転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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高塚の指揮による、鎮守府防空戦です。


何故か、音痴ながらも歌います。(なに?)


89 鎮守府空襲

翌日 朝 マルタ島鎮守府

 

 

 

「マルタ共和国軍より敵攻撃隊接近の通報が来たであります!」

 

 

「わかった…空襲警報発令! 総員対空戦闘用意!!!」

 

あきつ丸からの報告に高塚の指示の下、空襲警報のサイレンが響き渡る。

 

 

「あきつ丸、飛来方向は?」

 

 

「北の方向からであります」

 

 

「北か…動かない陸上施設だから真っ直ぐ来たみたいだな」

 

 

「それはいいとして、これは大丈夫なのか?」

 

そう言ってエーディトが苦笑いを浮かべながら訊いてくる。

 

 

「大丈夫さ。失敗したら、吹っ飛ぶの俺だし」

 

 

「外の天幕で指揮を執る事では無くてだな……まあ、大丈夫か、お前だし」

 

 

「そうそう、大丈夫、大丈夫……さあ、来てみろ、攻撃隊め。いの一番に泣くのはお前らだからな」

 

ニヤリと笑いながら高塚は呟いた。

 

 

 

30分後 鎮守府上空

 

 

敵攻撃隊が飛来した。

対し、鎮守府にある航空戦力…零戦21・52型、隼、鍾馗、屠龍、96艦戦、2式水戦、強風、零観、瑞雲…を上空待機させて迎え討った。

しかし、戦闘機隊が積極的に襲撃したのは制空隊と直衛隊だった。

攻撃隊から戦闘機隊が離れ、爆撃機・攻撃機隊のみとなっても妨害は受けずに鎮守府施設上空までやって来た。

そして、先手の急降下爆撃機隊(今回は緩降下爆撃だが)が爆撃態勢に入った瞬間、『それ』はおきた。

地上のあちこちで布が剥ぎ取られ、現れたのは地上を埋めんがばかりに配置された数多の対空火器。

そして、爆撃機隊は本来なら多方向・分散飛来によって爆撃するところを同一方向から集団で爆撃態勢に入っていた。

よって、爆撃機隊は地上からの対空砲火を真正面から受ける形になった。

12.7、12、11.4、10、8.8㎝と言った高角砲、40、37、25、20、12.7、7.7㎜の機銃が一斉に火を噴いた。

必中必殺の距離で高角砲の信管調整も終えている状況、更に爆撃態勢に入っていて回避も出来ない段階でそんなところに真正面から突入したのだから、面白い様に命中する。

たちまち、突入した爆撃機隊はズタボロにされた。しかも、この時になって待機していた96艦戦や2式水戦、屠龍、水観、瑞雲で編成された部隊が上空から攻撃隊に襲い掛かった。

本能的に回避を選択する機体が多かったのだが、問題はここからだった。

降下しようとした機体は対空砲火の餌食、旋回回避は運動性のいい機体の餌食になり、爆装を放棄しないまま逃げようとする機体は屠龍に狙われてた。

つまり、地上からの対空砲火を初撃に後続部隊の攻撃、と幾重にも貼られた罠に嵌ってしまっていた。

しかも、後続部隊は無理に撃墜する必要は無く、爆弾を投棄させればいいし、投棄しない機体も命中弾さえ与えてしまえば降下するか、被弾による機能低下で地上砲火の的になってしまうからだ。

しかも、上手く逃げても安全ではなかった。

 

 

「同志達よ、いまだ! 撃ちまくれ!! シルカの恐ろしさを見せてやれ!!!」

 

 

「民兵隊に負けるな! 漸くの出番よ!! ゲパルトの力を見せてやりなさい!!!」

 

 

「カラビニエリ、撃て! 撃て撃て! 撃ちまくりなさい!!」

 

山本大佐の民兵隊、エーディトの海兵隊が持ち込んだシルカ、ゲパルトの対空戦車、ローラント自走対空ミサイルシステム、カラビニエリを含めた車両の搭載機銃・機関砲、携帯SAM、個人携帯火器が更に追い討ちをかける。

地上砲火も40㎜機銃に関しては毘式、ボファースに混じりイギリスの四連装・八連装ポンポン砲が撃たれる。

弾道が粗く、故障が多いと言われポンポン砲だが妖精さんの力か、整備がいいのか、はたまた(チート)補正なのか問題無く発砲している。

上空で戦っていた戦闘機隊も漸く自分達が囮に引っ掛かっていたと気付いたが、攻撃隊から結構な距離があり、更に執拗な妨害で助けに行けず、逆に撃墜される。

そんな中でも、何機かは突破して向かって行くが、単機か、よくて2機のペアを維持しながらが限界で、部隊単位での離脱は困難であった。

 

 

 

天幕

 

 

「よしよし、今のところは大丈夫だな」

 

その高塚の呟きも周囲の銃砲撃音が搔き消す為、誰も聞こえない。

しかし、高塚はしっかりと上空を見据えている。

 

 

「……ソーラーをこーえて、光るー君を見つけたーい〜…」

 

つい、ふと頭に浮かんだ言葉を組んだ即興曲を音痴のくせに口ずさむ高塚。

 

 

「たーとえー、水底にいーても、かならーず、見付けだーすよ〜…君との〜、であ〜いは〜、ぼく〜にとっては〜、奇跡だよ〜(ホント、音痴で下手糞)」

 

密かに苦笑いを浮かべながらも歌う。

 

 

「……忘れないよー、君の生きた軌跡ー。だから〜、もう〜2度と、君に〜、悲劇は〜、見せないよ〜。何故なら〜、それが〜、僕の〜、勤め〜」

 

口ずさみながらも高塚は思った…即興曲とは言え、なんでこんな歌を歌うのか不思議だ…と。

 

 

「……君の軌跡にー、僕は涙すーる、でもねー、苦しくてーも、生きようー、それがー、未来の為〜…」

 

そう言い終わった時、高塚の目の前に機銃掃射が着弾し、土埃が上がる。

しかし、その機銃掃射をした機体は追撃してきた元お艦…鳳翔所属の96艦戦が撃墜した。

 

 

「だ、大丈夫でありますか!?」

 

機銃掃射に気付いたあきつ丸が駆け寄って高塚に訊いてきた。

 

 

「ん、え、あぁ、大丈夫、大丈夫」

 

さも当然の事の様に答える高塚。

そして、また口ずさむ。

 

 

「夜をこーえて、闇を照らーす、君を〜見付けたーい〜。たーとえ〜、そら〜、高〜く居ても〜、かならーず、見付けだーすよ。なぜなーら〜、君は〜闇夜を〜、サーチライト〜で〜照らす〜から〜」

 

 

何故か止まらない音痴な即興曲。

 

 

「君の〜横顔〜、見ていたーい。闇夜の〜君〜も、昼の君〜も、素敵な〜君〜だからさ〜。だから〜、新たな〜一歩〜踏み出そう〜、僕と共に〜」

 

今更ながら周りと全然合わない雰囲気違いの即興曲を歌う高塚。

 

 

「君との〜軌跡に〜、僕は〜笑みを浮かべて〜る、さあ〜、行こう〜、未来の為〜」

 

 

「あ、あの、高塚殿? それは誰か意中の相手に送る曲でありますか?」

 

 

「え、いんや、即興曲」

 

 

「そ、即興曲でありますか!?」

 

……そんな会話が空襲下で交わされていた。

 

 

 

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