

 

「…………………何この匂い、なんか、おいしそうな、匂い……」

 

 

 

 

「ソラ、まだやんのかよ」

「おう」

「汗だくだくじゃねぇか」

「ほんとだね」

 

 

その時

 

 

「あ、カナちゃんからだ……もしもし」

『ナグモ君は?』

「はい?」

『ナグモ君!!』

「えっと、隣で筋トレしてるよ」

『ナグモ君!!喰種(グール)喰種(グール)!!校庭』

「かわれ」

「おう」

「カナさん、たしかか?」

『うん、間違いないあの眼してたから』

「わかった」

 

 

僕はカナさんの連絡を受け対策部に連絡しマスクを着けて校庭へ出たのである。

 

 

校庭では少女がひとりうずくまっていた。

 

 

「あれか……ん?匂いが……喰種(グール)なのか」

 

 

僕はRcバレットを構えたのだ。

 

 

喰種(グール)対策部だ、君は喰種(グール)か?」

「…………………はい」

「そうか、動くな、抵抗するなら駆逐する」

「………汗の匂い……」

「汗……あー、俺のだな」

「汗………………美味しそう!!食べたぁぁぁい!!」

「!!」

 

 

少女から甲赫の赫子が現れたのである。

 

 

そして、少女の顔が見えた。

 

 

「!?隻眼……」

 

 

そう、その少女は右目のみが赫眼だった。

 

 

「………隻眼の喰種(グール)だと」

 

 

腕から手にかけ巻き貝のような赫子が出現しておりその赫子で少女は僕に攻撃してきた。

 

 

「おっと」

 

 

僕は赫眼になり赫子を出すと相手の甲赫を鱗赫で防いだのだ。

 

 

「落ち着け!!」

「お腹すいだぁぁぁぁぁ、ニクニクニクゥゥゥ!!あがぁぁぁぁ」

「落ち着け!!」

 

 

僕は少女を蹴り飛ばしたのである。

 

 

「あだぢは……人なんて食べたくなぁい……」

「!!」

「嫌だぁぁぁぁぉぁ」

「………………………………………………………………わかる……わかるよ、君の気持ち」

「……なにがぁぁ、わかるわけないわよぉぉ!!」

 

 

そうか、こいつ僕と同じなんだ。

 

 

僕はマスクを外した。

 

 

「!?」

「僕は君と同じなんだ」

「…………………………………………………………ごめんなさい」

 

 

少女は赫子が消えその場に倒れたのだった。

 

 

僕は対策部に来るのを待ってもらうように連絡し少女を保健室に運んだ。

 

 

 

 

 

「……ここは……」

 

 

暫くして少女は保健室のベッドで目を覚ましたのである。

 

 

「やぁ」

「貴方は……あれ、なにこの匂い」

「ちょうど珈琲(コーヒー)を淹れたんだ」

「え」

「知らないか……ま、飲んでみ」

「……うん」

 

 

少女は戸惑いながらもその珈琲(コーヒー)を飲んだ。

 

 

「!!おいしい……」

 

 

少女はその珈琲(コーヒー)を一気に飲み干したのだった。

 

 

「熱……でも、おいしい……………あれ、なんかマシになった」

「だろ」

「うん」

 

 

珈琲(コーヒー)にRc結晶を3個ほど混ぜといたからな。

 

 

「僕は南雲 颯、よろしく」

「あ、私は大沢 詩音(オオサワ シオン)です」

 

 

そこへ、

 

 

「へい、おまち」

 

 

ダイチが料理を持ってこの部屋に入ってきたのだ。

 

 

「いった通りに作れた?」

「カナちゃんもいたし、楽勝」

 

 

ダイチはシオンさんの前に料理を置いたのである。

 

 

「え……」

珈琲(コーヒー)のことも知らなかったし豚とか牛が食えることも知らないよな?」

「え!?」

 

 

聞けばシオンさんは母は人間で父が喰種(グール)という僕とは違い正真正銘の隻眼の喰種(グール)だった。

 

 

父からは喰種(グール)の食料は人か喰種(グール)だけと聞かされており生まれてから今の今まで喰種(グール)の肉だけを食べ続けていたようでやはり他のことは何も知らないようだ。

 

 

また、父はあっちとこっちを行き来できるペンダントを持っていたが喰種(グール)の肉を探しに向こうへ行ってから帰ってこなくなってしまったらしい。

 

 

「それは大変だったね」

「……いえ」

「とりあえず、食べな……」

「はい……」

 

 

シオンさんは肉料理を食べた。

 

 

「!!おいしい……え、おいしい……」

 

 

今まで喰種(グール)の肉しか食べてなかったならきっとおいしいだろうな、喰種(グール)のまずさは僕がよく知っている。

 

 

シオンさんはすぐに食べ終えてしまったのだった。

 

 

「はい、珈琲(コーヒー)、おかわりどうぞ」

「ありがとうございます」

「つか、えっとシオンさんは」

「あ…シオンで結構です」

「あ、うん、シオンは歳いくつ?」

「えっと、16です」

「えっと高校生?」

「はい、一応……」

「そうなんだ、高校近いの?」

「えっと、ここです」

「そうか、ここか……え、ここ!?」

「はい」

「………全然、知らなかった…」

「私も同じ隻眼の喰種(グール)が同じ学校にいるとは思いませんでした」

「……………そうだな」

「どうしたんですか?」

 

 

僕は教えるかどうか迷ったが教えておくべきだと思ったのでシオンに自分が元々人間だったことを教えたのだ。

 

 

「……………そんなことがあるんですか……………でも、それは大変でしたね」

「ごめん、変な話して」

「いえ」

 

 

 

 

その後、対策部がやって来てシオンは対策部へ連れて行かれることになり僕も付き添いで一緒にいったのである。

 

 

そして、シオンは対策部に登録され店長の計らいで野村珈琲(コーヒー)店で働くことになったのだった。




ついにメインヒロインのシオンの登場です、シオンのモデルはキンハに出てくるシオンです笑

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