転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

56 / 131
最近思うこと。
高塚の参入でなんかとんでもない方に行ってる気がする。


56 情勢険しく

10日後 マルタ島鎮守府 松島宮執務室

 

 

 

「……楽しそうだな」

 

 

「仕事終わらせてからね」

 

執務椅子に座り、窓から外の様子を見ていた松島宮の呟きに容赦無く切って捨てる滝崎。

 

 

「高塚少佐があの…えっと、短機関銃を持ち出してから、何故かこうなってしまいましたよね?」

 

 

「大淀、短機関銃では無くて、自動小銃、あるいはアサルトライフルだ。まあ、娯楽もあまり無いし、あいつの思い付きだからな」

 

外の様子……下で高塚とあきつ丸、更に木曾を中心に半円形で集まる集団を見ながら呟く。

 

 

「まあ、訓練にもなってるし、別にいいんで無いの」

 

 

「ですが、銃器を振り回すと言うのも…」

 

 

「艤装を放り回しているのですから、今更の様な話ですがね…まあ、これが出てしまいましたからね」

 

大淀の言葉に滝崎が答え、視線を執務机に移す。

机には『ギリシャ政府要請事項承認書』と『事前偵察・哨戒任務書』が置かれていた。し

 

 

 

その頃 高塚達周辺

 

 

「ふむ、やっぱり、あきつ丸は扱いが上手いな」

 

 

「ありがとうであります、しょ…いえ、高塚殿」

 

伏せ撃ち姿勢で海上に浮かぶ的を撃っていたあきつ丸。

なお、あきつ丸が撃っていたのは『言うこと機関銃』で有名なら62式凡庸機関銃…のマルタ島鎮守府製(つまり改良・改善型)である。

 

 

「それで、少佐。なんであの的は動いているんだ?」

 

 

「潜水艦の子に頼んで引いてもらってる。不動目標なんぞに点数分当てられたらオッケー、なんて古い基準なんぞ知るか」

 

 

「……少佐は所属元をよくデスルな」

 

 

「事実に基づいた文句と愚痴だ。間違ってない」

 

高塚山の答えに苦笑いを浮かべる木曾。

いま、行われているのは高塚の持つ64、62による射撃訓練である。

本来なら暇潰しも兼ねて、64式小銃の調整の為に行う予定だった。

しかし、あきつ丸が高塚の指揮下に入り、補助用として62式機関銃の改良・改善型の開発、製作を依頼を依頼したところ、明石・夕張も加わったので案外スムーズに開発・制作は終了した。

その後、試し射ちをしていたところを木曾に見られ……別に問題なんて何も無いのだが……てから、木曾も加わる様になった。

意外にも木曾は武器好きであった事から高塚と打ち解けると同時に銃器の扱いも上達した。

これに他の艦娘が見物し始め、中には実際に撃つ者も現れた。

故に最近は銃の手入れに余念がない。

 

 

「よし、じゃあ、あきつ丸。次はもう少し速くなるぞ。指切りを忘れるなよ」

 

 

「了解であります、高塚殿」

 

 

 

その日の夜 居酒屋鳳翔

 

 

「先ずは一献、お疲れ様」

 

 

「着任歓迎の席って訳か。鳳翔さんの料理が肴なら、この世の中で最上級の贅沢品だな」

 

 

「まあまあ、煽てても何も出ませんよ?」

 

 

「事実を述べたのみですから」

 

滝崎、高塚は居酒屋鳳翔で飲っていた。

 

 

「で、わざわざこんな事をしたのは、命令が出たのか?」

 

 

「あぁ、先ずは事前偵察・哨戒だとさ」

 

 

「情けない話だ。協力してくれ、と言っといて、自国の領海の把握も出来ないとはな」

 

 

「海軍戦力は壊滅状態だからな…なんとも言えん」

 

 

「空軍に頭下げて、海域偵察ぐらいは出来るだろう。それくらいしてから言ってこいよ、まったく」

 

ふざけるな、と表情で言いつつ、高塚は鳳翔さんの出したてんぷらに手をつける。

 

 

「それだけならまだいいよ。ヨーロッパの難民・移民問題が微妙な影響を出してきた」

 

 

「ほう、なんだ、それは?」

 

 

「マルタに流入し始めた」

 

 

「………………問題だな」

 

 

「だろう? まさか、深海棲艦出現以前の問題がここで噴出するとはな」

 

 

「仕方ない、もともと、このヨーロッパでの問題だった訳だからな」

 

 

高塚がそう言ってから互いに溜息を吐く。

なにせ、事が複雑な国際問題な為、自分達だけでは解決出来る事ではないからだ。

 

 

「治安維持の問題が出てくるな。くそ、艦娘の外出を具申しようとしてたのにな」

 

 

「そうか……まったく、日本や東南アジアでは心配なかった問題だから、余計に対応に困るよ」

 

 

「あぁ…どうやら、この鎮守府は駐屯地流にやるしかないな」

 

 

「と、言うと?」

 

 

「手空きが出来たら、警衛勤務」

 

 

「…………なるほどな」

 

 

「警衛勤務者は代休1日と間宮券」

 

 

「希望者殺到だな、それ。でも、やる価値はあるな…警戒能力向上も図れるし。検討してみる」

 

 

「外出の事も検討してくれ…今はいいが、艦娘が増えれば封鎖空間化して窒息しちまうよ」

 

 

「ふむ、そうだな。ストレス管理も戦力や作戦能力に左右されるからな。明日、松島宮に具申してみるよ」

 

 

「ありがとう。やっぱり、話がわかる友を持つのはいいもんだ」

 

 

「おいおい、陸の愚痴については今日は無しだ」

 

 

「おっと、そうだな、せっかくの料理が不味くなるしな…何かいいニュースはないか?」

 

 

「時期不明だが、近々、本土から増援が来るそうだ」

 

 

「おっ、そりゃあ、いいや。で、内訳は?」

 

 

「練習巡洋艦と駆逐艦が4隻」

 

 

「…………練習巡洋艦は置いといて、駆逐艦4隻って建造した方が早くないか?」

 

 

「駆逐艦は4隻とも新実装の陽炎型と夕雲型なんだと」

 

 

「ふーん……まさか、インド洋まわりか?」

 

 

「いや、空路か陸路だそうだ」

 

 

「さすがにインド洋とスエズを抜けろ、なんて無茶は言わないよな」

 

 

 

「やれたら凄いよ…無理だがな」

 

 

「だな」

 

 

 

次号へ

 

 




ご意見ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。