転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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如月ファンの方にはアニメと被って不愉快になるかも……。


16 輸送船団護衛任務

工厰の建造カプセルが暴走するなんて事があった翌日の早朝、夕張率いる輸送船団護衛部隊は輸送船団の居るイタリアのタラントへと出発した。

そして………数時間後……マルタ島鎮守府提督執務室

 

 

 

「ふむ……今のところ、何もないな」

 

 

「あぁ、そうだね」

 

執務室には松島宮、滝崎、カルメン、大淀の4人が輸送船団の無事な到着を待っていた。

 

 

「まあ、聞くまでもないけど輸送船団の中身は?」

 

 

「ウチの鎮守府への補給とマルタ島への補給物資だ」

 

カルメンの質問に滝崎が答えた。

 

 

「なにも無ければいいんだがな」

 

 

 

「やめて下さい。フラグが立ちます」

 

 

松島宮の呟きに大淀がツッコミを入れる。

その次の瞬間、警報が鳴り響いた。

 

 

「なんだ!?」

 

 

「……鈴谷隊より打電! 『敵ヲ級を中心とする空母部隊、並びにタ級を含む打撃艦隊、水雷戦隊を瑞穂機が発見せり』です!」

 

 

松島宮の問いに大淀が通信機を見て答える。

 

 

「ほら、あんな事を言うから」

 

 

「さっそく、フラグ回収ね」

 

 

「カルメンまで言うのか…そんな事は後回しだ! 敵艦隊の位置は!?」

 

 

「スクリーンに投影します!」

 

備え付けのスクリーンにマルタ島と味方艦隊、敵艦隊の位置が映し出される。

 

 

「ほう…こそこそせずに正面から叩きに来たか…よほど、このマルタ島鎮守府の存在が無視出来なくなったらしいな」

 

 

「1ヶ月程でマルタ島領海まで奪われたら、そりゃあ無視も出来ないでしょう」

 

 

「それに、マルタ島は前から戦略的要地な訳だしね」

 

 

「まあ、そうだが…とにかく、わざわざ叩かれに来たのだから、迎撃せねばなるまい。待機の霧島隊、警戒の扶桑隊、偵察の鈴谷隊は合流し、敵艦隊を叩く様に指示を出そう」

 

「わかりました」

 

松島宮の言葉に大淀が反応し、通信を入れる。

ただ、その後ろで滝崎はシックリとこない、と言いたげにスクリーンを眺めていた。

 

 

 

2時間後……

 

 

 

「全部隊、あと30分で敵艦隊と接触します」

 

大淀の言う通り、合流した3隊は敵艦隊に向かっていた。

しかし、滝崎は余りにも単純過ぎる経過に疑問を抱いていた。

 

 

「ねえ、大淀。瑞穂の水偵は未だに敵艦隊との接触を続けているの?」

 

 

「はい。それがなにか?」

 

 

「えっ…ううん、何でも無い」

そう言ったカルメンも表情は「納得がいかない」と言っていた。

 

 

「空母ヲ級が居るのに何故、迎撃も受けずに接触を続けているのか解らない…君の疑問はそうだろう?」

 

 

「あら、やっぱり、滝崎にはわかったのね」

 

 

「あぁ、こっちも余りに経過が単純だから、怪しく思ってる。それにそもそも、今回の襲撃はおかしな点が多すぎる。なんでこれ見よがしに進撃する? もし、奇襲を狙うなら瑞穂機を撃墜し、克つ分散進撃にした方が成功確率は高い」

 

 

「……確かに滝崎の言う通りだな。じゃあ、あれが囮と過程するなら…」

 

松島宮の言葉の続きを遮ったのは大淀の報告だった。

 

「霧島隊より打電…大変です! 敵艦隊が反転しました!」

 

そう言われ3人はスクリーンに視線を移す。

すると報告通り、敵艦隊は次々に反転していた。

 

 

「どうやら、役目を果たしたと思い、気を抜いてしまい、芝居を潰してしまったな。反転するのなら、数発撃ってからでもよかった。その方が我々の注意を引けたのにな……さて、あれが囮なら、本命は何処だ滝崎?」

 

松島宮に聞かれて滝崎は顎に手を宛てて考える。

 

 

「艦隊なら、このまま交戦して、罠を展開すればいい。鎮守府なら…さっき言った通りだ。となると……あそこまで大戦力を動かすして陽動をする事なら…」

 

