なお、本日はこの作品の発端となった作品を架空戦記のタグを付けて投稿いたします。
1週間後 アフリカ沿岸海域
「「ファイヤ!!」」
フェニックス、セントルイスの砲撃が敵重巡洋艦に砲撃を行う。
対最上型(軽巡時)として産み出されただけにその砲力は重巡洋艦と互角に戦う事も可能だ。
故に2人の砲撃で重巡洋艦が撃ち倒されたのも不思議ではなかった。
「鎧袖一触よ。心配いらないわ」
そう言って加賀が全砲門を向け、砲撃を開始する。
その砲撃は正確であり、敵旗艦である戦艦を黙らせる。
そして、最後の一斉射がとどめとなり、沈んでいく。
「戦闘終了。帰還しましょう」
加賀の言葉にフェニックス、セントルイス、祥鳳、暁、響の返事が返ってきた。
帰還後 暫くして 鎮守府内松島宮執務室
「報告は以上です」
「お疲れ様。さて…まあ、予想は出来ていたが、今回は今までの様にはいかないな」
加賀からの報告に松島宮が労を労い、言った。
「ボスまでの侵攻ルートが3つ、どれもそれなりに強力で防備が固い。向こうもこの海域の資源をあてにしている証拠だな」
「お互いに譲れないって事ね。故に抵抗が激しいのも当然って訳か」
滝崎の言葉にカルメンが呟く。
「まあ、今回もドッシリと腰を据えて慎重にやるしかあるまい。急かしたところで、敵に利しては意味が無い」
「私はそれでいいけど…本国が承知するかが気掛かりなんだけど?」
「なら、フランスにこう言うかい? 『文句言うなら、フランスがやってくれ』って」
「ひと悶着しそうね」
松島宮の言葉にシェロンが言い、滝崎が意地悪そうに返し、苦笑いを浮かべるシェロン。
「とりあえず、様子を見つつ、戦力の増強に務める。以上だ」
暫くして、滝崎執務室
「結局、下手に動かず、じっくり攻める事にしたんですね」
「まあ、期限がある訳でもなし、堅実堅固にいくよ」
そう言いながら滝崎は机にある書類を次々に処理していく。
「よし、っと。次は……ふむ、珍しいな、鳳翔さんから『家庭菜園をやりたい』だってさ」
そう言って滝崎は鳳翔の申請書類を不知火に見せる。
「家庭菜園…ですか?」
「お店で使う薬味とかを育てるんだろう。それに最近はアメリカ、フランス、ドイツの艦娘もいるしね。色々と必要になったんだろうね」
そう言って滝崎は判子を押そうとした時、手が止まる。
「そう言えば…ここにそんな用地があったかな? まあ、鳳翔さんの事だから、候補地はあるだろうけど」
「調べに行きますか?」
「もちろん…他の書類が終わったらな」
暫くして………
「えーと、ここだな」
鳳翔の案内の下、たどり着いた家庭菜園候補地。
そこは果樹園だったらしく、そこそこの木々に果実の実がなっていた。
「確かに場所は良いですね」
「あぁ、ちょうどホテルの敷地内だし…これは上の許可を取れば大丈夫でしょう」
「そうですか。それなら、大丈夫ですね」
不知火、滝崎、鳳翔の意見は一致していた。
「さて、そうなりますと、植える物の種やら…まあ、色々と手配しないといけませんね。間宮さんや明石さんとも調整を…」
直ぐ近くから草木を掻き分ける音が聞こえ、滝崎は素早く左腰のホルスターから南部14年式拳銃を引き抜き、素早く安全装置を解除、初弾を装填し、物音のする方に向ける。
「不知火、鳳翔さんと共に後退。艤装が無いこの状況下では不利だ」
「この不知火に落ち度があると思いますか?」
いつの間にか艤装を展開する不知火。
「…よく出来た秘書艦だよ」
「当然です。秘書艦ですから」
なんで息が合うかはさておき、物音は此方に近付いてくる。
そして、3人の前に出て来たのは……
「すみません…何か食べる物は無いですか?」
「「「…………」」」
巨大な砲塔を中心とした戦艦艤装を背負う艦娘だった。
暫くして……居酒屋『鳳翔』店内
「えーと、確認するが、貴女はイギリス帝国海軍のクイーン・エリザベス級戦艦ヴァリアント…で間違いないですね?」
「はい、間違いありません」
鳳翔さん特性お握りが載っていたであろう小皿の小山の隣で食後のお茶を優雅に味わう戦艦ヴァリアント。
なお、事情聴取は空腹の中でお握りを食べさせた為かスムーズにすすんだ。
「戦艦があんな所に居る時点で普通なら可笑しい話ですが」
「不知火、笑う方のおかしいではないと思うぞ」
「質問に答えましたので、こちらも質問してよろしいでしょうか?」
「えぇ、構いません」
「では、ここは何処ですか?」
「地中海のマルタ島です。そして、ここは日本海軍地中海派遣艦隊マルタ島鎮守府です」
「…マルタ島…えっ、マルタ島ですか?」
「はい、マルタ島です」
「…神よ! 感謝します! 不幸な私にも幸がありました!!」
「……どうしたんでしょうか?」
「……いま調べたが、ヴァリアントって結構事故ったりしてるな。ちなみに生まれは扶桑姉妹と同じぐらい」
「……イギリス版不幸さん?」
「もっと不幸な方を知ってるから、ヴァリアントさんはマシな方だな」
タブレットの画面を戻しながら滝崎は言った。
1時間後……松島宮執務室
「それで、ヴァリアントの状態は?」
「空腹だった事を除けば異常なし。とりあえず、今は点検を兼ねて明石に預けてある」
「わかった。しかし、そうなると今度はイギリスに伝えないといけないな」
「義務だからね。仕方無いさ。それに、いずれイギリスは地中海にも介入してくるよ」
「それもそうだな。さて、ヴァリアントの報告書を書かねばな……空腹で保護したなんて書いて大丈夫だと思うか?」
「それは仕方ないと思うよ…後は建造は大丈夫かい?」
「四号機以外のフル稼働だ。あっ、無駄な消費はしてないからな!」
「はいはい、わかってます」
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