転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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フランス関連話なのに、何故か色々と混ざってしまってる……なんでだ?


28 フランス娘来航

4日後……マルタ島鎮守府 提督執務室

 

 

 

「本日来航するフランス海軍の引き受け人に関するフランス海軍と政府からの資料だってさ」

 

 

そう言って滝崎はホッチキスによって纏められた数枚の資料を執務机に置いた。

 

 

「うむ、すまない。どれどれ………ふむ、責任者はセレスティーヌ・シェロン少佐、歳は…我々と同じか……ん? 引き受けだけでなく、そのまま研修官としてここに残るのか」

 

資料をペラペラと捲り、流し読みしていた松島宮は研修の部分を見て言った。

 

 

「……多分、先の一件でスペイン海軍が参加してた事に対抗心でも出たんだろな」

「あら、フランスの鼻をあかせて嬉しいけど…冗談よ、滝崎」

 

カルメンの言葉に滝崎は咎める視線を送り、カルメンは笑いながら返す。

 

 

「まあ、しっかりとした1枚の命令書まで付属しているからな…そうなると、また賑やかになるのか」

 

 

「賑やか、でいいのかね…まあ、沈んでるよりマシか。となると、出迎えか、埠頭で何人か出さないといけないが…どうする?」

 

 

「ふむ…出迎えは夕張、島風、陸風、朝顔の4人。埠頭には扶桑、蒼龍、最上、バレアレス、五十鈴、雪風の5人でよいだろう。残りの者は大淀、明石、間宮、鳳翔、霧島の指揮下で清掃と整頓を実施してくれ」

「わかった、指示を出しておこう。あっ、もちろん、カルメンも参加だよ」

 

 

「わかってるわ。さて、着替えてこないとね」

 

 

 

4時間後………埠頭

 

 

 

「フランス海軍より艦娘引き受け、並びに研修官として参りました、艦長のセレスティーヌ・シェロン少佐です」

 

 

「日本帝国海軍地中海派遣艦隊マルタ島鎮守府司令松島宮孝子少将です。貴官の来航と着任を歓迎します」

 

着岸した艦艇より降りてきた艦長…セレスティーヌ・シェロン少佐を松島宮以下指定人員で出迎えた。

 

 

「それにしても…予想はしていたけど、男女比は圧倒的ね」

「艦娘が居るのですから、当然と言えば当然ですよ」

 

シェロンの問いに滝崎が答える。

 

 

「貴方がマルタ島鎮守府の男性副官…えっと、滝崎正義大佐かしら?」

 

 

「えぇ、そうよ。ちなみに私はスペイン海軍少佐バトル・カルメン少佐。あそこのバレアレスは私が艦長を務める乗艦よ」

 

 

「先の掃討作戦で活躍したイージス・フリゲートの艦長ね。これからは私達も加わるから、よろしくね」

 

友好的な挨拶を交わしつつ、何故だか互いに火花を散らす。

 

 

「2人共、そう言った対抗心を表に出さないでくれ。わからなくもないけど、今は正直に言って足りない物が多いんだからな」

 

そう言って滝崎は互いの対抗心を抑えていく。

実際、その言葉は真実であり、地中海周辺国の協力無くして、内海で手狭とは言え、深海棲艦の動きを封じるにはマルタ島鎮守府だけでどうこう出来る話では無い事のである。

 

 

「そうね…あぁ、紹介が遅れたわね。フォルバン型防空フリゲート三番艦コエトロゴンよ」

 

 

「フリゲート? ジェーン海軍年刊では駆逐艦の筈だが?」

 

 

「確か、フランス海軍では巡洋艦以下の駆逐艦クラスの表記は『フリゲート』だったね。ただ、ジェーン年刊とかは万国基準を採用しているから『駆逐艦』になってる」

 

松島宮の疑問に滝崎が答える。

「あら、さすが副官ね。こんな副官なら、大丈夫そうね」

 

 

「当たり前だ。滝崎はそんじょそこらにいる副官ではないからな」

 

 

「うーん…確かにそうだけど…何か引っ掛かる様な気が…」

 

