ある日の昼頃 食堂前
「まったく、あの時は正直に驚いたよ」
「いや〜、すまんすまん」
会話を交わしながら食堂に向かう滝崎と高塚。
午前中、滝崎は松島宮の部屋で松島宮と共に執務業務をしていたところ、窓からコンコンと音が聴こえたので2人共そちらを向くとリペリング降下中の高塚が手を振っており、2人共驚いた…なんて事があった。
なお、リペリング降下については山本大佐の民兵隊から訓練として正式に許可を出している為に問題は無い。
「つか、お前、リペリング降下なんて出来たんだな」
「俺が中隊配属された時の中隊長が空挺特科の中隊長やってた幹部空挺紀章持ちだったの。だから、一回体験で中隊全員でやったのさ。今日は久々にやったけど」
「….お前ってその手の事柄には事欠かないよな」
「リア充のお前が言うなよ」
そんな事を話しながら2人は食堂へと入る。
未だ喫食時間より少し早めな為か、食堂には誰もいない。
「1番乗りだな。鳳翔さん、今日のメニューは何ですか?」
高塚が配膳台に居た鳳翔に訊いた。
「今日はシンプルにカレーですよ」
「あっ、今日はカレー曜日か」
海自に合わせて金曜日をカレー曜日にしている為、滝崎も頷く。
「じゃあ、少し早いが食べるかね」
「では、今から用意しますね」
お皿を受け取り、米を盛り、ルーを掛けて席に座る2人。
「あっ、副官と憲兵さんですか?」
厨房から出て来た比叡が呟いた。
しかも、エプロンを着て。
「……鳳翔サン、マサカ、今日ノかれーッテ…」
「はい、比叡さん特製ですよ」
((鳳翔さん、なんで笑顔なんですか!?!?))
『比叡飯』の恐ろしさを知る2人は鳳翔さんの笑顔での解答に心中でツッコミを入れる。
しかし、食わない、と言う選択肢は色んな意味で取れない。
(と、とりあえず、俺らが犠牲になれば後の人間は助かる!)
(お、おう、事務業務は代わりもいるし、ベッドに寝ながらでも出来るからな!)
そんなヒソヒソ話をしながら覚悟を決める。
「「では、イタダキマス!」」
ほぼ勢い任せで口に放り込む2人。
「「…………………………………………………えっ!?」」
意識損失ぐらいは覚悟していたのだが何もおこらないどころか……美味いのである。
「叔父様の元乗艦が飯不味など放置するほど私は暢気ではないぞ」
そう言いながら松島宮が現れた。
「あー!! だから、お前と比叡の仲が良かったのか!?」
「あぁ、『お姉様の為にー!!』と言っていたから、結構熱心だったがな」
「提督! それは無しですー!」
松島宮の言葉に比叡が顔を真っ赤にさせて言った。
あくる日 昼頃 食堂前
「さすが憲兵! リペリング降下なんて様になってたぜ! 私もやりたいな〜」
「足腰と恐怖心の克服にはいい訓練ですね。私も体験してみたいです」
「午後からリペリング降下体験会をやるそうなんで参加されては? 大丈夫だよな、滝崎?」
「あぁ、体験会も許可取ってあるし、訓練と思えば別に構わない」
今日も今日とて民兵隊のリペリング降下訓練兼見学会でリペリング降下していた高塚、見学していた摩耶、神通、滝崎は食堂に向かっていた。
食堂に到着すると今日は食堂が賑やかである。
「あっ、そう言えばコックを外部から雇ったんだっけ?」
「あぁ、今日から勤務してくれてる。なんでか知らないがレナータの推薦だがな」
「まあ、お前を好きなレナータなら大丈夫だろう。しかも、イタリア人なら味は絶対的に信頼していいしな」
そんな事を喋りながら暫く順番を待っているとまわってきた。
「で、彼がそのコックさん。もちろん、身元は証明済み」
「……ちょっと待てい! コックだと!? どんな人物を推挙してんだよ!?」
コックの顔を見てツッコミを入れる高塚。
なにせ、顔に見覚えがあるどころか名札にも『Casey Ryback』と書かれているからだ。
「何を言ってるんだい。ただのコックさ」
「お、おう」
とうの本人からの言葉にさすがの高塚もこれ以上のツッコミを入れる気もおきなかった。
とりあえずは糧食従事者が増員された、と思い納得する事にした。
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