転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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題名が無茶苦茶な気がする…。


61 日常と言う名の確実

ある日の朝

 

 

「う〜〜〜〜ん………そっか、ミニ宴会してたんだった」

 

朝日が窓から入るのにあわせて目を醒ました滝崎。

周りを見ると床や壁に酒に酔って『屍』と化した方々が転がっている。

主に酒飲みで有名な隼鷹や足柄に加え、松島宮、カルメン、シェロン、那智、シュペー、ヴァリアント、加賀、陸奥、霧島、響がいる。

なお、響の周りにウォッカの瓶が何故か転がっているが気にしないでもらいたい。

 

 

「……あー、 毛布掛けられてるって事は…」

 

 

「あっ、おはようございます、滝崎副官」

 

滝崎が起きたのに気付いた神鷹が何時もの様に気軽な挨拶をする。

 

 

「おはよう、神鷹。なんか、色々と悪いな」

 

 

「大丈夫です。これが私の仕事ですから。それよりも…」

 

そう言って神鷹は酒瓶を抱いて眠る隼鷹の側に近付き……

 

 

「隼鷹!! 仕事を放り出して何時まで寝てるの!! 早く起きなさい!!!」

 

 

「うわっ!? し、神鷹さん!!」

 

 

「ほら、仕事に掛かる! 早くしなさい!!」

 

 

「ヒャァァァ! 了解です!!」

 

……ビビった隼鷹が酒瓶を投げ捨てて出て行く光景を見た滝崎の呟き。

 

 

「…….やっぱり、先輩には敵わないよな」

 

 

 

その頃……工廠

 

 

「……えーと、なに、これ?」

 

朝早く(と言っても6時頃)に工廠へ呼ばれて来た高塚は目の前にある物を見て思わず近くにいる工廠長妖精に訊いた。

 

 

「何ヲ言ッテイマスカ、高塚少佐。コイツハ九四式山砲デスヨ!」

 

高塚の前には日本帝國陸軍歩兵支援火力の主力と言っていい94式山砲が置かれていた。

しかも、車輪は駄馬輸送の木製では無く、車輌輸送も出来るゴムタイヤである。

 

 

「いや、あの…なんで94式山砲がここにあるの? まさか、これも製造品?」

 

 

「ハイ! ナオ、牽引ハ高機動車デ出来マス!」

 

 

「完璧に現代仕様じゃん! でも、高機動車は…ま、まさか!?」

 

 

「あぁ、あの奥で製造してるの、高機動車なんですね。どうりで何処かで見た気がしましたよ」

 

工廠長妖精の物言いに何か気付いた高塚の反応に答えるかの様に明石がポンッと手を叩いた。

 

 

「マジかよ!! 大丈夫か、これ!?」

 

とりあえず、そこが心配になった高塚だった。

 

 

 

食堂

 

 

 

「……ウチの工廠、いつの間に何でも開発出来る様になったんだ?」

 

 

「知るかよ。もう、明石と夕張並みの開発意欲はあるぞ、あの工廠の妖精達はな」

 

朝食を摂る2人は工廠の一件を話していた。

 

 

「まあ、儀礼用装備って事なら、なんとか…」

 

 

「今はそれでいいかもしれんが、自動小銃、火砲、車輌と来たら次は……」

 

 

「やめてくれ、MBTなんて簡単には出来ないぞ?」

 

 

「だが、97チハや現代の軽戦車程度なら出来るぞ」

 

 

「……頭痛くなってきた」

 

 

「まあ、大丈夫なんじゃないか? 今のところ、問題はおきてないし」

 

 

「………まあ、そうだな」

 

 

「青葉、聞いちゃいました!!」

 

そんな2人に嬉々とした表情で青葉が入ってきた。

 

 

「「取材は拒否な」」

 

 

「取材なんて言ってませんよ!」

 

そう言って滝崎の隣に座る青葉。

 

 

「それより、副官。何かネタを下さいよ〜」

 

 

「結局、取材になってるよな」

 

 

「そう言えば、哨戒の件はどうなった?」

 

 

「あぁ、あれ? 実は計画は出て、ウチの方の予定は提出してるんだけど、上で揉めてる。正確にはギリシャ軍上層部内が揉めてる」

 

 

「はあ? なんだよ、それ?」

 

 

「なんでも、海軍だけでなくて、陸空軍も噛ませろと騒いで揉めてるんだそうだ」

 

 

「…………何がしたいんだ、ギリシャ軍は?」

 

 

「さあね。まあ、クレタ島奪還に加わりたいんだから、その前哨戦のこの哨戒に介入したいんだろ」

 

 

「海上戦力はマルタ島鎮守府が出すからって、呑気な奴らだな。そんな意欲があるなら自分達で奪還しろよ。まあ、旧陸自も人の事言えないけどな」

 

 

「意欲はあるが、戦力がない。消耗しなかった戦力と予算を守りたいが手柄は欲しい……いやはや、なんとも言えんね」

 

 

「今から拒否出来ないのか? 『そんなにグダッてるだったら、参加しません』って」

 

 

「国際信用に関わるぞ。まあ、こんだけグダッてるのを見たらEU諸国も呆れてるだろうけど」

 

 

「呆れついでに何か言ってくれないかね」

 

お互いに溜め息を吐き、青葉は嬉しそうにメモしている。

 

 

「いやー、やっぱり、お二人の近くにいると面白いですね〜。下手なコメンテーターより詳しくて、愚痴やら何やらが聞けますし」

 

 

「「それ、褒め言葉になってないよな?」」

 

 

「褒め言葉ですよ。ではでは〜」

 

そう言って速足で食堂から出て行った。

 

 

「………なんだったんだ?」

 

 

「さあな」

 

そう言って互いに朝食を再開した。

 

 

 

その頃…………

 

 

 

「明日、マルタに到着か」

 

宿舎の窓から外に並ぶ車輌群を見ながらエーディトは呟いた。

 

 

「アドミラル、嬉しそうだな」

 

コーヒーを淹れたグラーフ・ツェッペリンがエーディトの表情を見て訊いた。

 

 

「当然だ。あの世界で曲がりなりにもグラーフが生まれた事と関係しているからな」

 

 

「そして、アドミラルが愛した唯一の人だな」

 

 

「それは語弊がある。家族以外の異性で愛したのは、だ」

 

そう言ってコーヒーを一口飲むエーディト。

 

 

「だか、顔が嬉しそうだ」

 

 

「まあ、旧友に会う訳だからな」

 

そう言いながら視線を窓からの外に向けるエーディトだった。

 

 

 

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