全体的描写に欠けてるな……。
23 進路を西へ!
翌日 マルタ島鎮守府 イベントホール
「では、これより第一回マルタ島鎮守府全体会議を始める」
大宴会をやった翌日、その宴会会場で全艦娘が参加した全体会議が滝崎の第一声で始まった。
「先の戦闘でマルタ島周辺安定化が完了した。これに伴い、今後のマルタ島鎮守府の方針を決定したい。滝崎、方針の説明を」
松島宮がそう言って退くと滝崎が檀上に上がる。
「皆も知っている通り、マルタ島はイタリア半島の下にあり、地中海のほぼ真ん中に位置している。よって、我々には2つの選択肢が出された」
そう言って滝崎は降りてきたスクリーンに地中海の地図を出して説明を始める。
「第一案は東進案だ。トルコ沿岸などを確保し、後にエジプト沿岸を確保、スエズ運河を獲り、日本との補給線を構成する。これが東進案だ」
スクリーンの地図上に現れた矢印がトルコに向かって伸び、次に折れてエジプトとスエズ運河に伸びて止まる。
「第二案は西進案。フランス沿岸とアフリカ北西部沿岸を確保し、最終的にスペインとジブラルタル海峡を確保し、安定化を狙う…これが西進案だ」
新たにマルタ島から西に矢印が伸び、フランス沿岸を経由し、スペインとジブラルタル海峡で止まる。
「以上の2案だ。これは鎮守府の今後にも関わる事なので、こうして皆の意見を聞いて決めたい…忌憚の無い意見を述べてほしい」
滝崎の言葉に忽ちイベントホール内が騒がしくなる。
まあ、当然ではあるが。
「副官、意見具申、よろしいでしょうか?」
「皆の意見を聞いているから、別段問題はないよ、霧島」
手を挙げた霧島に滝崎はそう言うと、霧島は意見を述べる。
「私は東進案を支持します」
「理由は?」
「副官が先程申された通りです。いま、この鎮守府に必要な食料を含めた物品はシベリア鉄道を使ってイタリアを経由し、運ばれてくるものです。それを考えればいち早く日本からの補給線を確立し、そちらの負担を減らすべきだと考えます」
「まあ、確かに霧島の言うとおりだな」
話を聞いていた松島宮もこれを肯定する。
そして、霧島の意見で東進案が決定したと思われたが……。
「副官、質問いいですか?」
「変な煽り記事を書かないならいいぞ。パパラッチ青葉」
「パパラッチは余計です! それで、質問の件ですが…」
いや、続けるのかよ、と皆が心中で青葉にツッコミを入れた時、青葉は質問した。
「副官の腹の内を教えて下さい」
「……腹の内?」
「ダメですよ〜、副官。副官個人の中では決めてるんでしょう? それも言ってもらわないと、不公平ですよ〜」
一斉に滝崎の方に顔を向ける面々を見ながら滝崎は苦笑いを浮かべながら心中で呟いた……さすが青葉、据え恐ろしいと言うべきか…と。
「……そうだな…俺の意見を言おう。西進案だ」
滝崎の発言にイベントホール内は再び騒がしくなる。
「みんな、静かに。滝崎の意見も聞かねばな」
事情を知っている松島宮の言葉に面々は静かになる。
「確かに東進案は霧島の言った通りなんだが……実は厄介な事に、政治的問題がまとわりついてくるんだ」
「政治的問題ですか…具体的には?」
メモを取りながら先を急かす青葉。
「政治的…と言うか外交的と言うか…まあ、理由を話せばギリシャ政府が支援を要請していてね…詳細は避けるが、トルコとの関係もあるから、今は余り関わりたく無いんだよ」
「ありゃりゃ…それは困った事で」
「あぁ…まったく、最前線に政治や外交問題を持ってくるな、と言いたいが…だが、西進案も悪くない。地中海西部を確保すれば、フランス、スペインは後ろを気にする事もなく、大西洋に集中出来る様になる。これは我々にも利する事だ」
「つまり、政治的・外交的理由で東進案は採用したくはないが…やはり、戦うのは皆だからな。滝崎もそれを思っての事だ。許してくれ」
そう言って松島宮は第三者の様に言った……まあ、間違いではないが…。
「はぁ……揃いも揃って、スッキリしない連中ね」
そう言ったのは椅子に座らず壁にもたれ掛かっていたレキシントンだった。
「副官が政治のゴタゴタに巻き込まれるのを避けたいから、西進案にしよう、って言いたいんでしょう? なら、別段問題ないでしょう。なにせ、大戦を勝利に導いた逸材なんだし」
「(やれやれ、また皆の気に触る事を…)……それは過大評価だよ。だが、さっきも言った通り、要らん争いに皆を巻き込みたくないのは事実だ。その事も考慮して決めてほしい」
暫くして………
「ありがとう、レキシントン」
西進案に決まり、解散となった後、滝崎は1人で出ようとするレキシントンに礼を述べる。
「別に…要らない事を言えば、あとあと疑心暗鬼になってくれればいいと思っただけよ」
「……それは照れ隠し?」
「……あなた、本当に何時か消してやるわ」
そう言うとレキシントンは自分の部屋に戻っていった。
「……あの硬い殻は簡単に破れないか……なかなか難しいな」
「レキシントンの事か? 当たり前だろう、どっちを向いても撃沈されておるのだからな」
滝崎の呟きに松島宮が入ってきた。
「あはは、そうだね。でもさ、見捨てる訳にはいかないでしょう?」
「当然だ。貴重な戦力で仲間だからな」
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