転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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フランスのお話です。
まあ、新キャラ込みです。

うちも早く加賀さん(戦艦)をお迎えして、喜びたいな…。


27 陸軍国海軍の意地

2日後 フランス トゥーロン軍港

 

 

トゥーロン軍港……フランスにおける地中海の主要拠点である。

深海棲艦が地中海で跋扈する現状でフランス海軍は反攻作戦『ハンニバル』で消耗した事もあり、活動は哨戒程度にとどまっていた。

そんな中でのマルタ島鎮守府の開設と先日のコルシカ・サルディーニャ島掃討戦の結果に地中海艦隊司令部内部の心中は穏やかではなかった。

そんな中……司令部の一室では……

 

 

「やれやれ、若い者の血気盛んたるわ、この老骨を困らせるの」

 

初老の海軍軍人が困り顔で呟いた。

 

 

「今回の掃討戦ですね。私の同僚もピリピリしています」

 

 

対面している士官が呆れた調子で言った。

 

 

「全くじゃ…まあ、彼らの言う事も解らぬではないが…マルタ島鎮守府に派遣されていたスペイン海軍艦艇を中心とする艦娘6名での掃討作戦で勝利を修めたと聞かされれば、誰でも心中穏やかではあるまい」

 

 

「日本とスペインに本来の仕事を取られた…彼らの主張に理解はしますが、艦娘を持たぬ我がフランス海軍が何を叫んでも負け犬の遠吠えです。相手にもされません」

 

 

「そうじゃの。そして、艦娘を一番多く保有しているのは日本……故に我が国を含めた地中海各国は日本へ派兵を求めたからの…今さら、何も言えんな」溜め息を吐く老軍人の目が細く鋭くなり、対面する若手士官を見た。

 

 

「そこにマルタ島鎮守府から日本と政府経由で打診があった。その一件で『フランス艦の艦娘を保護したから身柄を引き渡したい』とな」

 

 

「なるほど…俗に言う『ドロップ』でフランス初の艦娘を我々は手にする事が出来ると?」

 

 

「マルタ島鎮守府から…と聞いて騒ぐ者もおるかもしれんが、それはどうでもよい。ただ…問題は誰を行かせるか、だ」

 

 

「確かに……下手な人間を送って国際問題にでもなれば大事ですからね」

 

 

「そうじゃ…上は儂に選択を一任すると言ってな。そこで決まったのが……セレスティーヌ・シェロン少佐、君じゃよ」

 

 

「………私ですか?」

 

 

「そうじゃ。向こうの提督は女性皇族。スペインは名門貴族家のご令嬢、ならば、それに並ぶ君を送れば対等だ」

 

 

「ですが…叔父様も御存知の通り、我が家はナポレオン陛下に戦功を評価されての貴族拝命が始まり。対等かと問われると…」

 

 

「それでよい。御家の事は上へのご機嫌とり。それに君にはマルタ島に留まってもらう」

 

 

「スペインの様に艦娘の運用ノウハウを学んでこい…叔父様の意図はそこですか?」

 

 

「艦娘だけあっても、今の我々には扱いきれん。なら、慣れた日本に学ぶのが定石。上もプライドがあって、表には出さんが、そう思っとるよ」

 

 

 

「……わかりました。そのお役目、慎んで拝命致します。」

 

 

「うむ…それとこれも上からの指示じゃが、乗艦は君のフォルバン級じゃ。スペインがイージスフリゲートを出したなら、と言って対抗心を露にしたからの」

 

 

「わかりました」

 

目の前にいる叔父様同様に呆れた顔をしてシェロンは返事をした。

 

 

 

 

その頃……マルタ島鎮守府

 

 

「うむ……予想はしていたが……なんともな…」

 

失礼とは解りつつも、滝崎は苦い顔でそう呟いた。

彼の前には保護したフランス艦娘の軽巡エミール・ベルタン、駆逐艦アルバトロス、そして……

 

「え、えっと…すみません…搭載機も少ない足遅い戦艦改装空母で…」

 

 

半棲半艦で保護され、浄化が完了したフランス唯一の正規空母ベルアン。

 

 

「……うーむ…まあ、仕方あるまい……使い勝手が難しい事も含めて…あっ」

 

 

「…………(泣)」

 

……松島宮の悪意の無い一言が仇になっていた。

 

 

「止めを刺してどうする……ゴホン、君たちの身柄についてはフランス海軍に引き渡す事になってるから、向こうからの返答と身請け引き受け人が来るまではユッタリと過ごしてくれて構わない。必要な物があったら、声を掛けてくれ」

 

 

そう言った時、ノックと共にドアが開き、雪風が入ってきた。

 

 

「司令、副官、お話は終わりましたか?」

 

 

「雪風か。あぁ、長話の類いではないからな。いま終わったところだ」

 

 

「では、皆さんを連れて行きますね!」

 

そう言って雪風は3人の背中を押しながら出て行った。

 

 

「……雪風が嬉しそうに連れ出したな」

 

 

「まあ、駆逐艦のアルバトロスと仲良くなったそうだ」

 

 

「ほう、そうか」

 

 

「ちなみに、史実でアルバトロスは自分を除く姉妹艦を全て失っている」

 

 

「ふむ…………………なに!?」

 

 

「フランスの雪風・響ポジション、と言うべきかな……本人はどう思ってるかは解らないが」

 

そう言うと滝崎は報告書に目を移す。

 

 

「にしても、先の一件での『敵残存艦の原因不明な撃沈』と『敵一個艦隊不自然な全滅』はエミール・ベルタンが逃げながら散布した機雷って…危ないな」

 

 

「う、うむ、そうだな…ところで滝崎、実はだな…」

 

 

「ん、なんだ、松島宮?」

 

逃げながら散布した機雷を『そうだな』で済ました松島宮が滝崎に何か言う為に話を切った時……ノックと共に五月雨が入ってきた。

 

 

「提督、響ちゃんとの訓練航海が終わりました」

「う、うむ、ご苦労様」

 

 

「……なるほど、で、いつ建造、いつ完成?」

 

 

カタカタ震える松島宮の横で笑顔…の筈なのに目が笑っていない滝崎が訊いた。

 

 

「け、今朝、建造の直ぐ後に完成だ…ほ、本当だぞ!?」

 

 

「逆算すると、調査報告を纏めてる時か……まあ、仕方ないけどさ…これで大量消費だったら、ややこしいよ」

 

……当事者である響をそっち退けで話を続ける2人に苦笑いを浮かべる五月雨とクールな表情を変えない響だった。

 

 

 

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