転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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本編の続きとなります。


地中海中部制圧戦
52 新たなる風


数日後 日本本土 国防省 陸軍部一室

 

 

 

「…と言う訳で、君をマルタ島鎮守府に派遣する事になった」

 

朝も早くから呼ばれて来てみれば、要件とはマルタ島鎮守府派遣の辞令・下達とくだらない『派遣名目』を伝えられる事だった。

 

 

「『地中海周辺諸国との協力安定・維持の為に憲兵を派遣する』ですか……そんな堅苦しい事を言わずに、海軍さんから派遣された提督達の粗探しをして、陸軍に分け前を貰える様にしろ、と言えばいいのでは?」

 

左上腕部に『憲兵』の腕章を付けた将校が呆れた調子で言うと下達したお偉いさんの顔が歪む。

それに内心溜め息を吐きつつ、その将校は立ち上がった。

 

 

「命令は了解しました。では、自分は準備がありますのでこれで失礼します」

 

そう言って出て行こうとドアノブに手を掛けた、と同時にお偉いさんの方に顔を向ける。

 

 

「それと、足の引っ張り合いなど、日本本土だけでやって下さい。現場は迷惑なだけなので」

 

そう言ってこの将校……高塚健治(たかつかけんじ)は部屋から出て行った……お偉いさんのギャーギャー言うのを無視して。

 

 

「ふん、アホらしい。そんなに手柄と分け前欲しければ粗探しや足の引っ張りあいするより、もっとマシな事を探せよ。まったく、海がヤバいから予算やらなんやら持ってかれて悔しいのはわかりるけどさ…餓鬼じゃああるまいし…」

 

部屋を出た高塚はそう呟くと入り口へと足を向ける。

 

 

「だいたい、こんなにわか作りの憲兵送ってどうするつもりだよ。俺は元特科…砲兵だ。下手したら、向こうの戦艦の艦娘と仲良くなっちまうよ」

 

何とも言えない事を呟きながら、高塚は出口に向かい足を進めた。

 

 

 

その頃 ドイツ キール軍港 司令部棟

 

 

「では、私達も派遣決定ですか?」

 

 

「あぁ、日本のマルタ島鎮守府の活躍に政府も軍も目の色を変えて注目している。我がドイツ海軍もそろそろ艦娘を出す時期だと判断した様だ」

 

命令を下達された女性将校はそう言うと中年の将官は苦笑いを浮かべながら答えた。

 

 

「今まで厄介者扱いしていた政府と軍が…はあ、手前勝手と言うべきですね」

 

 

「まあ、世間なんてそんなものさ。だが、ようやく我々の出番でもある。君に預けた艦娘達の出番だ」

 

 

「ある日、突然に預けられて、どうしていいかわからず、皆と同じ『訓練メニュー』を受けてもらいましたからね…それなら、こちらからも、要望を1つよろしいですか?」

 

 

「なにかね?」

 

 

「私の鍛えた『彼女達』も連れて行ってよろしいでしょうか?」

 

 

「ふむ…本来なら、各国同様、我が国もザクセン型駆逐艦でも派遣したい所なんだが…その代役としてならいけるかもしれん。まあ、少し重武装過ぎるがな」

 

 

「今の地中海はある意味、ホットゾーンです。ならば、沿岸部に深海棲艦が現れた時の対策も必要では?」

 

 

「……やれやれ、そう言って納得してもらうほかないな。では、直ぐに準備を始めてくれ、エーディト中佐」

 

 

「わかりました」

 

そう返事を返すと軍人らしいキビキビした動作で退室したエーディト。

そして………

 

 

「……ようやく、チャンスが巡ってきたな。みんな、元気かな?」

 

そう呟くと足取り軽く、自室に向かうエーディトだった。

 

 

 

同じ頃 イタリア タラント軍港 司令部

 

 

 

「…と、言う事なのだが…」

 

 

「オッケーですよ。彼女達と艦艇を連れて、自由行動出来るなら、ですけど」

 

将官の命令にノリの軽い返事をする女性将校。

 

 

「それなら構わんよ。因みにウチからは君のアンドレア・ドーリア型駆逐艦とカルロ・ベルガミーニ型フリゲートの凡用型・対潜型各1隻、更に大規模修理・航空機更新が完了したジュゼッペ・ガリバルディが付く事になっている」

 

 

「随分と豪勢ですね」

 

 

「艦娘が少ないなら、通常戦力を多めに出して目立とう…と考えたのかもしれんな。まあ、戦力の多数供給は有難いがね」

 

 

「まあ、豪勢な戦力と自由行動、そして、艦娘…何時でも行けますよ」

 

 

「では、レナータ中佐。後の事は頼んだよ」

 

 

「はい、お任せ下さい」

 

そう言って退室したレナータは…ガッツポーズをする。

 

 

「皆が待ってるマルタ島〜♪ 皆元気か、マルタ島〜♪ 直ぐに行くから待っててね〜♪」

 

そんな唄(?)を歌いながらレナータは自室へと向かった。

 

 

 

その頃 イギリス ロンドン 海軍司令部

 

 

「我が国にもいよいよ地中海に首を突っ込むしかなくなったよ」

 

呆れた調子で言った将官に対し、窓際に立っていた女性将校が振り向いた。

 

 

「マルタ島の一件ですね。ジブラルタル海峡まで解放しましたから、政府も重い腰を上げる気になった、と?」

 

 

「その指摘はあっている。但し、上げる理由の深部は『プライド』だよ」

 

 

「イギリス艦が居るのにイギリス人指揮官が居ない…と?」

 

 

「そうだ。スペインやフランスに遅れをとった…更にドイツ・イタリアも人員と派遣を行おうとしていそうだ。そうされてはイギリスも何かアクションを……と上は思った様だ」

 

 

「今更ですか…イギリス艦がドロップされた時点で動けば良いものを…」

 

 

「まったくだ…そして、君を派遣する事が決定した。レベッカ・ディングリー中佐。君と君の乗艦もマルタ行きだ」

 

 

「地獄の1丁目にならない事を祈ります」

 

 

「それは私も避けたい話だな。では、頼んだよ」

 

 

「わかりました」

 

 

 

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