転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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マルタ島鎮守府の本格稼働です。
さてはて、どうなる事やら…。


3 本格稼働

翌日……マルタ島鎮守府

 

 

マルタ島鎮守府に輸送艦が到着した。

鎮守府に必要な物品…食料をはじめ、燃料・弾薬・鉄鋼・ボーキサイト等と言った物が揚陸され、倉庫に収納される。

これの調整・連絡等の業務をこなすのは滝崎の役目だった。

 

 

「そっちのボーキサイトは9・10番倉庫にお願いします…あっ、高速修理材(バケツ)はドック横の倉庫に入れて下さい」

 

搬入員に指示を下しながらテキパキと作業を進めていく。

 

 

「しかし……皇族で地中海だからか、資材量が多いな」

 

搬入品数量を確認した滝崎が呟く。

なにせ、燃料・弾薬・鉄鋼・ボーキサイトがオール5万なのだから。

(大将クラスでもここまで貯めるのは一苦労なのに…問題は今後の補給回数と数量、消費管理…まあ、気を配る必要のある問題ばかりだな)

 

そんな事を心中で呟きながら、視線を鎮守府の提督執務室に向けた。

 

 

 

提督執務室

 

 

 

「ふむ…間宮、明石の配属は聞いていたが、まさか大淀も配属されたのか」

 

辞令書を見ながら松島宮が呟く。

松島宮の前には間宮、明石、大淀の3人が並んでいた。

もちろん、この3人は先の輸送船と共に到着したのである。

 

 

「ところで、3人の艤装は?」

 

 

「間宮は開発中。私と大淀は開発は完了しているんだけど、調整中なのよ」

3人を代表して技術担当の明石が答えた。

 

 

「私は食事を含めた後方支援任務が中心になります」

 

 

「私は事務と本部との通信・指示伝達等の業務になります」

 

 

「そして、私は技術開発担当よ」

 

まあ、間宮、明石、大淀の担当部門は見れば解るし、有名なので今更な話である。

 

 

「じゃあ、今日…いいえ、今からね。ただいまより、間宮、明石、大淀は各自業務に取り掛かるように。以上」

 

松島宮の命を受けて3人は敬礼し、退出しようとする。

ここで松島宮が何かを思い出して声を掛けた。

 

 

「明石、少し相談があるので残ってほしい」

「わかりました。それで提督、相談とは?」

 

 

「うむ、実は……」

 

 

 

暫くして………

 

 

 

「……また、建造をやるのね」

 

 

「またって…まだ、試しに朝顔を建造しただけだろう?」

 

 

「まあ、2人じゃあ戦力不足なのは承知しているよ…危惧しているのは建造し過ぎないかどうか」

 

 

「大丈夫だ。明石も要るからな」

 

それは違うと思うぞ……と思いながら横に視線をずらすと苦笑いを浮かべる明石がいた。

 

 

「で、狙う艦種は? 駆逐艦か? 軽巡洋艦か?」

 

「駆逐艦だ。まあ、運が良ければ軽巡洋艦でもよいのだが…工厰の状況は?」

 

 

「建造装置は4基稼働可能。開発資材・高速建造材・資材なども充分ある。ちなみにドックも4基稼働可能」

 

タブレットに報告する為に予め出していた事をスラスラ答える。

 

 

「よし、明石、建造だ! 使用資材はオール50でな!」

 

 

 

暫くして……工厰

 

 

製造機の周りをちまちまと工厰の妖精達が動き回っている。

その光景を滝崎と明石はお茶を飲みながら見ていた。

 

 

「滝崎副官って、お茶の煎れ方が上手いですね」

 

「そうかな? まあ、中央勤務だと下っ端がやる事なんてお茶を煎れる事だからな」

 

士官学校を卒業し、深海棲艦への対応の為、次々に各地の鎮守府に配属される同期達に対し、松島宮と滝崎は中央勤務に回された。

一番の理由は松島宮が末席とは言え皇族である事、裏の理由は松島宮が滝崎と離されるのを嫌い、駄々をこねた事だ。

故に成績上位者で階級が同期達より高い中佐での任官であるにも関わらず、ついこの間まで中央でお茶を煎れか、雑務処理等をするのが日常だった。

特に松島宮の下ともなれば無駄に来客やら何やらが多く、その頻度が半端では無かった為、慣れていても仕方無いのだが。

 

「でも、このお茶は美味しいですよ。疲れた時にまた飲みたいな」

 

 

「お茶くらいなら、時間があれば幾らでも」

 

そう言った時、工廠長妖精が準備完了を報告してきた。

 

 

「明石サン、副官。建造準備完了デス」

 

 

「了解。さてはて、今度は何が出てくるかね」

 

 

「それはやってみないと。工廠長、やって下さい」

 

 

「了解デス。ヨシ、始メロ」

 

工廠長妖精の指示に工廠員妖精が建造機器を始動させる。

次にタイマーがクルクルと回り出す。

そして、タイマーが止まった。

 

 

「えーと…22分か。22分だと…何だっけ?」

 

 

「白露型駆逐艦ですね」

 

隣で建造時間データを見ていた明石が言った。

 

 

「白露型駆逐艦か……うん、待ってみよう」

 

 

22分後……

 

 

「僕は白露型駆逐艦の時雨。みんな、よろしくね」

 

建造結果……時雨がきました。

 

 

「時雨…ん、時雨……ふむ…」

 

 

「どうしたの、滝崎副官?」

 

時雨と聞いて何かを考える滝崎。それを訊く明石。

 

 

「いきなりで不躾だが、幾つか質問をしていいか、時雨?」

 

 

「いいよ」

 

 

「じゃあ、1942…昭和17年後半以降の戦隊旗艦は?」

 

 

「えっと…確か、軽巡洋艦の厚狭だったね」

 

 

「同じく配属艦隊の旗艦は? それと最上乗艦の少将は?」

 

 

「空母の遠鶴。司令は角田中将。最上は…西村少将だった」

 

 

「じゃあ、最後に……戦艦加賀に乗り組んでいた少将と大佐は?」

 

 

「加賀に? 加賀には元第四艦隊司令でフィンランド海戦の松島宮少将と滝崎大佐……あれ? 滝崎副官…滝崎大佐…えっ、まさか…」

 

 

「そのまさか……久し振り、と言うべきは解らないが…再び君の着任を歓迎するよ、時雨」

 

 

 

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