転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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数日後……マルタ島鎮守府 提督執務室

 

 

 

「ふむ…敵さんも中々やるね」

 

 

「敵を誉めてどうする。と言うか、これは当然の行動であろう?」

 

松島宮・滝崎の元に届けられた10枚ほどの偵察写真を眺めながら議論していた。

 

 

「我々が2島沖の掃討を行った事が敵に2島とフランス沖合いとの間に対する圧力を強めたのは当然だと思うがな」

 

 

「故に僕達はフランス沖合いとアフリカ沿岸の地中海西方中部を抑える必要がある…こうでしょう?」

 

 

「そうだ。フランス海軍によると、ここに輸送船団と通商破壊艦隊が展開している。これを叩き、中部海域を確保する……口では簡単だが、実行は難しいな」

 

「うむ、中部海域に存在しているのはわかった。しかし、敵勢力の変化が激しいからな」

 

写真はフランス海軍偵察機が撮った『時間帯が違う』ものだ。

それをよく見ると、1枚1枚撮されている敵編成が異なっている。

 

 

「敵水雷戦隊はいい…問題は輸送船団部隊と通商破壊艦隊だ。輸送船団は重巡と輸送船の編成と戦艦、駆逐艦、輸送船の編成の2つ。通商破壊艦隊は重巡主力の艦隊と空母を編入した機動艦隊の2つ……厄介だな」

 

 

「あぁ…つーか、なんで輸送船団に戦艦をつける? 輸送船団の敵は潜水艦だろう?」

 

 

「確かにな……それを言えば、なんで一方は重巡だけなんだ?」

 

「………謎だな」

 

 

「えぇ、謎ね」

 

……訳の解らないところで互いに納得する2人。

まあ、それは置いといて……。

 

 

「さて、こうなると問題は誰を投入し、編成をどうするか、になるけど…」

 

 

「体面的な事を言えばシェロンとコエトロゴンを投入すればよいが……無理だな」

 

 

「あぁ、無理だ。そもそも、カルメンみたいに艦娘と通常艦艇との連携戦闘の経験がないしな」

 

 

「それにフランス艦娘も実戦経験は無に等しい。いきなり連携を取れと言っても無理だな。と言ってカルメン達を出すのは正直不味いな」

「フランスのプライドは中々だからね。下手にやるとうるさいしな」

 

滝崎も松島宮も今回は事が事だけに険しい顔をする。

 

 

「ところで、そのフランス組は?」

 

 

「シェロンとコエトロゴンは艦娘とのデータリンク設定の真っ最中。これにはバレアレスとコエトロゴンの担当技官、将兵に明石、夕張が担当。ベアルンは鳳翔達空母組、エミール・ベルタンとアルバトロスは神通・川内達が教育担当中だね」

 

 

「どちらも今頃はかなり揉まれている頃だな。まあ、お互いに慣れてる面々だから、シゴキがキツいのは当たり前だが」

 

 

「あはは、確かに…それに彼女達の艦歴を見る限り、実戦経験は無い……日本流はかなり堪えるな」

月月火水木金金と言われた日本海軍の猛訓練……これに耐えれるかが、いまのところの問題なのだが。

 

 

「そこは気力で我慢してもらおう。さて、そうなると、どうするか、だが…」

 

 

「先ずは偵察隊を出してみるのもいいんじゃあないかな? 偵察写真だけでは掴めない事も掴めるだろうし」

 

 

「そうだな……ついでにクイヨも入れるか」

 

 

「今まで出番なくて、水中からの哨戒活動だったからな。ここらで入れてやらないと問題だね」

 

ここでU954の投入が決定された。

 

 

「だが…問題はその先だな。フランス組とアメリカ組の育成とコエトロゴンのデータリンク設定の完了を待って艦隊を編成し……何日掛かる?」

「艦娘側の設定を忘れてるよ。データリンク設定は度合いによるからな。でも、一番のネックは艦娘の練度だろうな。これは猛訓練と実戦を重ねるしかない。よって、こっちに時間が必要だ」

 

 

「そうか……まあ、急いで事を仕損じる訳にもいかんし、フランス側の事も気にせねばならぬからな」

 

政治的な事項を含んだ理由に松島宮は思わず溜め息を吐きながら言った。

 

 

 

1500頃 滝崎の執務室

 

 

 

「ふーん、じゃあ、ボク達の出番は当分ないのか」

 

 

「そうなるっぽい」

 

 

「まあ、太平洋なら好き勝手出来るが…地中海だからね」

時雨、夕立の言葉に滝崎は溜め息を吐きながら答える。

なお、2人の他に響、雪風も居るので、合計4人が滝崎の執務室に来ていた。

 

 

「ですが、副官。そんなノンビリとしてていいんですか?」

 

 

「そう言われてもな…大人の事情が絡んでるから、余り動けないの」

 

そう言いながら、滝崎は4人の前のテーブルにお菓子とジュースを並べていく。

すると、4人から歓喜の声が挙がる。

 

 

「やっぱり、響の言った通りっぽ〜い」

 

 

「ホントだね…お菓子が色々だ」

 

 

「ハラッショー、これは凄い」

 

 

「副官、お菓子がいっぱいですね!」

 

テーブルにはクッキー、ポテトチップス、大福、羊羮、紅葉饅頭などが並んでいた。

 

 

「なんか知らんが、増加食って事で勝手に本土から送られてくるんでね……食べようにも量が多すぎてたべれないの。あぁ、紅葉饅頭とかは親が送ってきた物だ…段ボール箱1ダースでな」

 

うんざり気に言う滝崎に対し、4人はさっそく各々に袋や包みを開けていく。

 

 

「でも、なんでそんな大量に送ってきたんだろう?」

 

 

「外国に居るから、接待用だろう……いや、多すぎるし、そんな頻繁に接待しないよ」

 

紅葉饅頭の包みを開ける時雨の言葉に滝崎が答える。

 

 

「なにこれ!? 美味しいっぽい!」

 

 

「まさか、こんなチョコレートを食べる事になるとは…」

 

 

「副官! このお煎餅美味しいです!」

 

 

「夕立、それピザポテト。響、それはブラックサンダーチョコ。雪風、君はお握り煎餅か…まあ、喜んでくれるなら、いいけど」

 

美味しいと言う菓子の名前を言う滝崎……だが、密かに口は微笑んでいる。

 

 

「…あっ、そうだ。いくら美味しいからって食べ過ぎるなよ。間宮や鳳翔さんの夕食を残したら、大変な事になるぞ」

そう言って釘を刺しておくのを忘れない。

無論、それは事実であるのだが…。

 

 

 

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