少しモヤモヤしながら滝崎は呟いた。

 

 

 

昼食時……

 

 

 

「「「…………」」」

 

 

「間宮、鳳翔、今日の昼食は随分美味しそうだね」

 

出迎えの後、鎮守府内を見回り昼食となったのだが……出たのは大盛りのカレーだった。

 

「はい、オムライスかカツカレーかで意見が分かれたので、オムカツカレーになりました」

ニコニコと答える間宮に滝崎は頷き、松島宮、カルメン、シェロンは何故か互いに顔を見合わせる。

大盛りのオムカツカレー……ある意味、炭水化物の塊を目の前に置かれているだけに、女性陣3人は手を出し難い。

 

 

「ではでは、いただきます! あっ、鳳翔さん、皆にも食べる様に言って下さい。このままだと辛気臭いだけですから」

 

 

「わかりました」

 

鳳翔の答えを聞いて滝崎はスプーンでカツを切るとカレー、卵、ご飯をガッツリ掬い、口に放り込む。

 

 

「うん、旨い!」

 

そう言って滝崎はオムカツカレーを腹の中に収めていった。

 

更に3時間後……

 

 

「さてと……執務は終わらせてあるし、松島宮達は預けてあるし、どうしますかね?」

 

自分の執務室に戻った滝崎はそう呟く。

松島宮は大淀や霧島に預け、カルメンとシェロンは互いの国の艦娘に鈴谷、熊野をつけている。

故に滝崎は手空きとして、自分の執務室に居た。

 

 

「ふむ……まあ、日本から送られてきた本の整理をしてもいいけど…ちょっと待った方がいいかな?」

 

机に『転送品』と書かれた段ボール箱……中身はリミタリー系書籍……に視線を向けるが、直ぐに入り口へ向け直す。

すると、その言葉を示すかの様にドアがノックされた。

 

「どうぞ、来訪は歓迎だよ」

 

 

「失礼するよ」

 

入って来たのは響だった。

 

 

「響か、どうしたんだい?」

 

 

「副官にちょっと訊きたい事があってね」

 

 

「ふむ…あぁ、ちょっと待ってくれ。何か適当に見繕うから」

 

そう言って滝崎は茶器戸棚と小型冷蔵庫から茶菓子とジュースを取り出し、応接テーブルに並べる。

 

 

「…副官の私物?」

 

 

「うん、まあ、ストック品だけどね。それで、何かな?」

 

 

「では、改めて…副官、副官は何者なんだい?」

「……………えっ?」

 

響からの質問に滝崎は思わず呆気ない声を出す。

しかし、そこは滝崎、直ぐに普段の様子に戻す。

 

 

「いやいや、響。副官は副官だよ。それ以外にあるかな?」

 

 

「副官、不死鳥の名前は伊達ではないよ」

 

響の回答に滝崎は……アッサリと両手を挙げて降参した。

 

 

「質問になるけど、何時から?」

 

 

「違和感については前からあったよ。でも、2つの記憶を整理してみて、疑問を持ったのはこの数日間さ」

 

やっぱり、不死鳥の名前は伊達じゃあないな……とか考えつつ、滝崎は響を見る。

 

「まあ、あれだこれだはまた時間のある時に話すが…単刀直入に言えば、俺は『敗戦国日本からの転生者』だ。ちなみに、この事は松島宮はもちろん、いま居るなかでは扶桑も知ってる……こんな回答でいいかな?」

 

 

「副官らしい答えだね」

 

そう言うと響はコップにリンゴジュースを注ぎ、クッキーを1枚食べる。

 

 

「今度はウォッカを飲みたいな」

 

 

「未成年への飲酒は禁止だ。特に駆逐艦はね」

 

 

「冗談だよ。ロシアティーにしてほしいな」

 

 

「なら、ジャム用の小皿も必要だな。本場のロシアティーはジャムを入れずに舐めながら飲むと聞いた事があるし」

 

 

「なんだ、副官は知ってたのか」

 

 

「リミタリーの中には雑学も入ってるものなのだよ」

 

 

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