転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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続きの筈なのに色々とすっ飛ばします。
そして、海自で生まれ変わったあのクールな御方が……。(砲撃で吹っ飛びました)


36 御満足?

2日後……マルタ島鎮守府 滝崎執務室

 

 

 

「やれやれ、フランス政府の宣伝はオーバーでないかね?」

 

取り寄せたフランス国内の新聞を見て滝崎は苦笑いを浮かべる。

先日の『西地中海中央海域攻略戦』は敵の航空攻撃終了直後にコエトロゴンが放った対艦ミサイルがヲ級2隻を撃破、それに乗じた反撃により敵通商破壊部隊を撃滅し、攻略に成功した。

そして、それを報道する新聞のどの紙面も『フランス海軍、艦娘を率いて攻略作戦決行!』『深海棲艦を撃滅し、海域を攻略!』等々の題名で1面を飾っていた。

 

 

「フランスとしては、自分達主導での海域攻略に成功したのが嬉しかったのでは?」

 

滝崎の言葉に不知火が答えた。

 

 

「まあ、わからんでもないが……頼むから、慢心して実力を越えた作戦を提案してこない事を祈るよ」

 

 

「それは言えてますね。それで、次は何処の攻略になりますか?」

 

 

「多分、アフリカ沿岸だろう。あそこは海底油田とかの海底資源が豊富な海域だからね」

 

 

「なるほど、海底油田ですか…あれ、なら、色々と揉め事に…」

 

 

「そうなんですよね…まあ、どちらにしろ、資源確保も我々の仕事。しかも、資源海域ゆえに敵も多い…頭の痛い話だ」

 

 

「そうですか…それでは、戦力強化が必要では?」

「あぁ、だから、今日は今朝から実装されたばかりの…」

 

そう言った直後、外から爆発音が響いた。

 

 

「なんだ!? 敵襲か!!」

 

 

「副官、工厰からです。建造カプセル四番機が爆発したそうです」

 

内線電話を受けた不知火が滝崎に報告した。

 

 

「なに!? 四番機は…行くぞ、不知火!!」

 

 

「了解です」

 

ヘルメットを掴み、不知火を引き連れて部屋から出ていった。

 

 

 

工厰

 

 

「明石! 夕張! 無事か!?」

 

不知火を連れて駆け付けてきた滝崎は工厰に入ると明石と夕張を探す。

「あっ、副官。私達は大丈夫ですよ」

 

 

「でも、四番機が…」

 

夕張が無事を伝え、明石が建造カプセルの方を見る。

肝心の四番機は黒煙を上げていた。

 

 

「ところで、四番機は何かしていたのですか?」

 

 

「実装されたばかりの大型建造システムを試しも兼ねて使用したんだが…他のカプセルは?」

 

不知火の問いに滝崎が答え、そのまま明石に質問する。

 

 

「四番機以外は建造が完了していたのですので、大丈夫です。今から、非稼働カプセルを点検します」

 

 

「わかった。にしても、なんで整備完璧なのにこうなるんだ?」

明石と夕張が整備・点検している物がなんで爆発するんだ…と言う疑問を持ちつつ、黒煙を手で払いながら建造カプセル四番機に近付く滝崎。

すると……

 

 

「ケホッ、ケホッ…存外な歓迎ね」

 

 

「……?」

 

煙の向こうから随分懐かしい声が聞こえた……様な気がした。

いや、そんな筈はない。そんなに都合良くくるなどあり得ない、聞き間違えだ、空耳に決まってる……と滝崎が思った時、排煙装置が効き出したのか、黒煙が外に吐き出されていく。

そして、黒煙が排出された時……

 

 

「加賀型戦艦一番艦の加賀です。貴方が提督…な…の?」

そこに居たのは衣装こそ『空母加賀』だが、艤装は右手に艦首部と連装砲塔2基、左手に艦尾部と連装砲塔3基を装着していた。

そして、加賀は滝崎を見て思わず手を口に宛ててしまう。

 

 

「加賀さん! お久しぶりです!!」

 

思わず周りの事も忘れて加賀を抱き締める滝崎。

 

 

「えっ、えっと…た、滝崎副官、そ、その…嬉しいのはわかりますが……は、恥ずかしい…で…す」

 

嬉しさのあまり目から涙を流しながら抱き寄せる滝崎に加賀のクールな印象は鳴りを潜め、あたふたする。

それを見る3人は……

 

 

「……副官と加賀さんの関係ってなんでしょうか?」

「まっ、まあ…泣くほど嬉しいんだから…それなりの仲じゃあないのかな?」

 

 

「第四艦隊旗艦と乗艦している副官だからね。あの2人」

 

不知火の問いに明石は困惑し、同じ艦隊にいた夕張が答えた。

 

 

 

暫くして……松島宮の執務室

 

