転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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では、マルタ島鎮守府の初陣てなります。


2 初陣

マルタ島鎮守府

 

 

 

「えっ!? 朝顔さんと提督達は知り合いなんですか!?」

 

 

「えぇ、前世からの付き合い、と言う物になるのかしらね?」

 

 

「まあ、初陣を飾った乗艦は朝顔だったからね」

 

 

「朝顔での艦長経験は艦隊指揮の基本になったからな」

 

廊下を歩きながら昔話に華を咲かせる3人と五月雨。

なにせ、当事者は朝顔、松島宮、滝崎であり、秘書官ながら初顔合わせの五月雨では話に付いていく事だけで精一杯だった。

 

 

「まあ、形は違えどまた艦長達…いや、提督達と戦えて嬉しいね」

 

「いや、朝顔は『艦長』で良い。今さら他人行儀でいられても困るしな」

 

 

「りょうか〜い。さて、五月雨ちゃん。さっそく出撃しましょう!」

 

 

「えっ…ひゃ〜〜!!」

 

五月雨の腕を掴んだ朝顔はその駆逐艦のスピードを見せるかの様に廊下を駆けていく。

いきなりの事に目を回し、悲鳴を挙げるが朝顔の疾走に掻き消される。

 

 

「あ〜…マルタ島周辺の哨戒でいいからな〜。遠くに行くなよ〜」

 

 

「わかりました〜」

 

 

滝崎の指示に朝顔から陽気な返事が返ってきた。

 

 

「……大丈夫なのか?」

「多分…大丈夫…だと思う」

 

そう言うのが滝崎には精一杯だった。

 

 

 

暫くして……マルタ島沿岸

 

 

滝崎の指示通り、マルタ島周辺の哨戒を実施する朝顔と五月雨。

本当なら五月雨が指揮官なのだが……今や立場上、古参である事と勢いで朝顔が先頭に居た。

 

 

「え、えーと…朝顔さん。地中海の方は…?」

 

 

「地中海? フィンランドの一件と大戦後期に輸送部隊護衛で何度か往復してるわよ。それが?」

 

 

「い、いえ…そうなんですか…あはは…」

 

なんだか、凄い艦娘が配属されたな〜、と思いつつ、マルタ島周辺を哨戒する。

そして、一周回り終えようとした時……

 

 

「4時の方向に駆逐艦イ級2。距離は1万」

 

 

「えぇ!? 朝顔さん、見えるんですか!?」

 

 

「あら、フィンランド湾の霧に比べれば全然よ。砲戦用意。優位な位置を取るわよ」

 

素早く優位な位置を取るべく速度を上げる朝顔。

五月雨も遅れまいと速度を上げ、朝顔に付いて行く。

イ級2隻も気付き、先制攻撃を開始、イ級からの砲撃が2人を止めようとする。

 

 

「きゃっ!」

 

 

「あら、ソ連軍並みのヒョロ弾ね!」

 

乱立する水柱に五月雨が腕で顔を庇う中、朝顔は余裕とばかりに水柱に向かって突入する。

「私は朝顔! 二等駆逐艦だからって嘗めないでよ!」

 

艤装の12㎝単装砲3門がイ級に向けられ、一斉に砲撃する。

自らが作った水柱群の中から飛んできた3発の12㎝砲弾の直撃弾を受けたイ級が大爆発をおこす。

隣で仲間のイ級が轟沈した事に気を取られるイ級。

再び朝顔の方を見た時……朝顔はイ級の真横に居た。

 

 

「ゼロ距離雷撃は十八番よ」

 

そう言って朝顔は魚雷をイ級に撃ち込んだ。

 

 

 

暫くして……マルタ島鎮守府 執務室

 

 

「やれやれ…朝顔が暴れて、五月雨はお疲れ様だな」

 

煤で汚れた顔で笑う朝顔とずぶ濡れになった五月雨を見て滝崎が労う。

 

 

「2人共、直ぐにお風呂に入ってきなさい。ホテルだから、居心地は良い筈よ」

 

 

「了解、艦長。入ってきま〜す」

 

そう言って朝顔は執務室を出てお風呂の方に走って行った。

しかし、五月雨は執務室に残った。

 

 

「どうしたんだ、五月雨? 風邪をひくぞ?」

 

 

「あ、あの…朝顔さんの事なんですけど…あれは提督達の戦い方なんですか?」

 

 

「ん? いや……実情が解らないと何もな…」

 

 

「えーと、実は…」

 

五月雨から戦闘経過を聞いて滝崎は笑いながら言った。

 

 

「あはは、あの時の松島宮にそっくりだな」

 

 

「そうか? まあ、至近距離雷撃を指示したのは私だが…ふむ…」

 

 

「大丈夫だよ、五月雨。まあ、最初は慣れないかもしれないけど、朝顔は良い奴だ。なにせ、提督と副官が乗っていた艦だからな」

 

 

「は、はい。わかりました」

 

 

「五月雨〜、お風呂はどうするの? 早く行くよ〜」

 

そう言って戻って来た朝顔が五月雨の手を掴み、再び廊下を疾走する。

そして、五月雨の困惑した悲鳴が聞こえた。

 

 

「……朝顔が元気なのはいいが、あれはちょっと五月雨が大変だな」

 

「あぁ…明日、明石と間宮が到着したら、相談してみるか。それと建造もしよう」

 

 

「何時までも2人って訳にはいかないけど…大丈夫かな?」

 

 

「どうにかはなるだろう。それより、間宮達の到着は明日だから、夕飯の準備をしないといけないぞ?」

 

 

「おいおい、俺と2人で作るのか? まあ、いいけど」

 

 

「私も女子だぞ。それに士官学校や中央勤務の時に散々やったのだからな」

 

 

「そうでした…じゃあ、2人の口にあう料理を作ろうか」

 

 

「そうだな」

 

そう言って2人は執務室から出て、調理場に向かった。

 

 

 

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