転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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イタリア達の大活躍。


68 それは再び 後編

その頃 香取隊

 

 

 

「各艦回避行動! 各自、僚艦との間隔に注意しつつ、回避運動を!」

 

香取の指揮の下、舞風達は空襲下にありながらも対空射撃を敢行、回避運動中ながらも的確に弾幕を張り、敵を寄せ付けて……いや、敵機を撃墜破していた。

何故かと言うと、対空巡洋艦であるハーマイオニーが記憶の中にある対空戦闘を基に弾幕の張っていたからだ。

故に誰も被弾していなかった。

 

 

「カトリ! マルタ島からの増援は!?」

 

 

「まだ時間が掛かります!」

 

 

「早くしないと、控えてる本隊が来てチェック・メイトよ!」

 

それは香取にも解っていた。

なにせ、自分と舞風は『それ』で悲惨な最期を遂げていたからだ。

 

 

 

同じ頃 深海棲艦艦隊

 

旗艦のヲ級は前で戦う香取達を見ながら少しイラついていた。

香取達を発見した時、『またもや待ち伏せされた!?』と思ったが、編成を聞いて別任務中の敵艦隊との遭遇戦と確信した。

だが、その敵艦隊が編成の割に頑強に抵抗していたからこそイラついていた。

だが、それも『大事の前の小事』と思い切り捨て、隣にいるヲ級にも作戦開始を指示しようとした時……それは来た。

外縁の駆逐艦が突如、爆発した…それが合図であったかの様に誘導爆弾と対艦ミサイルが降り注いできた。

 

 

 

現地上空

 

 

 

「全機ウェポンフリー! アタック、アタック!!」

 

F35のコックピットで酸素マスクに内蔵された無線マイクに指示を出すと操縦桿を操り、降下爆撃態勢に入るレナータ。

率いる残りの15機もレナータに続いて個々に爆撃態勢に入る。

下ではレナータが率いていた『イタリア海軍統合打撃艦隊』の3隻の駆逐艦・フリゲートから発射された対艦ミサイルが目標に向かって飛来していく。

駆逐艦にミサイルが命中し、レナータ達に気付いた深海棲艦達が慌て対空砲火を開始する。

しかし、既にレナータを始め、F35部隊は誘導爆弾の拘束を解き、次々に爆弾が降り注いでいた。

更に対艦ミサイルもポップアップを始め、頭上から迫る。

 

 

『司令、砲撃開始します!」

 

 

「Ho.capito! 着弾観測は任せてね!」

 

 

『司令の手を煩わせません。全艦、砲撃開始!!」

 

あの堅物参謀長の指示の下、3隻の駆逐艦・フリゲートの搭載火砲が唸りをあげる。

更に『統合打撃艦隊』の象徴であるイタリア艦娘達も砲戦を開始した。

 

 

「アクィラは艦載機展開! ザラ、ポーラ、リベッチオは合図で近接水雷戦闘! リットリオ、ローマ、落ち着いて砲撃して。戦艦は居ないし、艦載機は空母の数の割に少ないわ。制空権は私達とアクィラが確保するわ!」

 

 

「「「「「「Ho.capito!!」」」」」」

 

初陣にしては彼女達の士気は非常に高い…その事に安堵するレナータ。

 

 

『おし、野郎共! 俺達も負けてられんぞ! イタリア海軍の名を示すは今だ! 乙女達に負けるな! イタリア海軍野郎の意地と根性を見せろ! でないと、マルタで艦娘は落とせんぞ!!』

 

 

『『『『『『『『『『『『Ho.capito!!』』』』』』』』』』』』

 

そして、副司令の『演説』に艦隊内の士気も上がる。

 

 

『那珂ちゃんのライブに行くぞ!!』

 

 

『鳳翔さんのバールで飲むぞ!!」

 

 

『足柄さんは渡さん!!』

 

『大和撫子な艦娘を落とすぞ!!」

 

 

『誰か、日本戦艦艦娘のプロマイド買わないか!?』

 

 

『金剛さん1枚注文!!』

 

