転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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試してみました。



55 試し事

1週間後 マルタ島鎮守府 高塚居室

 

 

高塚が憲兵としてやって来て1週間が経過した。

余り仕事の無い高塚は工廠や滝崎の部屋に足を向け、自らの体験談や知識を語っていた。

その為か、意外に早く顔が知られる様になっていた。

ただ、その理由はもう1つあった。それは……

 

 

「「「「「「「可愛い〜!」」」」」」

 

暁四姉妹の第六駆逐隊と島風、陸風が狸の子供を囲っていた。

 

 

「あー……どうにかならんか?」

 

 

「見物制限でもかけないと止まらんだろうな。まあ、お前が持ち込んだ訳だし」

 

この狸の子供、高塚が少し前に原隊の演習を見学しに行った時に怪我をしていて保護したもので、完治したら自然に戻すつもりがその前に異動の通知が来てしまい、仕方なく連れて連れてきたのだった。

なお、名前は駆逐艦勢(主に第六駆逐隊)が決めた『タヌ(坊)』で呼ばれている。

 

 

「まあ、可愛がってもらえるのはいいんだが…」

 

 

「間違っても狸鍋の材料にされない様に気を付けろよ。お前も知ってるだろうが、食いしん坊で有名な艦娘が複数存在しているからな」

 

 

「そうなったらマジで暴れるぞ。手が付けられん程にな」

 

 

「だろうな……まあ、気を付けろよ」

 

 

「あぁ…で、朝から何の用事だ?」

 

 

「あぁ、そうだった。松島宮の思い付きだが、建造をやってみないか?」

 

 

「……マジか」

 

 

 

暫くして 工廠

 

滝崎と共に工廠にやって来た高塚は建造カプセルの前に立った。

 

 

「で、建造するのはいいが……細分は?」

 

 

「大型2と通常2だな。あと、無駄使いすんなよ」

 

 

「わかってるよ…さてと…」

 

そう言って建造カプセル一基づつに数値を入力していく高塚。

それを横目に滝崎はお茶を淹れる。

 

 

「あれ、今日は憲兵さんが建造ですか?」

 

 

「あぁ、松島宮の思い付き」

 

 

「あぁ〜、なるほど…やっぱり、建造者による違いが出てくるんですかね?」

 

 

「さあ…その確認も含めてだろう、今回は」

 

ただ、滝崎もそれに興味が無いわけではない。

実際、カルメンやシェロンが建造すれば何が出てくるだろうか、と考えた事がある。

しかし……今までの事例から言って、レシピに無い物が出る場合、爆発する可能性があるので進言しなかった。

しかし、今回は親友の高塚である為、その心肺は無い……筈だ。

 

 

「まあ、やってみないと解らんよ」

 

 

「アッ、副官ヤ」

 

 

「副官、副官、アノ憲兵殿ハオリマスカ?」

 

工廠長をはじめとした工廠妖精が滝崎を見付けて集まってきた。

 

 

「あぁ、高塚ならそこにいるが?」

 

 

「よし、終わり〜。おっ、工廠長達か。今日は集まりが早いな」

 

数値を入力し終えた高塚が工廠長達に気付いて声を掛ける。

 

 

「当タリ前ヤー」

 

 

「今日ハ憲兵殿ニプレゼントガアルンヤ〜」

 

 

「プレゼント??」

 

 

「ソヤソヤ、憲兵殿ヤ副官ニ借リタ資料ヲ元ニアレンジシタ一品物ヤデ〜」

 

そう言って工廠長の案内で置かれていたのは……。

 

 

「64式小銃じゃないか!? えっ、これがプレゼント!?」

 

 

「ソヤソヤ、マア、開発ノ時ニ余ッタリシタ材料デ造ッタリサイクル物ヤケドナ」

 

 

「いやいや、拳銃よりマシだから! うんうん」

 

そう言って64式小銃を構える。

 

 

「で、どうだ? 確か教育隊前期は64使ってた、って聞いたが?」

 

 

「持ち具合や構え具合は64そのまま、しかし、感触として若干重量が軽く思える。それに負紐と二脚、安全装置は89と同じ様な仕様に直されてる。銃床も木製からプラスチック製に変わってる。銃剣留めからから後ろの部品は二脚を除いて固定式に設計変更。弾倉は20発か…銃剣まで付けてくれたのか、いや、助かるよ」

 

御満悦の様子であった。

 

 

 

 

しばらくして

 

 

 

「で、大型2、通常2でやった結果は…」

 

 

「陸軍のあきつ丸! 火遊び禁止の陸奥! 大丈夫の榛名! 酒飲み隼鷹! うん、オッケー!!」

 

……高塚が建造した艦娘が有力戦力である為か、ハイテンションな松島宮。

 

 

「………頭痛い」

 

 

「大丈夫か? まあ、あのハイテンションだと、そうなるかもな」

 

 

「あぁ…あきつ丸、お前に預けるわ。陸自と陸軍だが、陸自を超越しているお前なら大丈夫だろう」

 

 

「なんだよ、それ?」

 

 

「陸軍の艦娘がいないからな。お前だと安心ってこと」

 

そう言って高塚の肩をポン、と叩くと滝は松島宮を止める為に渦中へと足を向ける。

 

 

「……さて、あきつ丸だっけか?」

 

 

「はい、憲兵殿…いえ、将校殿、あきつ丸であります」

 

頭を掻きながらあきつ丸に正対する高塚。

 

 

「(映画で観た昭和の帝国陸軍の新兵そのままだな)あー、そんな堅苦しいのは無しで。偉そうに憲兵の腕章と将校の階級章なんて着けてるが、どうせ役に立たない物だしな」

 

実際、役に立ってるかも解らない。

 

 

「は、はぁ…わかりましたであります」

 

 

「うむ…さて、こっちは終わり。あっちは…」

 

そう呟いて、滝崎の方を向くと……

 

 

「あらあら、あの時の副官さん?」

 

 

「比叡姉様と霧島がお世話になりました」

 

 

「ヒャッハー、やっぱり、第四艦隊の副官様かー。で、あの後はどうなったんだい?」

 

 

「……助けてくれ」

 

おもいっきり絡まれてる滝崎。

 

 

「……大変だな…じゃあ、そう言う事で」

 

 

「おい!」

 

 

「冗談、冗談。助けに行くから待ってろ」

 

 

 

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