転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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明けましておめでとうございます。
昨年中は読者の皆様、先生方々にお世話になりました。
新年と言う事で、更新いたします。
今年もよろしくお願いいたします。


45 夜襲進撃 上

翌日深夜 マルタ島鎮守府

 

 

 

「皆さん、揃いましたね。では、先程示した通りです。浸透夜襲隊、出撃します」

 

集まった川内、神通、那珂の水雷戦隊の駆逐艦達を前に神通が言った。

なお、構成人員は以下の通り。

 

神通水雷戦隊

(旗艦)神通 陽炎 黒潮 不知火 雪風 秋雲

 

川内水雷戦隊

(旗艦)川内 時雨 夕立 五月雨 涼風 綾波

 

那珂水雷戦隊

(旗艦)那珂 暁 響 雷 電 潮

 

そして、三隊が出撃しようとした時…。

 

 

「待った待った! いや〜、よかった。間に合った、間に合った〜」

 

そこに滝崎が走ってやってきた。

 

 

「副官! なんでこんな時間に…」

 

 

「いや〜、自分が立てた作戦の作戦に参加する部隊を見送らずに出撃させるなんて出来ませんよ。あっ、松島宮は時間が時間なんで熟睡中です」

 

神通の問いに当然とばかりに答える滝崎。

そして、並ぶ面々を一通り見ると、口を開いた。

 

 

「作戦内容は神通戦隊長より聞いて、危険具合も承知していると思う。直接戦ってない人間が椅子に座って考えた作戦に文句山積だと承知している。だから、こちらから出す指示は唯一つ、全員無事に帰還してくる事。以上だ」

 

 

「では、改めまして…浸透夜襲隊出撃!」

 

神通の指示で次々に夜襲隊の面々が出撃していく。

それを滝崎は夜の海に溶け込む様に見えなくなるまで見送った。

 

 

「不安なのか?」

 

不意に声を掛けられながらも、滝崎は海を眺めながら答えた。

 

 

「あぁ。技術とかじゃあなくて、状況的にね。あんな事を言っとかないと、自分が責任逃れしているみたいに思うからな。それより、木曽。夜更かしは関心しないぞ」

 

そう言われて陰から出てきたのは軽巡の木曾だった。

 

 

「仕方ないだろう。廊下に出たら、副官が1人で海に向かってたのが見えただけだ」

 

 

「心配でついて来てくれたのか。それならそう言ってくれればいいのに」

 

 

「あーあ、心配して損した。にしても、あんな事を言う奴なんてそうそういないぜ?」

 

 

「だろうな。何かあって呪われるなら、神通達や松島宮でなくて、俺1人で充分だ」

 

 

「……副官、冗談キツいぜ?」

 

 

「こんなの、冗談では言えんよ」

 

滝崎は静かに呟いた。

 

 

 

暫くして……浸透夜襲隊

 

 

 

「……海域まであと約1時間、夜明けまで約3時間半余です」

 

時計で時間を確認した神通が言った。

 

 

「にしても、副官もかなり博打な作戦にでたよね」

 

 

「でも、それを思い付いたのが川内ちゃんとの会話って言う話だしね〜」

 

 

「姉さん、那珂ちゃん、静かにして下さい。既に敵警戒線内には入っていますからね」

 

そう言いつつ、神通は滝崎との会話を頭の隅で回想していた。

 

 

…………………………回想……………………………

 

 

 

「夜襲だ。しかも、漸減作戦を応用し、大規模克つ大胆さを兼ね備えつつ、深く静かに敵ボスまで迫ってもらう。危険で困難な作戦だ」

 

 

「夜戦だ! バリバリ夜戦が出来るね!」

 

 

「姉さん、静かに…副官、詳細をお願いします」

 

 

「あぁ、内容は簡単だ。三つの水雷戦隊で同時にそれぞれ突入、交戦を最低限に控えて敵ボスまで辿りつき叩く。だが、無理に倒す必要は無い。夜が明ければ海域攻略隊が突入して、最終的には叩いてくれるからな」

 

「なるほど、漸減作戦なら、私達が待ち伏せて襲撃し、主力部隊の戦闘を有利にさせるのに対し、今回はこちらが侵攻し、敵主力を叩いて後続の主力部隊を有利にさせる。確かに内容は簡単です。ですが、困難と言うのは…」

 

 

「その1、この作戦は夜が明ける2時間ほど前から開始する。そして、その2は夜が明けるまで一切の支援が無い。その3、連携が難しい。どこかで齟齬が出れば間違い無く、水雷戦隊は大ダメージを受ける。現状では駆逐艦1隻でも失う事は敗北に近い。そこへ3個水雷戦隊も投入するのだから……言いたい事はわかるよな?」

 

「失敗すればまるまる3個水雷戦隊を失う諸刃の剣な作戦…と言う事ですね?」

 

 

「あぁ、故にこの作戦は松島宮に上げていない。そして、可能かどうかを日本海軍最強水雷戦隊群を率いた川内三姉妹に聞きたい。どうかな、この作戦は?」

 

………………………回想終了………………………

 

 

「それにしても、川内ちゃんと話してて作戦を思い付くなんて、プロデューサーって何気に有能だね」

 

 

「那珂ちゃん、滝崎副官をプロデューサー呼ばわりしてはいけません」

 

そう言いつつ、神通は滝崎については感心していた。

フィンランド派兵に際して、朝顔の副長として間接的に行動を共にする事はあったが、大東亜戦争では第四艦隊・第二機動部隊にいた為、その有能ぶりは噂でしか聞いてなかった。

しかし、マルタ島鎮守府に来てから、直接的に滝崎の指揮下に入ると、彼が有能でありながら、人付き合いと配慮が巧い人間だと知った。

まあ……少し周りを甘やかし過ぎてるのでは無いかと思ってはいるが。

 

 

「どうしたの、神通?」

 

 

「なんでもありません。あれ、姉さん、そんなゴーグルしてましたっけ?」

 

話しかけられた神通は川内の頭に見慣れないゴーグルがある事に気付いて聞いた。

 

 

「あぁ、これ? いいでしょう? 副官にねだって提供してもらったんだ〜」

 

 

「ね、ねだって…何をやってるんですか、姉さん…」

 

 

「いいの、いいの。副官だって、それくらいで怒ったりしないよ」

 

 

「そう言う事ではありません…はぁ、やっぱり、副官は甘やかし過ぎです」

 

 

「でも、副官って、艦種関係無く人気あるからね。あの堅物な加賀さんが信用してるくらいだしね」

 

 

「確かに……提督や副官の乗艦だった事もあるでしょうけど…」

 

 

「それに、副官と話してる加賀さんって表情が柔らかくない?」

 

 

「……それは知りません。そろそろ、戦闘準備範囲です。浸透夜襲隊、突撃します」

 

 

 

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