転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

30 / 131
題名と中身はあってる筈。
今回は錬成組のお話です。


30 月月火水木金金

3日後……マルタ島鎮守府 空母艦娘訓練区域

 

 

 

「あっ、副官やんか。どうしたんや?」

 

 

「やあ、龍驤。ベアルンの様子を見にきたのさ」

 

事務仕事に忙しい松島宮の代理として、フランス・アメリカ組の訓練模様を見にきた滝崎は龍驤に出会った。

 

 

「あぁ…あの子な…結構手間が掛かるな」

 

 

「ふむ、やはりか…本人は素直なんだろう?」

 

 

「せや。でもな、彼女自身にウチらみたいな経験がないさかいな」

 

それを聞いて滝崎は予想通りだった事ではあったが、溜め息を吐く。

何故なら、ベアルンは空母ではあったものの、艦載機使用の実戦経験は皆無であり、支那での動乱による空母実戦使用経験がある鳳翔達に比べて著しく劣っていたからだ。

その原因は艦個体の性能もさることながら、フランスの地理・政治情勢、海軍上層部の戦術・戦略・運用方針の不確定、後継艦・後継機の開発・整備遅延、フランスの早期降伏など、様々な事情が重なっているからだ。

(と言うか、39年時点で近代的空母実戦運用ノウハウがあったのは日本のみで、鳳翔達が異常だ、と言うツッコミは無し)

 

 

「まあ、彼女の実戦らしい実戦はシュペーの捜索・追跡のみですから、なんとも言えませんが」

 

 

「そうなんか……まあ、空母やのに初期が砲や魚雷やったんは驚きやけどな」

 

「葛城達は?」とツッコミを入れたい方々は要るかも知れないが、そっちとは事情が違うので考慮していただきたい。

そもそも、空母に火砲は解るが、固定式魚雷発射管と言う建造途中からの改装時の忘れ物だろうとツッコミたい代物を搭載している時点で頭の痛い話だ。

無論、不要装備として早々に魚雷発射管は外した。

 

 

「艦載機の選定にも苦労したそうだね?」

 

 

「ホンマや。爆装の99はギリギリやったけど、97は爆装も雷装もアカンかったわ。いまは96で練習中やけど…あの巨体に対して搭載数が少ないのがネックやな」

 

 

「ベアルンの搭載数は複葉機で40機。それも一部は分解搭載…単葉翼機で何機搭載か、なんて言われたぐらいですからね」

 

ただ、艦娘であればその搭載数は増減しないので余り気にしなくてよいのだが…。

「ところで、龍驤は何をしてるんだ?」

 

訓練場では洋弓(アーチェリー)を使うベアルンと指導役の鳳翔、蒼龍、祥鳳、練習相手の神鷹が居る。

なお、レキシントンは「私は別でしょう」と言って別の場所で訓練している。

 

 

「あんだけ居ったら、ウチなんて邪魔になるだけや。それに…あの子の近くは無性に腹立ってくるんや」

 

それを聞いて滝崎はベアルンに『胸がある』ことだと察していたが……何も言わなかった。

 

 

 

暫くして……雷撃訓練区域

 

 

「外れたね」

 

 

「「えぇ〜!!」」

 

最上の一言にフェニックスとセントルイスの声が重なる。

 

そちらに視線を移すと、雷撃訓練中らしく、フェニックスとセントルイスが最上に向かってブー垂れていた。

 

 

「あっ、副官じゃん。チース」

 

近くに居た鈴谷が滝崎に気付いて気軽に声をかける。

 

 

「あぁ、鈴谷。あの様子だと当たっていない様だな」

 

 

「あはは…私達の対抗艦なのに魚雷を搭載してないからね〜」

 

 

「故に魚雷戦は苦手か…まあ、君達は改装で重巡洋艦になったから、どちらにしろ、対抗は無理だろうけどね」

 

そう言って滝崎は持っていたメモ帳に簡単なメモをしていく。

 

 

「そう言えば、副官ってなにやってるの?」

「松島宮の代行で錬成具合を見てるのさ。多分、彼女達の錬成具合で次の戦い方が決まるからね」

 

 

「ふーん…まあ、そこは副官達の領分かだから、任せるしかないよね」

 

 

「君達を失望させないようにはするよ」

 

 

 

またまた暫くして……艦隊運動訓練区画

 

 

「はい! 魚雷発射と同時に回避運動! 真っ直ぐ進まない!」

 

 

「「は、はい!!」」

 

鬼教官神通の指示の下、魚雷発射から回避運動を開始するエミール・ベルタンとアルバトロス。

だが、対峙するのは川内率いる水雷戦隊。

その水雷戦隊が無慈悲に2人へ砲撃を開始し、周囲に水柱が続々と立ち上ぼり、2人の姿をけしてしまう。

「………えらく激しい訓練だな」

 

双眼鏡でその様子を見ていた滝崎はそう呟く。

 

 

「あっ、プロデューサー。どうしたの?」

 

 

「那珂か。霧島は砲撃精度の測定かな?」

 

那珂の居た所で砲撃する川内戦隊を観察する霧島を見ながら訊いた。

 

 

「そうそう。プロデューサーは何しに来たの?」

 

 

「錬成具合を見に来た。と言うか、プロデューサーはやめなさい」

 

 

「え〜、副官って、なんだかプロデューサーみたいだけど?」

 

 

「……なんだ、そりゃ?」

 

……那珂の謎理論に疑問符を浮かべつつ、視線を再び訓練区画へと向ける。

時折、水柱の間から見えるエミール・ベルタン達の方は訓練用ペイント弾があちこちについている。

対し、エミール・ベルタン達の砲撃は川内戦隊に効いていない。

 

 

「……数もさることながら、練度も段違いか…それだけ、神通が鍛えた駆逐艦と川内の艦隊運動はシッカリしているな」

 

双眼鏡で双方を観察しながら滝崎が呟く。

双方の艦隊運動を見れば解るが、何処かキレの無いエミール・ベルタン達に対し、砲撃しながらも素早い動きをする川内戦隊。

 

 

「とりあえず、彼女達も錬成が必要だな。わかっていたけど」

 

そう呟いて滝崎はメモをとった。

 

暫くして………

 

 

「結論として、まだまだ出せる状況じゃあないな。錬成が必要、と」

 

そう独り言を呟きながらメモを書いていき、書き終わったと同時にメモ帳を閉じる滝崎。

 

 

「とりあえず、明日の威力偵察の結果次第だな。まあ、彼女達を出すならまだ先になるが…」

 

そう言いながら伸びをする滝崎。

すると、バレアレスを先頭に2人の艦娘が帰って来た。

 

 

「お帰り、バレアレス、摩耶、鳥海」

 

 

「滝崎副官! はい、ただいま戻りました」

 

 

「マルタ島巡回終了しました」

 

バレアレスに続き鳥海が報告した。

なお、摩耶と鳥海は響の後に重巡レシピで建造したら出てきたのである。

「まっ、この摩耶様が居るから大丈夫さ」

 

 

「確かに……こっちは大丈夫だな」

 

 

「大丈夫…? 何がですか?」

 

 

「いや、こっちの話さ」

 

鳥海の質問に滝崎そう言ってはぐらかした。

 

 

 

次号へ

 




ご意見ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。