転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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まあ、後半が気になるかも。


79 変わらぬ日常

2日後 ジュゼッペ・カルバルディ艦橋

 

 

 

「……なんで、速吸達があと1日早く来れなかったのかしら?」

 

 

「まあ、仕方ないさ。何時もの事だし…と言うか、その話題、何度目?」

 

 

「10回から先は数えてない」

 

 

「その認識はあったのね」

 

こんなたわいも無い会話を交わす松島宮と滝崎。

総力出撃の為、全体指揮の観点からイタリア艦隊に居候している2人はそんな会話を交わすぐらいしかなかった。

 

 

「マサロウ〜、機嫌は?」

 

 

「普段通り…この視線の痛さは別だが」

 

何時もの如く名前と共に抱き付いてくるレナータ。

松島宮公認なのでそちらは問題ないが、艦橋内(特に艦隊男性首脳陣)の敵意有り有りの視線は別だった。

 

 

「……あんた達、この場で宙を舞うか、鮫か深海棲艦の餌になるか、どっちがいいの?」

 

そう言うながら拳をポキポキ鳴らすアレッシア参謀長。

 

 

「深海棲艦で1番って誰だ?」

 

 

「ヲ級ちゃんだろう?」

 

 

「港湾棲姫だろう!」

 

 

「タ級!」

 

 

「ネ級だ!」

 

 

「リ級だっつーの!!」

 

 

「「「「「上等だ! 表出ろ!!」」」」」

 

「表出る前にここから海に放り込むわよ、あんた達!!」

 

何時もの如く副司令の一言から始まった論争は拳をポキポキさせていたアレッシア参謀長が近くの壁に拳をぶち当てて強制中断させる。

 

 

「………何時もこんなん?」

 

 

「何時もこんなんよ」

 

抱き付いているレナータに訊くと『当然』と言いたげにレナータが言った。

これで胃がどうのこうのならないアレッシア参謀長は鉄の女かな…なんて事を考えていた滝崎だった。

 

 

 

 

その頃 マルタ島鎮守府 工廠

 

 

 

「うーん……なに、これ?」

 

 

「知らん」

 

 

高塚の問いにエーディトが素っ気なく答える。

何故なら、2人の前には艦娘用艤装サイズの単装、連装、四連装の40㎜機関砲が並べられていたからだ。

 

 

「イヤ〜、副官ヤ憲兵殿ガクレタ廃材ガ上質ダッタノデツイツイ…」

 

 

「…あの、M16の成れの果てかよ!?」

 

工廠長妖精の返答にそう言って高塚は並べられている40㎜機関砲…ザッと見ても100はある…を見る。

 

 

「あの100挺がボファース40㎜機関砲100に化けたのか…」

 

 

「イエイエ、使ッタノハ十数挺程度デス。マダマダアリマスヨ」

 

 

「「…………」」

 

エーディトの言葉に答える形での工廠長妖精の発言に2人は思わず沈黙する。

そして………

 

 

「……残余艦に配るか?」

 

 

「それでも半数以上は残るぞ。一部は地上設置に回すか…まあ、主力組が帰ってきたら一瞬で無くなるだろうけどな。滝崎達が帰ってきたら、俺の宛名で増産要請回してみるか」

 

 

「お前もお前で甘いと言うか、何と言うか……まあ、理にも利にもなるからいいが」

 

 

「憲兵殿ハ話ガ通シ易ヤスクテ良イ方デス。モチロン、副官モデスガ」

 

 

「まあ、それくらいしか取り柄ないし」

 

苦笑いを浮かべながら高塚が言った。

 

 

 

その頃 鎮守府野外遊技施設近辺

 

 

元リゾートホテルであるマルタ島鎮守府は敷地内にテニスコート等の野外遊技施設も充実している。

よって、非番な艦娘と同じく非番なカラビニエリ隊員がテニスをしていても、有志で軽い護身術訓練をしていても何も問題はない。

また、加古の様に邪魔にならない所で寝ていてもいい……本日は非番で、サボりではないならだ。

 

 

「それにしても隊長。この…えーと、海軍基地は自由過ぎではないですか?」

 

 

「そう? これくらいなら普通よ。我がイタリアの男共が緩々過ぎるだけよ。アリッシア姉さんも苦労するわ」

 

護身術訓練の片付けをする部下(女性隊員)の問いに同じく片付けを手伝うイメルダが答える。

なお、前話でお分かりの方もおられるだろうが、アリッシアとイメルダは姉妹であり、アリッシアが姉、イメルダが妹である。

故に2人の性格は一緒、生真面目・堅物である……まあ、融通は随分効く。

 

 

「それにしても、艦娘に護身術なんて必要でしょうか?」

 

 

「それは愚問よ。それにこの事はあの憲兵少佐からの要請なのだし」

 

 

「ますますわかりません。艦娘は艤装で戦うんですよ?」

 

 

「それは海の上の話。艤装を装着していない外出時に襲われる可能性があるからよ。しかも、そんな事をしそうな連中が我が国にいるでしょう?」

 

 

「あぁ、なるほど、確かにいますね、マフィアが」

 

 

「そう言う事よ。まあ、他にも最近の難民の一件もあるし…憲兵少佐も気が抜けないのよ」

 

実際、艦娘と言う存在が『闇社会』にどれ程好奇な目です見られているか…派遣前の本部で聞いたイメルダからすれば『先手を打った対策』だと思っていた。

 

 

 

その頃 マルタ島鎮守府近辺

 

 

 

「………イイ匂イスル」

 

誰も居ない海の上……の筈だが、黒いレインコートを着た少女…いや、尻尾に飛行甲板、魚雷発射管、果ては先には主砲、その下に口がある……深海棲艦、正真正銘の戦艦レ級がいた。

しかも、このレ級、只のレ級ではない。仄かに黄色く発光している…つまり、このレ級は『レ級flagship』なのである。

 

 

「美味ソウナ匂イ…アソコカラ漂ッテル…美味ソウナ匂イガ…」

 

マルタ島鎮守府の方に視線を向けながらニヤリと笑い、レ級は呟くと静かに海へ潜っていった。

 

 

 

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