転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

54 / 131
ほとんど高塚君のお話です。


54 憲兵高塚

翌日 マルタ島鎮守府 屋内イベント会場(大会議室)

 

 

 

「……以上が、私が不機嫌な理由であり、こんな馬鹿げた話の内容だ。多分、参加させたくない理由は充分に理解したと思うけど」

 

見るからに不機嫌な表情で滝崎はスクリーンに立っていた。

先程まで提督・艦娘全員を集めて現状,次期作戦の説明を行っていた。

 

 

「阿呆、個人的見解を述べ過ぎだ」

 

 

「痛っ!」

 

呆れながら滝崎の頭を叩く松島宮。

 

 

「さて…副官の個人的見解はさておき…まあ、私も同意見だが…好む好まざるを抜きにして、要請・命令が来たのならやるしかない。それが我々の役目だからな…済まぬが準備の程を頼む。以上、解散」

 

方針決定の場が方針説明と愚痴の言い場になっていた。

 

 

 

 

しばらくして 工廠

 

 

 

「まったく、政治・外交を現場に持ち出すな…と言いたいが、今は仕方無いか…やれやれ」

 

 

「あら、憲兵さんはサボりですか?」

 

工廠にブラリと立ち寄り、時間を弄んでいた高塚に明石が声を掛けた。

 

 

「仕事ないの。まあ、あったらあったで困るけど」

 

 

「そう言ってサボりに来たと」

 

 

「なんとでも言ってくれ。陸の人間は暇なんだよ、武器もコレだけだしな」

 

そう言ってホルスターから取り出した9㎜拳銃を抜いて見せながら皮肉そうに笑いながら言う高塚。

そして、ふと気付くと肘を置いていた机に工廠妖精達が集まっていた。

 

 

「……どうしたんや?」

 

 

「イヤー、副官ノ親戚デアル憲兵殿モ変ワッタ方ダナー、ト」

 

「うーん、そうか? まあ、普通の生活をする人間から見たら変わってるのはある意味自覚してるがな…まあ、今はこうして海と陸に分かれてるが、それを除いたら昔のままさ。陸海空の兵器に通じて、色々と言って…まあ、そんなもんさね」

 

笑いながら話す高塚。

すると工廠妖精達は一度集まり何事かを相談する。

 

 

「憲兵殿、モシ時間ガアレバ陸ニツイテ色々ト教エテ下サイ」

 

 

「陸の事を? まあ、俺だってなんでも知ってる訳じゃあないが…それでいいなら…」

 

 

「なら、私達も同席してよろしいでしょうか?」

 

そう言われて振り向くと霧島、鳥海、摩耶、那智、神通、不知火が居た。

 

 

「おやおや…まあ、こんな小官の話であれば何時でもどうぞ」

 

苦笑いを浮かべながら高塚は言った。

 

 

 

 

「……それはマズいよなー」

 

 

「はい、マズです」

 

 

「そう? イザとなった時の手間が省けるわ」

 

居室への帰り途中に羽黒と加賀に出会った高塚は話す内にレキシントンの話になった。

 

 

「加賀さん、クールな顔のままで物騒な事を言わないで下さい」

 

 

「あら、松島宮提督も時々言ってますよ?」

 

 

「どちらにしろ、問題有りです。後で憲兵として注意してきます」

 

わからんでも無いが内乱の種は摘んでおく必要がある。

しかし、裏を返せばコレだけ親戚である滝崎が慕われて、或いは気に掛けて貰っている事の表れでもあるだろう。

 

 

「しかし、そうなると拳銃で事を防げと言われてもね〜」

 

 

「大丈夫です。イザとなれば私が艤装を展開すれば…」

 

 

「却下です」

 

そんな殺害に手を貸すような事を許可出来る訳がない。

 

 

「あら、あの副官の…フレンドの憲兵殿」

 

偶然歩いていたレキシントンが此方に気付いてわざとらしい言いようで言った。

 

 

「うーん、友達と言うより、親戚なんだがな…まあ、別段細かい事まで気にする気はないがな」

 

 

「なら、そこに居る獰猛な方の手綱は握っておかないと、後々大変な事になるわよ」

 

そう言われて横を見るとプルプルと怒りで身体を震わせ、羽黒が止めていなければ襲い掛かっているであろう加賀がいる。

 

 

「……まあ、彼奴が慕われてる事はよーーくわかったわ」

 

 

「……貴方もあの副官と一緒なのね」

 

 

「血縁者だからな。それに、理不尽な負け戦には慣れてるし」

 

 

「あら、それは自虐ですか?」

 

 

「……貴女も不幸なお方だ。世界を今の混乱に追いやった原因である大統領の下で、偽の大義の為に戦う事になった……理不尽を越えて、同情すらしてしまうが…それがわかっておられない様だ。もっとも、それがわかったら、貴女も壊れる可能性があるが……では、失礼」

 

そう言うと高塚は一礼してからスタスタとその場を離れる。

それに続く加賀、ハッとしてから慌てて一礼し、後を追い掛ける羽黒。

そして、残されたのは唖然とするレキシントン……。

 

 

 

「……さすが、副官の御親戚と言うべきかしら?」

 

 

「彼奴とは同類だ。あの理不尽な戦を散々学んだ人間としては、ああも言いたくなる……だが、妹さんの一件は難しい。本当に彼女を壊す恐れがある」

 

 

「やっぱり、悪魔にはなれないのね」

 

 

「悪魔か……俺も彼奴も悪魔になれるとしたら、絶対絶命の時か極悪者の前か…それくらいだな」

 

 

「え、あの、え、え、え??」

 

2人の会話に付いていけていない羽黒は混乱している。

まあ、当然であろう。

 

 

「さて、彼奴の顔でも覗きに行くか」

 

 

「暇であれば間宮に行きましょう」

 

 

「間宮スイーツか…楽しみだ」

 

 

 

次号へ




ご意見ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。