転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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題名の割には文章量普段通り。
また、今回は深海棲艦同士の会話が大半であるため、カタカナ変換をしておりません。(変換が面倒)


99 深海棲艦 地中海方面艦隊司令部

数日後 地中海東部某所

 

 

地中海東部の何処かにある、『深海棲艦地中海方面艦隊司令部』の大会議室内は…怒声が響き渡っていた。

 

 

「だいたい、何が『縄張りを荒らされたから』なのよ! その為にこっちは一大チャンスを不意にされたのよ!」

 

コの字型に並べられた机の一角で戦艦棲鬼が机を叩きながらレ級に向かって怒鳴る。

 

 

「まあまあ、落ち着いて、落ち着いて…」

 

穏健派と言える港湾棲鬼が戦艦棲鬼を落ち着かせる。

 

 

「だったら、事前に一言言いに来ればいいじゃん」

 

 

「な、なんだと!!」

 

レ級のマイペース発言に戦艦棲鬼の沸点が限界に達する。

それを収めたのは……

 

 

「戦艦棲鬼、落ち着け。レ級、お前はとりあえず黙ってろ」

 

 

「はいよ〜」

 

『深海棲艦 地中海方面総司令官』の泊地棲鬼だった。

 

 

「まあ、だがだ…レ級の言葉にも同意すべき部分がある」

 

 

「ちょっと、泊地棲鬼! 貴女、こいつの肩を持つの!?」

 

 

「だから、『同意すべき部分がある』よ。もちろん、レ級はやり過ぎてるけどね」

 

 

「え〜」

 

泊地棲鬼の言葉に戦艦棲鬼が反応し、レ級はそう言ってブー垂れる。

 

 

「とりあえず、それは置いといて…話が進まない」

 

戦艦棲鬼の隣に居た装甲空母鬼が呆れ気味に言った。

なお、彼女は戦艦棲鬼と同様、強硬派ではあるが冷静派である。

 

 

「そうだな…で、マルタ鎮守府の様子は?」

 

 

「まあ、被害自体が艦娘の負傷や装備の破損・補充だけだから…まあ、1週間か2週間は行動にはうつらないんじゃあないかな」

 

泊地棲鬼の質問にレ級は『滝崎・高塚達』から聞いた情報そのままを答える。

 

 

「よし! 今すぐ戦力を整えてマルタ鎮守府を…」

 

 

「「無茶言わない」」

 

戦艦棲鬼の言葉を泊地棲鬼・装甲空母鬼が呆れながら言って止めた。

 

 

「あのね…その戦力を何処から引っ張ってくるの? 前の戦いでこっちが戦力をゴッソリ削がれてるのよ?」

 

トドメとばかりに離島棲鬼が呆れながら言った。

 

 

「それに前はマルタの残存戦力だけで追い出されたのに、本隊込みのマルタ攻めたら、数日で地中海は人間側の手に戻るぞ」

 

追撃とばかりにレ級の言葉が戦艦棲鬼に突き刺さる。

 

 

「と言う事よ、戦艦棲鬼…聞いてないわね」

 

机に突っ伏している戦艦棲鬼に泊地棲鬼は同情した。

 

 

「とりあえず、レ級の事は総司令官に任せるわ。ここで暴れられても困るし…レ級、貴女も次は参加しなさいよ」

 

 

「へいへい」

 

 

「えぇ、と言う事で一同、解散」

 

装甲空母鬼の言葉にレ級はマイペース気味に返事をし、泊地棲鬼は会議を終わらせた。

 

 

 

暫くして 泊地棲鬼の執務室

 

 

「……で、実際はどうなの、マルタ鎮守府は?」

 

そう言って泊地棲鬼はレ級に質問する。

『お任せされた』レ級と『押し付けられた』泊地棲鬼、更に港湾棲鬼と離島棲鬼が泊地棲鬼の執務室に居た。

 

 

「どうもこうも、さっきも言ったじゃん。今やマルタ島鎮守府は日本本土や太平洋に展開している鎮守府の精鋭部隊と同等。下手に触れば火傷どころか死ぬって」

 

 

「むう……」

 

 

「泊地棲鬼、わざわざレ級を『ながれ』にしてまでもマルタ鎮守府周辺を『縄張り』にした結果がこれよ…そろそろ決断しなさいよ」

 

レ級の言葉に泊地棲鬼は押し黙り、離島棲鬼が迫る。

これに泊地棲鬼の言葉に溜め息を吐く。

 

 

「……鎮守府の人間状況は?」

 

 

「泊地〜、提督と副官が憲兵に留守を預けてあの結果だよ〜。艦娘達も彼の指揮に文句も無い。私が深海棲艦であるのにも関わらずここまで話す。後は何がいる? 氏名階級? 性格? 飯の味?」

 

 

「……あー、もう、ホントに…とりあえず、誰か1人を貴女に付けるわ…名目は『捕虜の様子見とレ級への伝令』!」

 

半分自棄と言わんばかりに言い放つ泊地棲鬼。

 

 

「ほいほい、じゃあ、都合合わせよろしく〜」

 

マイペースを崩さずにレ級は出て行った。

 

 

「…都合合わせか…ホントに長かったわね…」

 

レ級の言葉に苦笑いを浮かべながら泊地棲鬼は呟く。

 

 

「勝手に感傷に浸ってるところ悪いけど、泊地棲鬼、どうするの? 貴女の考えている『人類との共存』の為に『会談』をしたいと言う意思は変わらないの?」

 

離島棲鬼の言葉に泊地棲鬼は頷く。

 

 

「訳の分からないまま始まったこの戦いも既に数年経過しているわ…私も疲れたし、貴方達も一緒でしょう? そもそも、私達の存在意義がわからないのに……偶には青空の下で何も考えずにゆっくりとしてみたいわ」

 

膠着した戦況とそれに伴う戦意保持の難航、交戦による人類側の解明、個々の自我の保持…等々、初期段階では到底見る事の無かった事が深海棲艦側でも発生していた。

これをどうするか…徹底的に抑えるか、或いは少しづつ軟化するか、この選択肢で『徹底的に抑える』は難しくなりつつある。

なぜなら、深海棲艦側も個性的な者も出てきた上に、特に『姫』や『鬼』と言った上級指揮官クラスがそれに染まりつつある中で『抑える』は様々な角度から見ても自分で自分の首を絞める行為にしかならないからだ。

そんな中で泊地棲鬼は独自に動いていた……明日の我と仲間達、そして、人類・深海棲艦、皆の未来の為に……。

 

 

 

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