転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

17 / 131
どうなる、如月!?
そして、夕張達の運命は…?


17 緊急救援隊

如月視点

 

 

対空戦闘、と聞くと嫌な記憶もあって苦手なの。

一番の理由はウェークの事ね…でも、もう1つの記憶ではそれをくぐり抜けて戦争を生き残った訳だけど…。

 

 

「……今回は無理かな」

 

被弾中破し、それを目敏く見付けた敵機が複数でこっちに向かってくる。

回避しようにも機関は被弾による影響で出力低下と排煙効率低下で速度は出ない。

 

 

『如月ちゃん!!』

 

何時も一緒だった睦月ちゃんの声も無線越しに聞こえる。

ごめんね……また、お別れみたい…。

最期を覚悟し、目を閉じる。

暫くして、爆発と共に……頬に何か当たった。

 

「熱っ!?」

 

そこでハッと気付く、なんで死んだのなら『熱さ』と『痛さ』を感じたのか?

 

 

 

 

「……うそ…」

 

目の前の光景に夕張はついつい、その言葉を呟いてしまった。

何故なら、如月に殺到していた敵機は頭上から浴びせられた銃撃により、たちまち残骸へと変化してしまったからだ。

これを見て慌てて逃げようとする敵機を追撃し、次々に撃墜していく。

 

 

「でも、いったい…」

 

 

『夕張さん、無事ですか?』

 

その時、無線から鳳翔の声が聞こえてきた。

 

 

「鳳翔さん…まさか、鎮守府からの援軍ですか!?」

『えぇ、提督や副官は貴女達を見捨てる訳ないでしょう?』

 

 

「はい!」

 

もちろん、夕張は知っている…松島宮も滝崎も、只の付き合いではなかったのだから。

 

 

『夕張よ、どうやら、妾達を艦載機だけでは倒せぬと見て、敵が出てきた様じゃ!』

 

初春の報告に夕張は視線を初春の方に向ける。

すると、ヌ級2隻を中心とする艦隊が見えた。

 

 

『こちら、救援隊旗艦バレアレス。敵艦隊は此方に任せ、夕張さん達は輸送船団と共に退避して下さい』

 

 

「わかったわ、バレアレス。みんな、如月と輸送船団を守りつつ退避」

そう支持を出し、負傷した如月と共に鎮守府へ退避する夕張隊。

その際、救援のバレアレス隊と擦れ違った。

その時は敬礼をして擦れ違ったのだが……1つ気になった。

 

 

(……あんな子達が居たかしら?)

 

列中にいた数人が気になった。

 

 

 

救援隊

 

 

 

「敵艦隊捕捉。ヌ級2、軽巡、重巡、駆逐艦2です」

 

まるで空母ヲ級の様に杖を持ち、マントを羽織り…頭に黒い尖り帽子を被った艦娘が言った。

彼女は……空母神鷹の艦娘である神鷹だった。

 

 

「わかりました。神通さん、五月雨さん、突撃準備用意。鳳翔さん、神鷹さんと共にエアカバーをお願いします。シュペーさん、自慢の主砲、お願いします」

「「了解!」」

 

 

「わかりました」

 

 

「はい!」

 

 

「ヤー! 任せて!」

 

 

「では…突撃!」

 

バレアレスの指示に神通、五月雨がバレアレスを先頭に突撃し、鳳翔と神鷹からは追加の艦載機が出る。

そして、神鷹の偵察機から観測データを受け取った『両肩に身体とは不釣り合いな28㎝三連装砲を載せた』ドイツ艦娘……アドミラル・グラーフ・シュペーの砲身が仰角をあわせる。

 

 

「いくわよ…ファエル!!」

 

発射された6発の28㎝砲弾は深海棲艦達に死の旋律を奏でる。

そして、頭上からの砲弾に気付いた時、彼らの敗北は決定した。

暫くして……マルタ島鎮守府

 

 

 

『敵軽空母艦隊撃滅。夕張さん達と合流し、帰還します』

 

 

「わかった。鎮守府到着まで警戒を厳にしてくれ。以上、交信終わり」

 

そう言って滝崎は受話器を大淀に返した。

 

 

「被害は如月の中破か…危うく轟沈するところだったそうだが」

 

 

「だけど、バレアレス達が間に合ってよかった。それに滝崎の機転もきいたしね」

 

 

「機転…と言うのかな、あれは?」

 

 

「副官、あれを機転といわなかったら、何を機転と言うの?」

 

松島宮とカルメンの言葉に苦笑を浮かべ、本部要員として残った五十鈴にツッコミを入れられた滝崎。

滝崎が効かした機転(?)と言うのは神鷹とアドミラル・グラーフ・シュペーを救援隊に加えた事だった。

あの時、明石が滝崎に伝えたのは建造カプセルの修理・建造が完了し、神鷹が完成した事、そして、前回の戦闘で鈴谷達が収容した艦娘…アドミラル・グラーフ・シュペーが目を醒ました事だった。

その報告を受けた滝崎は素早く対応した……神鷹とシュペーを救援隊に加える事にした。

神鷹は防空空母であり、今回の様なエアカバーを中心とする任務には最適であり、シュペーはその砲力が活きると考え、バレアレス達の救援隊に配備したのである。

その結果は……今の通りだった。

 

 

「さて…今後の輸送船団護衛には直衛隊と間接隊の二個艦隊が必要だね」

 

「それに排他的経済水域奪取の予定も早めた方がいいな。今回の件を考えれば、少し懲らしめないといかんな」

 

拳をギュッと握った松島宮が言った。

 

 

「どうやら、方針は固まったみたいね」

 

 

「まあ、今回は危なかったからな。こう言った事に時間を掛けるのはよくないし」

 

カルメンの言葉に滝崎は頷きながら言った。

 

 

「よし! 先ずは駆逐艦の増強だな。駆逐艦3隻と…軽空母レシピで軽空母を狙おう!」

 

 

「ちょっと待て! なんでそうなるんだ!?」

 

松島宮の発言にカルメンと大淀、五十鈴が転け、滝崎のツッコミが入った。

 

 

「なんで提督って空気読めないのかしら?」

 

 

「まあまあ、面白くていいじゃない」

 

 

「そう言う問題でしょうか?」

 

そして、呆れながらそんな事を話す五十鈴、カルメン、大淀だった。

 

 

 

 

 

次号へ

 




ご意見ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。