転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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まだ描ききれていなかった為に更新が遅れた上、3編構成に変更になりました。


46 夜襲進撃 中

静かに突入した神通ら3個水雷戦隊の浸透夜襲隊。

3隊に分かれた浸透夜襲隊は最初に出会う敵水雷戦隊を無視し、奥に奥にと進んでいく。

浸透夜襲隊の目指すのは敵のボス…貴重な魚雷と時間を節約する為、出来る限り敵水雷戦隊を無視する事は最初からから決まっていた。

故に深海棲艦側は神通達の侵入に未だ気付いてはいなかった。

なお、三隊の侵入ルートは以下の通り。

・川内隊 アフリカ沿岸側ルート

・神通隊 中央横断ルート

・那珂隊 ヨーロッパ沿岸側ルート

これに後方から日本・スペイン・フランス・イギリス・アメリカの艦娘で編成された6艦隊とスペイン・フランスのフリゲートと駆逐艦が控えている。

正にマルタ島鎮守府の総力を掛けた作戦であった。

 

 

 

川内隊

 

 

「夜はいいよね〜、夜はさ」

 

 

「素敵なパーティーになるっぽい!」

 

 

「夕立、静かに」

 

 

「そうです、静かに、静かに」

 

川内、夕立、時雨、綾波の会話を交わす間に五月雨と涼風は警戒を怠らない。

と言っても川内はもちろん、『パーティー夕立』『佐世保の時雨』『一騎四殺の綾波』と夜戦と武勲には事欠かないスペシャリスト達なのだが。

 

 

「川内さん、右舷に敵艦隊発見。戦艦と重巡がいるけど、どうすんだい?」

 

涼風からの報告に川内はゴーグルを着けて敵艦隊を観る。

 

 

「……魚雷を撃って奥に進むよ。魚雷発射」

 

ゴーグルを外した川内の指示に次々と夕立達が魚雷を発射する。

しかし、命中結果も見ず川内達は奥に進むべく足を止めずに前へと進んだ。

 

 

 

1時間後 神通隊

 

 

「あと夜明けまで約1時間半……いよいよ不味くなりましたね」

 

 

まだ暗闇のが支配する時間帯とは言え、少しづつ明るくなり、視界が明確になってくる。

そうなれば敵に発見され、残存兵力と戦う確率が増え、それこそ自分達の生存に関わってくる。

本来なら、川内隊・那珂隊とも連絡を取りたいのだが、今回は敵による探知並びに秘匿の為に緊急以外の通信は禁止されていた。

故に神通は時間を確認しつつ、ボスに向かって進んでいた……ただ、神通たちの中央横断ルートは敵も少なく、一度雷撃したのみで何事もなく進んでいた。

 

 

「既に後方の主力部隊も海域の入口まで到達している筈…あとは時間との勝負ですね」

 

気合を入れるかの様に神通峡が呟いた。

 

 

 

暫くして……那珂隊

 

 

「はあはあ……こっちは敵が多すぎよ」

 

 

「な、なのです〜」

 

 

「弾薬の大半を消費したね」

 

 

「那珂さん…敵主力との事を考えると……これ以上は…」

 

 

「あははは……だよねー…」

 

潮の言葉に普段は陽気な那珂も苦笑いを浮かべる。

那珂達が担当するヨーロッパ沿岸コースは敵の配置も多く、更に空母や戦艦などの無視出来ない戦力ばかりが配置されていた。

故に魚雷の使用数を最低限にしても、今でもギリギリな話でしかも、先ほどは不本意ながらも敵と交戦していた為にその疲労も姉達の隊よりも蓄積していた。

そんな中、普段より反応が鈍い……と言うよりガン無視な娘が居た。

 

 

 

「……暁姉さん、黙ってどうしたんだい?」

 

いつもなら、「レディが…」と言って強がりな事を言うはずの暁が珍しくヘラクレスの門がある方向を向いて沈黙していた。

かと思うと、いきなり猛スピードで走り始めた……機関ユニットがブッ壊れるのでは無いかと言わんぐらいに。

 

 

「あ、暁ちゃん!? どうしたの!?」

 

突然の事にようやく気を取り戻した那珂が大声で訊くが、肝心の本人の耳に届いていなかった。

 

 

「こう言うのもなんだけど、あの目はこの前の電だね。アークロイヤルさんとかの要救助者を見付けた時の」

 

 

「な、なのです!?」

 

 

「でも、いつも渋る暁姉さんにしては珍しいわね?」

 

 

「あ、あの…どちらにしても追いかけないと、見失ってしまいますよ?」

 

潮の言葉に那珂は言い放った。

 

 

「皆、行くよ!」

 

 

「「「「おう!」」」なのです!」

 

 

 

その時、海域総司令の戦艦ル級フラグシップは対応におわれていた。

突然の魚雷攻撃の報告が3箇所の侵攻ルートから入っていた事に加え、攻撃を受けた部隊の報告が要領を得ず、更に新たな魚雷攻撃報告が入った上に、一部は交戦の報告も加わっていた。

だが、それでも対応に手間取った原因は相手の手勢がわからなかったから。

魚雷攻撃は当然だが、交戦した艦隊は撃ってきているから応射した為に襲撃者の数も解らぬまま、ガラムシャに撃っていたのである。

もし、襲われた艦隊が冷静になれば、敵の砲撃が巡洋艦と駆逐艦の艦砲であり、しかも、既に撃たれていない事に気付いただろうが、頭に血が上った為にすっかり冷静な判断が出来なくなったいた。

そこにル級フラグシップを更に混乱させる報告がヨーロッパ沿岸コースの最奥を守っていた艦隊から入った。

『艦娘が単騎で襲い掛かって来た』と……。

 

 

 

 

「この…私の前を塞がないでよ!!」

 

そう言い、私は主砲を乱射する。

防空巡洋艦として生まれた私は手数の多さには自信があった。

ただ………相手が重巡洋艦以上となると話は別…主要装甲を貫け無いからだ。

『帰る』為に東に向かっていたけれど……ムカつく程、こいつらは邪魔をしてくる。

しかも、気が立っているらしく、やたらめったらに撃ち込んでくる。

 

 

「そんな粗い照準、日本海軍の足下にも及ばないわね!!」

 

敵であり、『味方』であった日本海軍の夜戦の冷静さ、そして、それに混戦が加わり、『誤射』を頻発させた身内に内心で苦笑を浮かべる。

そして……『東に行けば祖国と仲間が待っている』のだから。

 

 

「っつ、きゃあ!!」

 

敵重巡洋艦の砲撃が顔に来た為、右腕で庇う。

だが、完全に防げず、破片が右側頭部を擦り、傷口の血が垂れていく。

しかも、庇った右腕の両用砲も破壊されていた。

これで怯んだ事を察した深海棲艦が反包囲しながらニジリニジリと距離を詰めてくる。

 

 

「諦めるもんですか…あの地獄の海から帰った私を舐めないで!」

 

次の瞬間、最も近付いていた重巡リ級の顔面に砲弾が直撃した。

そして、『彼女』の横に少女が立っていた。

 

 

「大丈夫!? 援護に来たわ!!」

 

 

その少女は、かつては自らが手を下し、一方で自らを助けてくれた娘だった。

 

 

 

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