本日は三話更新致します。
暫くして……鎮守府内 甘味処間宮
「間宮さ〜い、いらっしゃいますか?」
「はいは〜い、あら、滝崎副官…おチビちゃんを連れてどうしました?」
間宮さんが営業する甘味処『間宮』……元は酒場であろう……に雪風達を連れて来た滝崎。
なお、「おチビちゃん」は雪風と島風の事だろう。
「間宮さん、何かありますか? 彼女達を待たせてしまったので、そのお詫びです」
「あぁ、なるほど…でしたら、間宮アイスのパフェなんてどうですか?」
「そうします…では、パフェの人…」
「「「はい!」」」
「妾は抹茶パフェにするかの」
「と言う事でお願いします」
半分投げ槍だが「奢る」と言った以上、こちらに指定する権限は無いので流れに任すしかない。
「はいはい…滝崎副官、副官は何になさいますか?」
「自分ですか? 自分は奢る役目なので…」
「あらあら、甘味処『間宮』に来店して、何も頂かずに帰るなんて、もったいないですよ?」
「……わかりました、では、間宮最中とお茶で…あっ、自分は最後でいいですよ」
押された上にこれ以上断ると間宮に対する名誉毀損になりそうなので大人しく注文した。
「やっぱり、間宮さんの最中は美味しいですね」
「あら、おだてても何も出ませんよ」
「真実を言ったまでです」
注文した最中を食べながら間宮と話す滝崎。
なお。雪風、島風、初春、初霜は隣でパフェを掻き込んでいる。
「ところで副官。戦況の方は?」
「……何とも言えませんね。この地中海は先の反攻作戦で深海棲艦をほぼ撃滅したため、この近辺に居るのは偵察かハグレですが…一部海域には集団で居座っています。狭い内海とは言え、厄介な事は日本と変わりませんね」
しかも、地中海航路が使えない為に地中海周辺国の経済・食糧・治安の事を考えれば更に厄介だったりする。
「そこまで情勢は悪いのですか」
「お先真っ暗なのは何処も一緒です。問題はここが地中海である事…です。太平洋なら日本が主導なのでどうこういけますが…地中海となれば中堅国家が多いのでそっちも考慮しないといけませんからね。まあ、今は鎮守府の事に集中出来るだけマシです」
多分、戦力増強と安定海域が拡がれば各国との調整やら何やらの面倒な話が付属してくるにきまってる。
「まあ、今は基盤造りですね。何事も基盤を作らない事には…」
何にもならない…と言いかけた時、廊下がドカドカと騒がしくなった。
「どうかしたかな? あっ、朝顔さん、どうしました?」
通過しようとした朝顔を呼び止める滝崎。
すると、朝顔も急停止し、滝崎の方に足を向ける。
「よかった〜、副長が近くに居てくれて…大変だよ、副長!」
「それは騒ぎ様で解る。それで、何が大変なんだ?」
「副長は憶えてないかな!? ほら、南方…ニューカレドニアで鹵獲した駆逐艦があったでしょう!」
「ん…あぁ、駆逐艦か…居たな、うむ、居た居た。確か艦名はフレッチャーで、ウチに編入されて陸風に……えっ??」
思い出したと同時に視線を朝顔の向こうにある廊下の入り口に向けた。
入り口には……金髪・ブルーアイにアメリカ海軍の水兵服を着た少女が居た。
「朝顔、後ろの彼女は…」
「おぉ、ほら、護衛隊司令! 挨拶、挨拶!」
「え、えっと…元アメリカ海軍フレッチャー型駆逐艦フレッチャー…日本海軍では陸風です」
「マルタ島鎮守府副官の滝崎だ。陸風…フレッチャー、君の着任を歓迎する。提督との挨拶は…」
「おぅ! 陸風ちゃん! 私だよ! 島風だよ!!」
横槍を入れたのは先程までパフェを掻き込んでいた島風だった。
「……島風…あっ、実験部隊の島風ちゃん!?」
「そうだよ! うわ〜、久し振り!」
島風と陸風の間で思い出話の華が咲いた。
「そうか、戦後に島風と陸風は実験艦として実験部隊に配属されていたっけ」
「そうなのか?」
「えぇ、そう聞きました」
「副官! 陸風ちゃんにもパフェ奢って!」
朝顔と話していた滝崎に島風が言った。
「やれやれ…仕方無いか…間宮さん、パフェの追加をお願いします」
……その後、執務を終えた松島宮と大淀、更に朝顔や最上達、遠征から帰って来た夕張達にも奢る事になったのは別の話である。
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