 

 

「加賀が来てくれたのか! よし! 鳳翔、今日は宴会だ!!」

 

嬉しさのあまり、滝崎は加賀の手を掴み、松島宮の執務室に連れて行き、松島宮も加賀が来た事に喜ぶ。

そして、あれよあれよと言う間に宴会が決定した。

 

 

「ところで、通常建造の方は誰が出たんだ?」

「おぉ、そうだった、そうだった。木曾、陽炎、暁の3人だ。今は五十鈴と響、黒潮に案内をしてもらってる」

 

 

「そっか。4号機は明石と夕張が検査・修理中」

 

 

「まあ、そっちはプロに任せる。さあ、宴会の準備だ!!」

 

 

 

その日の夜

 

 

 

「いや〜、加賀さんが来てくれてよかった〜」

 

松島宮の挨拶(?)後に始まった宴会……とりあえず、表向きは『フランス組勝利おめでとう&加賀さん達着任歓迎』と言う名目だ。

そんな中、滝崎は何時もの通り、会場の端に陣取り、加賀の御猪口に日本酒を注いでいた。

 

「副官も変わりないようね。まあ、変わりないから、提督と一緒に居るのかしら?」

 

 

「うーん……そうかも…」

 

 

「やっぱり、変わってないわね」

 

そう言ってクールな表情を変えず、密かに微笑みながら酒が注がれた御猪口を口元で傾ける加賀。

その様子を加賀とは反対側の滝崎の隣で見ていた不知火は……。

 

 

「本当に御二人は仲が良いですね」

 

 

「松島宮を入れると3人だぞ。それに5年も乗艦して戦ったんだ。当然さ」

 

 

「そうね。第四艦隊に配備されてから、色々とあったものね」

 

 

「その色々を聞きたいです!」

 

 

「「「黙りなさい!」」」

調子に乗って聞き出そうとした青葉に3人の裏拳が炸裂し、青葉が伸びる。

しかし、3人は気にも止めない。

 

 

「貴女も副官の秘書艦として付き合いが長くなれば、色々とわかってくるわ」

 

 

「御指導、御鞭撻、宜しくです」

 

 

「なんでそうなる?」

 

滝崎がツッコミを入れた時、そんな彼らに声が掛かる。

 

 

「Hello カガとシラヌイ…そして、惰弱な副官さん」

 

 

「……誰ですか、この艦は?」

 

 

「加賀さん、この艦は副官の殺害を狙う空母レキシントンです」

レキシントンの物言いに密かに青筋を立てて訊き、不知火が敵意剥き出しで答える。

 

 

「おいおい、不知火。余計な事を言うな。レキシントンは…」

 

 

「残念、何度も言ってるけど、副官は嫌いだから、言う事なんて聞かないわ」

 

 

「…副官、この礼儀知らずの偉そう言いに日本海軍流の罰を与えてよろしいでしょうか?」

 

 

「いえ、加賀さん。このアメリカ娘は直接殺ってしまうのが一番です」

 

 

「おーい、加賀も不知火も物騒な事を平気で口に出すな」

 

加賀と不知火の物言いに滝崎は止めに入る。

 

 

「あら、空母の加賀ではなくて、戦艦の加賀はショウカクやズイカクに助けてもらわないの?」

 

「五航戦の子と一緒にしないで…と言いたいところだけれど、珊瑚海の時点であの子達の技量は日本帝国海軍機動部隊の一翼を担うのに十分だったわ。副官だけでなく、五航戦の子達も侮辱するなら、覚悟する事ね。そもそも、ベテランの貴女がやられてる時点で貴女の技量を疑うわ」

 

普段と変わらぬクールな表情ながらも、五航戦の2人が聞けば驚くこと間違い無しの発言を混ぜつつ、レキシントンを牽制する。

 

 

「……貴女ね、潰すわよ?」

 

 

「あら、鎧袖一触よ。心配いらないわ」

 

なんだか2人で戦い出すのではないのだろうかと言う空気をかもし出す。

 

「加賀さん、殺ってしまいましょう」

 

 

「こら、不知火! 煽るな!」

 

不知火は煽りだして滝崎がキレる。

 

 

「……2対1だと分が悪すぎるわね。いいわ、ここは大人しく退きましょう」

 

そう言ってレキシントンは宴会の中に消えて言った。

 

 

「……まだ話してないの? 『あの事』を」

 

 

「話したところで、意味なんてありませんよ。下手をしたら、余計に関係悪化に繋がるだけですから」

 

加賀の問いに滝崎が答える。

 

 

「変わってませんね。1人で何でも抱え込む癖も」

 

 

「あはは…職業柄、仕方ありませんよ」

 

 

「あ、あの…不知火には解らないのですが?」

 

 

「何時か教えてあげるわ。一人前になったらね」

 

 

 

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