そう言って滝崎は視線をスクリーンに向ける。

スクリーンには反転する敵艦隊、そちらに向かっていた味方艦隊、鎮守府……その鎮守府から北側にある味方マーカーで視線が止まる。

 

 

「………まさか……畜生、しまった!! 奴らの本命は夕張達の輸送船団だ!!」

 

 

「……なるほど、輸送船団なら、少数戦力でも潰せるわ。それにマルタ島への補給も断てる…一石二鳥ね」

 

滝崎の言葉にカルメンが捕捉を入れる。

 

 

「大淀、夕張達に警戒を厳重せよ、と通達! それと、霧島達を反転させろ!」

 

 

「わかりました!」

 

 

「いや、無理だ。奴らめ、霧島達を近場から引き剥がす為に瑞穂機の接触を断たなかったんだ…今から反転させても間に合わない。現有戦力で輸送船団の救援に向かうしかない!」

 

 

「現有って…バレアレスと神通、五月雨、鳳翔の4人しか…」

 

 

カルメンの言葉に滝崎が首を横に振った。

 

 

「いや、充分だ。敵艦隊は彼処まで戦力を出したんだ。輸送船団襲撃に使う戦力は予め用意してある。それに輸送船団襲撃に戦艦は使わないだろう。多分、足の速い巡洋艦と…」

 

 

「大変です! 別の瑞穂機から連絡! 輸送船団への直航コース上に軽空母ヌ級2、重巡、軽巡、駆逐艦2の艦隊を発見と報告が…」

 

「軽空母2隻!?」

 

その報告は滝崎は予想の上をいっていた。

確かに重巡、軽巡と駆逐艦2を加えた高速巡航艦隊だった。

しかし、そこに航空戦力である軽空母ヌ級2隻を加えていた。

 

 

「ヌ級2隻は厳しいが…やむを得ないよ」

 

 

「わかった。残存部隊準備! 明石はドック準備!」

 

 

 

松島宮の号令に鎮守府内はにわかに忙しくなった。

明石や工厰、ドックの妖精が慌ただしく動き、また、バレアレス達出撃組も準備の為、各妖精達とブリーフィングを開いている。

そんな中を滝崎は速足でドックの準備状態を見るために駆けていく。

 

「あっ、副官! ちょっといい!?」

 

 

「明石か? すまない、今は後に…」

 

 

「いや、けっこう緊急事態」

 

明石の目が何かを語りそうにしていた。

 

 

「聞こう。但し、手短に」

 

 

「うん、実は……」

 

 

 

暫くして……輸送船団

 

 

 

「報告通り…来たわね」

 

空を睨み付ける夕張。

視線の先の空には鎮守府から報告のあった空母ヌ級からと思われる艦載機が黒点となってポツポツと現れた。

 

 

「全艦対空戦闘用意。大丈夫、提督や副官は私達を見捨てないわ。絶対に助けに来てくれる」

インカムに向かって戦闘開始の号令と共に景気付けを言う。

 

 

「(まあ、事実でも有るけど)……全艦対空戦闘始め!!」

 

夕張の号令の下、各艦は対空戦闘を開始する。

飛来した数は50機程、だが、輸送船団を護りながらの為、彼女達の行動を縛ってしまう。

 

 

『くっ、これが妾達だけなら楽なのだが』

 

 

『回避運動を出来ないのは難しいですね』

 

 

『これでは、張り切っていけません』

 

 

『硝煙で髪が傷んじゃう』

 

(……まあ、大丈夫か。でも、何時まで維持出来るか)

 

自らも対空戦闘を行いながら夕張も内心呟く。

エアカバーがなければどうなるかは自分達がよく知っている。

 

 

『えっ、きゃあ!?』

 

 

『如月ちゃん!?』

 

 

『こちら、初霜! 如月被弾!』

 

 

『夕張! 少数とは言え、維持は難しいぞ!』

 

 

「こちら夕張! 如月の状況は!?」

 

 

『こちら、如月…直撃により中破…です』

 

 

『こちら、初霜! 如月に向け敵機複数!』

 

初霜の報告に夕張は視線をそちらに向ける。

 

 

「チッ、この!!」

 

向けれるだけのありったけの火砲を如月に向かう敵機に向かって撃ちまくる。

しかし、全ては防げない。

 

 

『如月ちゃん!!』

 

睦月の悲痛な叫びが無線から響いた。

 

 

 

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