転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

25 / 131
いよいよ、地中海安定化への第一歩を踏み出すマルタ島鎮守府です。


25 掃討任務 前編

暫くして……バレアレス艦橋

 

 

「水上レーダーに反応6…敵の深海棲艦の艦隊です!」

 

レーダー担当士官の報告にカルメンは頷くと素早くマイクを掴む。

 

 

「対艦ミサイル準備。レキシントン、祥鳳は偵察機と攻撃隊を発進。残りは砲雷撃戦用意」

 

 

『こちら、レキシントン。偵察機は私が飛ばす。祥鳳は攻撃隊に専念して』

 

 

『わかりました。偵察機お願いします』

 

カルメンの指示にレキシントンと祥鳳の会話が入り、レキシントンがウェンチェスタライフルを構える。

撃ち出された弾丸は途中でその姿をSBDドーントレスに変え、敵艦隊へと飛んでいく。

そして、ドーントレスが敵艦隊に接触した瞬間、敵艦隊の詳細が判明した。

 

 

「重巡1、軽巡2、駆逐艦3…快速部隊のようですね」

 

 

「と、言う事はあの索敵機は別艦隊から?」

 

レーダー担当士官の報告に航海長が意見の述べる。

 

 

「そう考えた方が妥当ね。攻撃は…レキシントンと祥鳳も攻撃隊を発進させてるわね」

 

祥鳳は弓、レキシントンはウェンチェスタライフルで次々と艦載機を発進させていく。

先に祥鳳の攻撃隊が発進を終え、敵艦隊へ向かっていく。

それに続いてレキシントンの攻撃隊が向かっていく……だが、祥鳳隊に比べるとレキシントン隊は遅い。

「レキシントンの攻撃隊が更に離されていきますね」

 

 

「仕方ないわ。なにせ、巡航スピードは日本艦載機の方が速い。その上、アメリカにはデバステターがいるわけだしね」

 

 

「あぁ、そう言う理由ですか」

 

副長の疑問にカルメンが答え、航海長は納得した。

 

 

 

祥鳳・レキシントンの攻撃隊による集中攻撃により、敵快速部隊は重巡を残し壊滅、重巡も航空攻撃により大破していた。

止めはバレアレスより発射された対艦ミサイルが重巡に命中、敵艦隊を全滅させた。

 

 

 

敵艦隊撃滅後、暫くして……バレアレス艦橋

 

「対空レーダーに反応! 9時の方向より反応多数! IFFに反応なし! 敵編隊です!」

 

 

「いよいよ、本格的な航空攻撃の様ですな」

 

レーダー担当士官の報告に副長が呟いた。

 

 

「でも、数が少なくありませんか? ヲ級ならもっと来る筈なのに」

 

 

「多分、軽空母中心の艦隊ね。それなら数の少なさも頷けるわ」

 

 

航海長の疑問にカルメンが答える。

まあ、実際に同規模の敵艦隊編成の攻撃を見ていたからなのだが。

 

 

「戦訓を交えた対空戦闘…何処まで通じますかな?」

 

 

「それは私達次第でしょう。総員対空戦闘用意!」

 

 

 

敵攻撃隊飛来に祥鳳、レキシントンの戦闘機隊が迎撃を開始した。

ただ、その迎撃方法は何時もと少し違っていた。

祥鳳の零戦隊が先に仕掛け、数機の爆撃機・攻撃機を落とすと攻撃隊に付いていた制空隊が零戦隊に突っ掛かった。

対し、零戦隊は制空隊を誘い出し攻撃隊から引き離す。

これで攻撃隊には僅かな直衛隊を残すのみ、となったところでレキシントンのF4F隊が襲い掛る。

僅かな直衛機を瞬殺したF4F隊は次の瞬間には攻撃隊に襲い掛かった。

魚雷を抱えて動きの鈍い雷撃機は的に、爆弾を抱える急降下爆撃機は急降下で逃走するがF6Fと共に『グラマン鉄工所』と呼ばれた頑丈なF4Fは執拗に追尾し、攻撃隊を撃滅していった。

 

 

2時間後……バレアレス艦橋

 

 

 

「祥鳳・レキシントン攻撃隊より入電…攻撃成功です! 軽空母2、重巡1、駆逐艦1を撃沈! 残りは軽巡と駆逐艦のみです!」

 

敵攻撃隊を撃滅し、飛来前に飛ばした索敵機が発見した敵艦隊へオペレーターの報告にカルメン以下バレアレスの面々は頷いた。

 

 

「ここは一気に叩きますか?」

 

 

「掃討が今回の任務だから、第二次攻撃隊を…」

 

 

「た、大変です! 接触を続けていた祥鳳の艦攻より報告…敵残存艦艇、突然立ち上がった水柱と共に轟沈しました!」

 

 

「「「…………えっ!?」」」

突然の報告にカルメン、副長、航海長の3人は間抜けな声を出しながら互いの顔を見る。

 

 

「……事故でしょうか?」

 

 

「深海棲艦が事故をおこすのか? しかも、同時に?」

 

 

「後は潜水艦だけど…展開の報告は受けてないし…そもそも、潜水艦は艦娘以外は動きが鈍いし…」

 

……結局、結論は出ず、棚上げになった。

 

 

 

暫くして……バレアレス艦橋

 

 

 

「あっ…雨が降ってきましたね」

 

外を見ていた航海長が気付いて声をあげた。

 

 

「ホントだな…降るとは思っていましたが、これでは奴らも航空機は出せませんな」

「こっちも似た様な状況だしね。副長、警戒を厳に維持しつつ、このまま進みましょう。それと艦娘も一度艦内へ…まだ、戦うだろうから、少しでも休ませないとね」

 

 

「わかりました。主計科に言って、お嬢さん達が喜びそうな物を揃えます」

 

そう言って艦内電話を取った副長の横でカルメンはインカムに向かって指示を出す。

 

 

「バレアレス、皆と一緒に一度艦内へ戻ってきて」

 

 

『カルメンですか? わかりました、皆と一緒にバレアレスに戻ります』

 

その返事を受けてカルメンは艦長席に背中を預ける。

 

 

「ふう……バレアレスを率いてた時より疲労が増えてる気がするわ」

「まあ、人数は6倍だからねえ。しかも、状況が違うし」

 

カルメンの呟きに航海長が答えた。

 

 

「そうね……はぁ、やっぱり、一筋縄で…」

 

 

「艦長! 前方を見て下さい!」

 

カルメンの言葉を遮ったのは艦内電話を戻して前方監視を行っていた副長だった。

そう言われ、慌て双眼鏡を覗くカルメン。

次の瞬間、あまりの突然の光景に唖然とする。

 

 

「なにが…おきたんだ…これは!?」

 

……目の前に広がる深海棲艦の残骸を見て航海長は思わず叫んだ。

 

 

 

次号へ




ご意見ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。