転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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と、言う事で(?)憲兵さんが参ります。


53 憲兵

数日後 マルタ島鎮守府 松島宮執務室

 

 

 

「なんで、憲兵の到着日に派遣通知が来るんだ? 何かの嫌がらせだろう、これ?」

 

そう言って松島宮は不機嫌そうに言いながら、通知を机に放り投げた。

 

 

「多分、陸軍部の嫌がらせだと思うよ。海軍部でこんな事したら、間違い無く本人の他に最低でも数人の首が飛ぶからね」

 

放り投げられた通知を読みながら滝崎が答えた。

 

 

「まあ、居室は幾らでもあるし、邪魔さえしなければ副官である自分へ何も無いけど」

 

 

「何かあったら、簀巻きにしてから総動員でボコボコにして、死体を塩漬けにして陸軍部に送ってやるからな」

 

 

「松島宮、過激過ぎだよ」

 

副官としてとりあえずツッコミを入れる滝崎。

とりあえず、滝崎は波乱がおきない事を願う事にした。

 

 

 

その頃 マルタ島鎮守府前

 

 

 

「うーん…いやー、一時はどうなるかと思ったが……とりあえず、よかった」

 

そう言って身体を伸ばす高塚。

マルタ島鎮守府の近くの街まで来たのはいいが、街から鎮守府への唯一の交通アクセスであるバスが大半が昼に集中しており、数少ない朝の僅かな1本も早朝な為に、昼頃まで待たねばならなかった。

そして、迎えなど来ていない……これは高塚からすれば予想通りだったのだが……為、自力で移動するしかなかった。

ただ、幸運にもマルタ島鎮守府の近くに住む一般人の車に乗せてもらって無事到着したのだが。

 

 

 

「さて、御迷惑にならない様にさっさと執務室に行くか。向こうも色々と困ってる頃かもしれないし」

 

そう言って手荷物を持って鎮守府に入ろうとした瞬間、日本でも見かけそうな光景が目に入った。

 

 

「(鳳翔さんが軒先きを掃き、五月雨が塵取りで受ける…秋なら、焼き芋作りたくなる光景だな。大鳳が居るのは偶然だろうけど…てか、大鳳持ってるって結構、やり手なのか、ここの人間は?)あー、すみません。マルタ島鎮守府はこちらでよろしいですよね?」

 

 

とりあえず、3人に声を掛ける高塚。

3人が反応した時、元ホテルの鎮守府建物の上の階から声が掛かった。

 

 

「鳳翔さん、五月雨、大鳳。もう直ぐ憲兵が来るから……ん?」

 

此方に気付いて声が止まる。

しかし、それよりも……

 

 

「……滝崎か!?」

 

 

「高塚か!?」

 

……腐れ縁とは怖い物だ。

 

 

 

暫くして 松島宮執務室

 

 

 

「同年同郷の親戚で、腐れ縁、更に元陸自特科隊…現陸軍部砲兵隊の高塚健治だ」

 

 

「今は憲兵だけどな。まあ、とりあえず、よろしく」

 

松島宮、カルメン、シェロンを交えて滝崎が高塚を紹介した。

 

 

「お前に陸軍部の親戚がいたとはな」

 

 

「あはは……まあ、色々とね」

 

 

「俺もマルタに滝崎が居るとは知らなかったけどな。まあ、ここなら無駄な摩擦や衝突をしなくてすむよ」

 

 

「なら、やっぱりあれは陸軍部か」

 

 

「通知の一件だろう? ちなみに憲兵の派遣理由も『マルタ島鎮守府の粗探し』だとさ。あ、陸軍部企画で憲兵は何の関わりもないぞ」

 

 

「だと思った。まったく、通知だけ送ってきて、詳細は何も無しだ。

陸軍部は大丈夫か?」

 

 

「大丈夫かなんて、陸自時代からあんまり変わってねーよ。犠牲と戦訓、時代の読み忘れは未だに変わってない」

 

 

「……陸軍所属なのに結構ディスるのね」

 

高塚の言いようにカルメンが正直な感想を言うと高塚は苦笑いを浮かべながら言った。

 

 

「仕方ないさ。散々醜態を見てきたからな」

 

 

「負け戦の生き残りだからな。高塚は」

 

 

「間違ってないが、それは盛りすぎだ。全滅した砲班の生き残りなだけだ」

 

そっけなく言う高塚……しかし、滝崎以外の3人は互いに顔を見合わせていた。

 

 

 

 

「で、憲兵はなにするんだ?」

 

 

「特に決めとらんよ。まあ、門番ぐらいにはなるだろう」

 

一通りの顔合わせを済ませた高塚は滝崎と共に鎮守府内を歩いていた。

 

 

「…あの提督が嫁か?」

 

 

「嫁って…違うからな、嫁じゃあないからな」

 

 

「あのな…いいとこまでいってる事を知ってる数少ない人間だぞ。まあ、リア充爆発しろ、って言いたいけどな」

 

 

「うるせい、あれは仕方ないだろう」

 

 

「ふん、いい関係なのは間違いないだろう。で、やっぱり悲劇は防ぐ気なんだな?」

 

 

「当たり前だ。例え自らが手を下した艦でも、指揮下に入ったなら話は別だ。例え自己満足と言われても、戦友は守る」

 

 

「その熱い姿勢を陸軍部上層部は見習ってほしいよ」

 

 

「おいおい…まあ、しかしだ…悩みは尽きやせんよ。この間、ギリシャから再三の支援要請を受けた」

 

 

「ギリシャか……だと、クレタ島奪還の件だな?」

 

 

「あぁ、海軍が壊滅したギリシャはウチが来てから引っ切り無しに要請を出してる」

 

 

「よく言うよな。自分達の怠慢と国外への借金で国家破綻させといて、いざ必要な軍備も削りまくった結果が今だぜ? 先進国が戦闘機も艦艇も人員も育成・建造・補充出来ない三流国家同然なんて笑えないよ」

 

 

「しかも、隣国トルコとはキプロス島問題で揉めてる。余りそう言った事には関わりたくないんだがな…」

 

 

「無理だろう。今のギリシャがそんだけ熱心なのは間違いなくキプロス島問題に噛ませる気だからだろう? まあ、そもそも、トルコと戦力を見てギリシャが勝てる訳ないからな」

 

 

「トルコの主要仮想敵はロシア。よって、その戦力の大半が対ロシア向けだから、どうしても多くなる」

 

 

「そこに小者のギリシャが突っかかったところでな…哲学の国は何処にいっちまったのやら」

 

 

「知らんよ。平和過ぎて、頭ボケたんじゃあないか? まあ、当分は『誠意検討中』って言って時間稼ぎしながら情報収集かな」

 

 

「おー、やだやだ……まあ、サポートぐらいはしてやるよ」

 

 

「頼むよ。でないと、こっちが参っちまう」

 

 

 

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