転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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まあ、今回のネタは日本では有名ではないネタなので……。


14 漁船団

その日の夜……滝崎の部屋(兼執務室)

 

 

 

「う〜〜む…まあ、この出費は仕方無いがな…」

 

説教を兼ねて聞き出した建造消費量に滝崎は溜め息を吐く。

4基フル使用で使った消費量はオール2000を越える程。

それで建造されたのは空母蒼龍、鳳翔、水母の瑞穂、軽巡の五十鈴の4人。

なお、五十鈴はガダルカナル戦時に第二機動艦隊の時に防空巡洋艦として秋月型を率いて途中参加したので見知っている仲だ。

 

 

「明日も建造するって言ってたしな…保有量に気を使わんといかんとは、頭が痛いよ」

 

再び溜め息を吐きつつ、滝崎はそれを記録書に記帳する。

これを記録しておかないと……後々大変な事になったりするからだ。

 

 

 

翌日早朝……埠頭

 

 

「ふぁ〜〜〜…眠いな」

 

未だ日も昇る前の時間に滝崎は欠伸をしながら埠頭に居た。

なぜこんな朝早くに居るのかと言うと……漁船団護衛の部隊出撃見送りの為だった。

 

 

「おはよ〜…って、副官!?」

 

 

「あぁ、夕張か。おはよふぁ〜〜」

 

 

「まさか、出撃の見送りにきたの?」

 

 

「あぁ、今日は早いって聞いてたからな…しかも、漁船団が普段より遠海に出るって聞いたからな…あぁ、見送ったら二度寝するから大丈夫」

「そう言う問題なのかな?」

 

 

「まあ、とりあえずは気にしない、気にしない」

 

なお、今回の漁船団護衛は旗艦夕張に朝顔と時雨の3人。

 

 

「おはよう、副長、夕張」

 

 

「おはよう、副官、夕張」

 

そんな事を話している間に朝顔と時雨がやって来た。

 

 

「来たわね。じゃあ、副官。出撃します」

 

 

「あぁ、3人共に気を付けてな」

 

滝崎の言葉に3人は頷くと埠頭の滑り台から海に入り、出撃する。

その背中を滝崎は暫く見守っていた。

 

 

 

その後、3人は何事もなく漁船団と合流、そのまま漁獲海域までエスコートする事になった。

 

 

 

午前10時頃……滝崎の部屋

 

 

「……遠海漁業か」

 

夕張達が居るであろう海域に視線を向ける滝崎。

今回は先の戦闘で奪還したマルタ島領海での漁業活動と言うことで3隻の漁船に夕張達を付けていた。

今回は試験的と言う事で漁船は3隻しか出していない。

ゆえに護衛も夕張達3隻なのだが……。

 

 

「早く駆逐艦を増やしてやりたいな。そうしないと、ロクに休めなくなってしまうしな」

 

そう呟いて執務仕事の続きをしようとした時、ドアがノックされた。

 

 

「はい、どうぞ」

 

 

「失礼します。本日より、このマルタ島鎮守府に着任しました、霧島以下4名です」

 

 

「う、うむ、わざわざご苦労様だね」

 

霧島を先頭に駆逐艦の夕立、綾波、潮が入って来た。

 

 

(おいおいおい、3人はソロモン海戦でアメリカを泣かした武道派だぞ…潮は終戦まで生き残ってるし……まあ、世界が違うけど)

 

そんなツッコミを心中で入れつつ、滝崎は訊いた。

 

 

「ちなみに建造は何時されたのかな?」

 

 

「先程完了したので、先ずは提督の方にご挨拶を…」

 

 

「そうですか……また、勝手にやったな」

 

後で訊きに行かないとな……と滝崎は密かに思った。

 

 

 

その頃……漁船団では…

 

 

 

「朝顔、時雨、周囲に異常は?」

 

 

『こちら、朝顔。周囲は海中を含めて異常無し』

 

 

『時雨、こちらも異常なし』

 

漁船団に夕張が居て、その漁船団の周囲を朝顔と時雨が警戒していた。

今のところ、何も異常はない。

 

 

「……暇ね」

 

いくら奪還が完了した海域とは言え、何がおこるかわからないからこそ派遣された護衛なのだが……何もない。

故に夕張は視線を海上から空に向ける。

空は雲ひとつない、陽気な空模様だ。

 

 

「お嬢ちゃん達、ありがとうな」

その時、横合いから今回の漁船団のリーダー格の船長から声を掛けられた。

 

 

「いえ、これも任務ですから」

 

 

「あっはっは、あいつらが出てきてにっちもさっちもいかなかったが、お嬢ちゃん達のお陰でまた漁が出来るよ」

 

 

「そうそう、母ちゃんに飯を食わさぬえとな」

 

 

「ウチは育ち盛りのガキが居るしな」

 

 

「おいおい、こっちはお腹の中にいるんだぞ」

 

 

「自分、結婚するんですけど…」

 

 

「「「「なに!? 聞いてないぞ!?」」」」

 

最後の若い漁師の言葉に船長達が絡み出す。

海の真ん中での日常風景についつい微笑む夕張。

 

 

「ん…おーい! 誰か来てくれ!」

 

そんな時、漁船の1隻から声が響いた。

 

 

 

数時間後……マルタ島鎮守府

 

 

 

「魚と一緒に網の中に入ってた…ね」

 

 

「間抜け……と言うべきなのか?」

 

帰還した夕張達の報告を受けた2人の第一声がこれだった。

夕張曰く、網を引き揚げたら艦娘が魚と一緒に入っていた……だそうな。

 

 

「で…なんで、夕張と朝顔はそんなになつかれてるんだ?」

 

そこには夕張と朝顔の間に入っている艦娘がいた。

(格好からして…潜水艦だな)

 

 

(あぁ、しかも、海外艦だな)

 

だからこそ、余計にこの艦娘が夕張と朝顔になついているのかが解らない。

 

 

「そ、それは…」

 

 

「私達に聞かれても…」

 

夕張達も知らないと言い……更に謎が深まる。

 

 

「ふむ…えーと、君の名前は?」

 

 

「Ⅶ型UボートのU954です! 夕張さんと朝顔さんには乗組員がお世話になりました!」

 

 

「乗組員がお世話に…?」

 

彼女…U954の言葉に滝崎は引っ掛かった。

そして、ある事を思い出す。

 

 

「沈没場所は大西洋側のノルウェー沖で、乗員にペータ・ディーニッツが居たと思うんだが?」

 

 

「はい、その通りです!」

 

大西洋側のノルウェー沖、と聞いて夕張と朝顔の表情が変わる。

そして、松島宮もペータ・ディーニッツと聞いてハッとした。

 

 

「まさか、ノルウェー沖で夕張達が救援に向かった潜水艦が…」

 

 

「だろうね。U954、君は我がマルタ島鎮守府初の潜水艦だ。君の着任を歓迎する。あぁ、僕は副官の…痛っ!?」

 

いきなり背後から頭へ拳骨が直撃する。

 

 

「馬鹿者、人の役目を取りすぎだ。私がこのマルタ島鎮守府提督の松島宮少将だ。そして、長々と喋っていたのは副官の滝崎大佐だ。まあ、先程言ったとおり、着任を歓迎するぞ」

 

 

 

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