転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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題名適当過ぎて草


65 それは軌跡が故に

「……何がどうなっているんだ?」

 

イ級が身を挺して電を守っている事に長門は思わず高塚に訊いた。

 

 

「それは後回し。長門、全門斉射後に次弾装填3秒から再び全門斉射は可能か?」

 

 

「3斉射目を気にしないなら出来るが…」

 

 

「断言する。彼奴ら相手に3回も撃たない」

 

自信満々な言葉に長門は頷き、射撃態勢をとる。

 

 

「初弾、包囲陣左翼の駆逐艦4。仰角40、曲射弾道射撃……てぇ!!」

 

高塚の指示に全門斉射、素早く次弾を3秒で装填する。

 

 

「次、同右翼の重巡2、軽巡2。砲身水平、直射弾道。カウント、3、2、1、発射!!」

 

カウントに従い轟音と共に41㎝砲が再び吼える。

それに気付いた重巡リ級は散開を命じようとした……しかし、リ級が最期に見たのは巡洋艦だけでは無く、駆逐艦も直撃を受ける光景だった。

 

 

「……本当に2斉射で終わった」

 

 

「大口径火砲による時間差発射・同時弾着射撃をやるとは思わなかったが…まあ、それは後でいいや。電! 大丈夫か!?」

 

 

「えっ、憲兵さん! なんでここにいるのです!?」

 

 

「それは後で、それより、怪我は無いか? 直ぐに明石のところに行く必要があるしな」

 

 

「電は大丈夫です! それより…」

 

そう言いながら電が盾になっていたイ級に視線を向ける。

だが……高塚はそれを無視した。

 

 

「電、雷はどうした?」

 

 

「あっ! 雷はあの崖の向こう側なのです!!」

 

 

「わかった。長門、済まんがここを頼む!」

 

そう言って高塚は崖側に走っていく。

そして、それを呆気にとられながら見ている電に肩に長門は手を置いた。

 

 

(やはり、少佐も気付いていたのか…もう、イ級がコト切れてる事に…)

 

そう心中で呟く長門だった。

 

 

 

 

その頃……マルタ島鎮守府 工廠

 

 

「う〜、ようやく終わった……」

 

とりあえず、艤装の点検を終わらした明石が我が身を引き摺りながらこうしに戻ってきた。

 

 

「あー、でも、この後はドックの準備が……ん?」

 

ふと治療カプセルに目を向けた時、明石は目を見開いた。

いつの間にか治療カプセルの中に収容されていたクレマンソーが居なかったからだ。

 

 

 

 

(にしても解らん。なんでこんなに矛盾を感じるんだ?)

 

走りながら高塚は今回の襲撃の矛盾について考えていた。

 

 

(確かに筋は通る。だが、無理矢理過ぎる状況とピッタリ填り過ぎる筋はおかしい。この2つが逆に矛盾を際立たせてる)

 

ピッタリ過ぎて気持ち悪く思える高塚。

しかし、崖を迂回し、崖向こうの海岸に出た瞬間、その思考を一時中断する。

そして、見たものは……

 

 

(リ級が雷を守ってる…しかも、何か言い争っているな)

 

雷を守るリ級と向こうの指揮官らしいリ級と言い争っている。

しかも、決裂したらしい。

 

 

(やれやれ、どうやら、俺は深海棲艦との遭遇率は高いらしい)

 

苦笑を浮かべつつ、高塚は素早く64式小銃(改)の切り替えレバーを『ア』から『レ』へと変え、更に銃剣を着剣する。

 

 

「……一撃必中…ふぅ…すぅ…ふぅ…」

 

息を整え、ゆっくりと引き金を引く……狙ったリ級の頭部に命中し、

倒れる。

 

 

「即断即決! うぉぉぉぉ!!!」

 

雄叫びをあげ、雷とリ級の側を抜けて一直線に深海棲艦の包囲陣へと突っ込んでいく。

最初は撃とうとしていた深海棲艦達も懐に飛び込まれた為に同士討ちを避ける為に撃てない。

そんな中でも狙われた2隻目のリ級が主砲を撃とうとしたが…高塚が消えた。

 

 

「ここは陸地なんだぜ!」

 

陸自の格闘初歩の前回り受け身で一時的に視界から消え、懐へと入り込んだ高塚は弾倉がほぼ空になるまで撃ちまくる。

 

 

「2! 次!」

 

ホルスターから9㎜拳銃を抜くと軽巡に全弾撃ち込む。

そして、反対側の軽巡には胸部に銃剣刺突+発砲。

 

 

「あと駆逐艦4体」

 

9㎜拳銃をホルスターに格納し、64式改に新しい弾倉を装着しながら高塚は呟く。

その時………

 

 

「伏せて!!」

 

 

「!?」

 

何処からか聞こえてきた声に反応し、唖然とする雷と庇っていたリ級を押し倒して伏せさせる。

次の瞬間、残りの駆逐艦イ級4体が砲撃を受けて破壊された。

 

 

「大口径火砲の砲撃か」

 

周囲を見渡しながら高塚が呟く。

その瞬間、顔半分を潰された指揮官のリ級が立ち上がる。

しかし、次の瞬間、件のリ級が顔面に主砲をぶち当てて撃沈した。

 

 

「危な…って、おい!? 大丈夫か!?」

 

倒れるリ級を受け止めた。

 

 

 

数時間後 滝崎執務室

 

 

「今日は済まなかったな」

 

 

「いや、役目を果たしただけさ」

 

帰って来た滝崎はそう言って高塚に礼を述べる。

対して、高塚は「当然だよ」と言いたげに答えた。

 

 

 

「……で、イ級とリ級だが…」

 

 

「あの後、浄化してさ……名前を聞いたら庇った理由が察せれるぞ。エクセター、エンカウンターだよ」

 

 

「…………なるほどな。確かにそれは庇いもするな。クレマンソーも起きたんだっけ?」

 

 

「駆逐艦を4隻撃沈してくれたよ。いまはエクセター達と一緒に第六駆逐隊や長門達と一緒に歓迎会中さ」

 

 

「あー、後で松島宮を止めに行かないと……今回の襲撃、どう思う?」

 

 

「状況と行動と筋が通り過ぎてて気持ち悪くて不気味だ。多分、あれは陽動だな。しかも、俺達の注意を鎮守府とその近辺に向ける為のな」

 

 

「やはりか………まさか、な」

 

 

「……ドーリットル東京空襲の再来か」

 

 

「……有り得ると思うか?」

 

 

「忘れたのか、滝崎。深海棲艦は基本的に『第二次大戦』の戦術・戦法を使うんだぜ」

 

 

「…ギリシャに文句言いたい」

 

 

「まったくだ」

 

 

 

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