『あんた達!! 軍用無線を私的使用してんじゃあないわよ!! 真面目にやりなさい!!!』

 

テンションの上がった野郎共の無線会話にキレる参謀長。

それを聴きながら微笑むレナータは慌て上がってくる深海棲艦の艦載機を撃墜すべく操縦桿を動かした。

 

 

 

加賀・最上隊

 

 

 

『加賀さん、敵艦隊、別部隊と交戦中だよ!』

 

先行している最上からの通信に加賀は直ぐに反応した。

 

 

「どの艦隊かわかる?」

 

 

「えーと……あっ、イタリアじゃん!?』

 

 

「緑を含んだ三色旗ですわ。艦娘と艦載機が出てます』

 

鈴谷と熊野からの報告に加賀は納得する様に頷き、指示を出す。

 

 

「最上さん達は最初の打ち合わせ通りに香取隊を収容して。後は私達とイタリア艦隊で済ますわ」

 

 

『了解』

 

予定通りに行く事を伝えて通信を終える加賀。そこに会話を聞いていた神鷹が口を開いた。

 

 

「レナータさん、来たみたいですね」

 

 

「えぇ、しかも、タイミングが良いぐらいにね。神鷹、鍾馗を出して。行くわよ」

 

 

 

深海棲艦艦隊

 

 

艦載機を飛ばしながら旗艦のヲ級は舌打ちをする。

何故なら、状況が『あの時』と同じになりつつあるからだ。

無論、今回は偶然の塊があちこちから引き寄せられ、それが引っ付いた結果だが…状況が好転する要素は皆無だ。

 

 

「…マダ遠イガ出スゾ!」

 

 

「………ワカッタ」

 

僚艦のヲ級の言葉に一瞬言い澱み、裁可を下す。

一瞬、この流れにデジャブを感じたが、どちらにしろ、ここはこうする他なかったからだ。

しかし、そのデジャブは実現した。僚艦のヲ級が帽子の艦載機を発艦させようとした時、1機のF35が降下しながら帽子の艦載機発艦口に向けて25㎜機関砲を乱射、更に後ろにいたRe.2001 OR 2機が爆弾を投下した。

これにはヲ級も対処出来ず被弾した。

 

 

「クソ! アノ時ト一緒デハナイカ!!」

 

旗艦のヲ級は思わず叫んだ……と同時にハッと思い出した、そう、デジャブの正体を…。

 

 

「アァ、ソウカ、思イ出しタ、アの時、わタし達を待ち構えテいたのは…」

 

半分自棄になりながら、空を眺めるヲ級。

そんな中、護衛に就いていた最新型のツ級が戦列を離れ、最上・加賀隊に向かい始めた。

 

 

「『殿ヲ務メルカラ撤退セヨ』……もう、遅い」

 

このツ級も気付いたのだろう…いや、もしかしたら、思い出したのかもしれない……だが、ヲ級は諦めていた。

ツ級と最上達が交戦を始め、残りの駆逐艦・巡洋艦がイタリア艦隊と交戦を継続しており、ヲ級達を守る者はいない。

そして、今まで蚊帳の外状態だったあの軽巡洋艦主体の艦隊から駆逐艦4隻が至近距離まで接近していた。

更に、最上達の横を擦り抜ける様に加賀隊が砲撃を開始していた。

 

 

「……あぁ、またか…また、私は…彼奴に負けたのか」

 

何故だか晴れ晴れとした表情でヲ級は呟いた。

 

 

 

加賀隊

 

 

 

「……終わったわね」

 

 

「えぇ、そうね」

 

「襲われておいて、何もしないで帰れない」、そう言って長波達が雷撃を仕掛け、加賀達は砲撃を開始した。

それが最後だった。どれもが止めになった…2隻のヲ級は沈み、立ち向かって来たツ級も最期を迎え、残りの深海棲艦もイタリア艦隊によって掃討されつつある。

この光景に加賀が呟き、扶桑が答える。

 

 

「夕張、提督達に連絡を……敵艦隊は消えたわ」

 

 

「了解! 今すぐ送るわ」

 

 

 

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