転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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今回も会話多めです。
後半部分は私の体験と思想です。


70 新たなる日常

数日後 マルタ島鎮守府

 

 

「……特別編成のカラビニエリね…なるほど……」

 

居並ぶ派遣されたカラビニエリの面々を見ながら呟いた。

何故なら……全員、女性だからだ。

 

 

(艦娘に配慮してるからかね……こう言った時の手の速さはイタリア人と言うべきかね)

 

そんな事を内心で呟く高塚。

そして、カラビニエリの隊長を見て思った事。

 

 

(あの隊長、誰かに似てるよな〜…誰だっけかな?)

 

そんな事を呟いていた。

 

 

 

その頃 松島宮執務室

 

 

「えっ、哨戒の認可がギリシャから降りたの!?」

 

松島宮から「ギリシャから漸く許可が降りた」と聞いて思わず聞き返す滝崎。

 

 

「あぁ……しかし、唐突だな。あの手柄争いしてた奴らが…」

 

 

「あぁ、それ、ウチ(イタリア)の仕業よ」

 

 

「「はぁ!?」」

 

部屋に入って来たレナータの一言に滝崎と松島宮が振り向く。

 

 

「この前の空襲の一件を本国に報告したら、なんでか大統領が切れちゃって、ギリシャに怒鳴り込んだらしいわ」

 

「あ、あぁ、なるほどな…」

 

『絶対『報告』で何か言っただろう』と思いながら松島宮が頷く。

 

 

「……なあ、なんで途中まで見て来た様な風に言ってるんだ? 特に大統領の話が」

 

 

「えっ、直接ローマの大統領府にF35で報告しに行ったから」

 

 

「「……………」」

 

何か言いたかったが『そんな事を平気でやる人間だったな』と思い、諦める2人だった。

 

 

 

 

その頃 工廠前

 

 

 

「……ねえ、エンジン『整備』しただけ?」

 

整備してもらったケッテンクラートの調子をみる為に鎮守府を一周してみたエーディトは工廠前に帰って来た瞬間、明石・大淀の顔を見ながら言った。

 

 

「え、えーと……」

 

 

「エンジンをちょっと弄り…」

 

 

「エンジンを『ちょっと弄りました』?」

 

目を細め、明らかに『地雷を踏んだ』と言わんばかりに睨むエーディト。

 

 

「その割には馬力上がってスピードも速くなってるし、騒音が明らかに減ってるのが『ちょっと弄った』結果なのか?」

 

鋭い指摘に冷や汗をダラダラと流す明石と夕張。

無論、『ちょっと弄った』では済まない程、弄っていたりする。

 

 

「……まあ、いい。どうせ、騒音は頭を悩ませていたしな」

 

そう言ってケッテンクラートを定位置に駐車しに行くエーディト。

その後ろでは緊張が解けた為かヘニャヘニャと崩れ落ちる明石と夕張がいる。

暫く行くと、自らの司令部小隊の隊員(何度も言うが全員女性である)が艦娘達と戯れている。

特にバイクに乗る偵察・伝令員は後ろに艦娘(皐月・深雪・涼風)を載せたり、島風と競争している。

他の隊員も何かしろの事柄で艦娘達と戯れていた。

 

 

「……私も甘くなったものだ。こんなの、レナータに見られたら、なんと言われるか…」

 

苦笑を浮かべながらエーディトは駐車場に向かっていた。

 

 

 

その日の夜 居酒屋鳳翔

 

 

「意外だったな」

 

 

「何がだ?」

 

「『親睦を深めたいから飲もう』と言う誘いに君がのった事が」

 

一献をしてから高塚が不思議そうにエーディトに言った。

 

 

「簡単な事だ。お前は……マサロウと一緒で変な事をして手籠めにしようなどと言う考えを持つには程遠い人間だから」

 

 

「あっ、なるほど」

 

一瞬、滝崎の名前で間があったのは本当に好きだから…と思いつつ、高塚は納得する。

 

 

「まあ、それを言ってしまえば私もお前と話したいと思っていたからな」

 

 

「と言いますと?」

 

 

「なんでお前はそこまで彼女達に執着出来るんだ? 滝崎の親戚で話を聞いてるから…と言うだけではなかろう?」

 

 

「あー、その話ね……まあ、細かい事言うと長くなるから、スッキリ纏めれば『憧れ・責任・贖罪』だな」

 

 

「憧れ、責任、贖罪…?」

 

 

「知っての通り、滝崎は同類で、現状に不満を持ってた。それを彼奴は転移で解消してしまった…彼女達と一緒にな。これが『憧れ』。で、再び滝崎は彼女達と共に戦い、俺は憲兵としてここにいる。俺は彼奴の仲間であるからこそ、守る任務がある。これが『責任』だ」

 

 

「なるほど……では、『贖罪』とは?」

 

 

「…ドイツは政治的経緯はどうあれ『ドイツ国防軍』を存続出来た。しかし、日本は後継者たる自衛隊を設立するのでさえも数多の紆余曲折があった。しかも、国民からは信と理解を得られず、政治家からは厄介者扱いされ、一部の人間はこれ幸いと声を大にして悪者に仕立てあげた。よって、自衛隊全体、特に陸自は歴史的・政治的な判断から帝国軍とは別組織と言い放った……故に先人達の犠牲と戦訓、軌跡は無視され、忘れ去られた……深海棲艦の襲来に慌てて対応した結果はご存知の通り。結局、我々は『無知』だった」

 

そう言い放つと高塚は御猪口の酒を一気に飲み干した。

 

 

「陸自に居た俺からして見れば当然の結果だった……だが、どうあれ、その一員に居たんだ、彼女達を守る事はそれの罪滅ぼしでもある…そう言う事だよ」

 

 

「だから、贖罪、か」

 

エーディトの呟きに高塚は静かに頷く。

 

 

「それに陸自時代は孤独だった。周りと意識違い過ぎて孤立気味だったしな……今はいいよ。異性が多いとは言え、話が解る子も多いし、何故だか自然と教える事も出来るし…皮肉な話さ」

 

そう言いながら高塚は酒を飲んだ。

 

 

 

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