鎮守府正面海域第3マップの攻略を開始する準備の筈なんですが……。
更に1週間後………
「じゃあ、今日の出撃割りを発表するよ」
集まった艦娘達を前に滝崎がホワイトボードに出撃割りを貼っていく。
「沿岸並びに昨日開放した近海の哨戒に鈴谷、熊野、島風、陸風の4人。夕張、朝顔、睦月、如月、初春、初霜は漁船団の護衛。扶桑、最上、龍驤、雪風、時雨はマルタ領海の偵察を行ってくれ。五月雨は秘書艦として、提督と大淀の手伝いだ。以上」
滝崎からの通知を受け、彼女達はそれぞれの分担に分かれていく。
漁船団護衛は漁船団との合流、哨戒部隊は何時侵入するか解らない事もあり、直ぐに出撃する。
対し、領海偵察隊は時間が決まっていない為、出撃は旗艦の扶桑に一任されていた。
「扶桑、ちょっといいか?」
「はい、何でしょうか、て…副官」
「いや、大した事ではないよ。扶桑、哨戒任務を除けば初の出撃だな」
「副官、安心して下さい。戦果に焦る気はありません」
「いや、わかってはいるんだよ…だが、いま鎮守府は地盤を固めている途中だ。当然だけど、無茶をして仲間を失いたくないんだよ」
「……やっぱり、滝崎副官はあの時からちっとも変わりませんね」
「日本艦は大好きなんで…それに、歴史を変えた者ですからね」
「うふふ…では、扶桑艦隊。出撃します」
「あぁ、お気を付けて……無事な帰還を祈る」
扶桑達が出撃する背中を見ながら小さく滝崎は呟いた。
マルタ領海
扶桑を旗艦とする艦隊は扶桑を先頭に単縦陣で航行していた。
←←進行方向
扶・最・時・龍・雪
「いよいよね…龍驤さん、偵察機をお願いします」
「了解! 偵察隊発艦!」
龍驤は偵察の97艦攻を召喚し、次々に発艦させる。
「これからどうするんだい、扶桑?」
「龍驤さんの97艦攻で偵察しつつ、私達も進みます」
最上の質問に扶桑は答える。
「航空偵察か…あの時とは大違いだ」
「あの時?」
「えっと…スリガオ沖海戦の事ではないかと…」
時雨の言葉に龍驤が反応し、雪風が控え目に答える。
(いま思えば、あの時点で龍驤さんは餓島沖で戦死、私と最上はスリガオ、時雨は終戦前、雪風は終戦後も生きていたわね)
時雨達の会話に扶桑が内心で呟く。
なぜ、扶桑がそんな事を知っているのか…それは扶桑が『もう1つの前世』で滝崎から聞いたからだ。
(でも、今は…いいえ、あの時は違う。滝崎副官は私達の運命を変えてくれた…それが蕀の道であっても)
扶桑は前世で滝崎の苦悩する姿を幾度か見ていた。
自らの行いが数多の運命を狂わす……その苦悩を乗り越えてでも、変えなければならない歴史があった事を……扶桑は知っていた。
(山城……貴女は滝崎副官に対する私の判断…どう思う?)
未だ見ぬ妹に問うかの様に扶桑は内心で呟きながら空を見た。
その後、数度の戦闘(主に駆逐艦)を行ったものの、扶桑・最上の火力、龍驤の航空戦力と言う圧倒的優位を使い、これを撃滅した。
そして、再び龍驤から偵察の97艦攻を出した。
すると………
「船舶…しかも、軍艦?」
「そうや、扶桑。どうする?」
偵察の97艦攻が捕捉したのは単独航行する1隻の軍艦。
「どうする、扶桑? 軍艦とは言え、単独航行は危険過ぎるよ?」
最上の言葉に顎に手を宛て暫く考える。
「提督と副官の指示を仰ぎます」
暫くして………マルタ島鎮守府 提督執務室
「扶桑達の偵察機が軍艦を発見した? 本当に?」
「あぁ、大淀、データを」
「はい。97艦攻からのデータなので少し画像が荒いですが」
「いや、これぐらいなら大丈夫さ」
大淀を介してタブレットに送られてきた映像データを見る滝崎。
現代艦艇の識別も得意な滝崎は直ぐに艦型を特定した。
「スペイン海軍のアルバロ・デ・バサン型イージス・フリゲートだ。しかし、スペイン海軍が単艦で作戦行動をとるなんて……五月雨、すまないが虫眼鏡を取ってくれないか」
「虫眼鏡ですか? えーと……はい、虫眼鏡です」
「ありがとう」
五月雨から虫眼鏡を受け取った滝崎はタブレットを虫眼鏡でジッと見る。
「どうかいたしましたか?」
滝崎の真剣な観察が気になった大淀が訊いた
「大淀、確かスペインに艦娘は居なかったな?」
「スペインに艦娘ですか? 私が記憶する限りありませんが…それが何か?」
「フリゲートの前、画像が荒いから解りにくいが、艦娘が写ってる。格好は解らないが、艦娘だろう」
「スペイン海軍のフリゲートに艦娘……滝崎、上に問い合わせろ。スペイン海軍主力艦艇が動いているんだ。何も知らん筈はないだろう」
「了解! あっちは任せた!」
「おう、任された!」
((なんか、2人が活き活きしてる……なんか、凄い事にりそうな気がする))
2人の様子に五月雨と大淀はこの後に大変な事がおきそうな予感がしていた。
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