転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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明けましておめでとうございます。
旧年はお世話になりました。
新年もよろしくお願いします。

さて、高塚達の元にやって来たのは…。


126 非正面戦 4

翌日 マルタ島鎮守府 滝崎執務室

 

 

 

「失礼します。高塚殿、お客様であります」

 

 

「お客様? 新規事業者か?」

 

滝崎と共に今後の打ち合わせをしていた高塚はあきつ丸の言葉にそう反応した。

 

 

「いえ、その、どちらかと言いますと軍人の…支那系の女性でありまして…」

 

 

「支那系? 支那共産党軍改め支那人民解放軍に直接な知り合いはいないんだがな…少し待たせてくれ。そっちに行く」

 

 

「わかりました」

 

そう言ってあきつ丸が退出した後、高塚は溜め息を吐く。

 

 

「支那が接触とは、明日は嵐だな」

 

 

「あぁ、嵐で済むならいいけどな…さて、お客様を待たす訳にはいかないな」

 

 

「あぁ、まったくだ」

 

そう言って高塚と滝崎は立ち上がった。

 

 

 

しばらくして 高塚執務室

 

 

「はじめまして、北方公司の夏春麗(カ・シュンレイ)です」

 

 

「はじめまして。マルタ鎮守府憲兵の高塚健治です(北方公司…なるほどな)」

 

 

「どうも、マルタ鎮守府副官の滝崎正義です…ところで高塚、北方公司ってなんだ?」

 

 

「ん、あぁ、北方公司…通称コンスーって言うらしいが、簡単に言えば中華人民共和国解放軍直下のダミー会社さ。主にアフリカや中東を含めた第3世界に武器売買してるが、なんせ、チャイナマフィアとの繋がりもあるから、武器流出やら、麻薬絡みやら、色々とあるんだそうだ」

 

 

「うふふ、さすが、伊達に憲兵はしてないわね、高塚少佐」

 

 

「と言っても、そこら辺は漫画で仕入れた話だ。と言うより、なんで大使館の武官では無く、解放軍から監察官…チェッカーとして派遣された様な人間がわざわざ公司の身分を使ってここに来たのか御説明願いたい」

 

明らかな警戒心を曝け出しつつ、高塚は夏春麗に話を促す。

 

 

「……解放軍情報部も腕が落ちたみたいね」

 

 

「ただの一介の下っ端まで把握してる訳ないと思うがな」

 

 

「『対馬海峡迎撃戦』と『岡山市武装員占拠事件』があるまでまったくノーマークだったのは仕方ないにしても、士官へ任官後から今までの貴方の評価は『狗だから鼻が効く』程度なのがね」

 

 

「『死神』なんて渾名を勝手に付けてるぐらいだ。外の人間が資料上にどんな評価を下そうが知ったこっちゃない」

 

 

「あの〜、話を前に進めない?」

 

堂々巡りの様な状況に滝崎は話を本筋に戻す。

 

 

「じゃあ…いま、そちらが噛んでいる案件に公司も関係していて、北方公司の名前を使うのはそれが政府と軍が許可しているかよ」

 

 

「ふむ…公司が関係しているって事は、商売に失敗して、マフィア同士の抗争でも始めたのか? まあ、イタリアを含めたマフィア勢力が減衰すれば、チャイナマフィアの勢力も延ばせるし、公司はある意味歓迎だろうな。政府と人民解放軍も」

 

 

「高塚、嫌味が隠せない程、含まれまくってるぞ」

 

 

「じゃあ、滝崎。お前に任す」

 

 

「はぁ…やれやれ……それで、それを持ち出すと言う事は何かしらの情報があり、交換条件でその情報を話す用意がある、と」

 

 

「えぇ、そう言う事よ」

 

 

「ふむ…情報が何か、そして、交換条件次第ですが…いいよな、高塚?」

 

 

「任すよ」

 

勝手にしやがれ風に丸投げした高塚に内心苦笑いを浮かべつつ、滝崎は話を進めようとした時……

 

 

「失礼する! ここに滝崎大佐と高塚軍団長が居られると聞いて参った!」

 

……豪快な一言と共に腰に帯刀した旧帝国陸軍将校そのままの艦娘が現れた。

 

 

「あぁ、高塚は俺、滝崎は隣の海軍将校な」

 

 

「おぉ! 軍団長自らとは恐れいる! 我が名は神州丸。我がいる限り、上陸戦はお任せ下され!」

 

 

「…あー! 世界初の揚陸艦兼指揮統制艦の!? おい、滝崎、お前、またエライのを引き出したな!」

 

 

「つっても、ニューカレドニア攻略の時に同行した程度なんだが…」

 

 

「何を言われるか、あの時の援護無くば短期の制圧は不可能。第二機動艦隊のお陰である」

 

そう言って神州丸は春麗に視線を向けマジマジと観察する。

 

 

「ふむ……支那の娘、生まれは…香港か、上海か…あの地域の者は海の近くに住むのと居留地な為か、知的ではあったが…さて、お主はどうかな?」

 

『悪代官の値踏みかよ』とツッコミを入れたいのを堪えて滝崎と高塚は苦笑いを浮かべて見ていた。

 

 

「……あの、なにか?」

 

 

「いや、コレは我の邪推だが、貴女は日本に来ていたのではないか? 多分、複数度、その中の1度は留学かなにかの長期滞在…ふむふむ、昔の支那留学生と似た様な感じだな」

 

 

「あー、すまん、神州丸。いま大事な話の途中でな…」

 

 

「あっ、これはいかん。やれやれ、悪い癖が出てしまった。では、軍団長達への挨拶は後にして、間宮で時間を潰すとするか」

 

高塚にそう言われた神州丸はそう言って脱帽し、一礼すると退室した。

 

 

「……軍団長って君の事だよな。やれやれ、また、エラいのが来たな」

 

 

「へいへい、ちゃんと管理しますよ…で、春麗さん、話の続きを」

 

 

なんだかんだで漸く戻った。

 

 

「…近親者を拐われた」

 

 

「近親者…家族を?」

 

 

「えぇ、と言っても母親の姉の子供…姪よ。で、その姪を助ける為に公司とマフィアが交渉したけどはぐらかされて、軍も人を出して救出作戦もやった。けど、失敗したわ」

 

 

「軍まで動いて失敗とはこれ如何に?」

 

 

「滝崎、確かにそこは俺も気になるがそこじゃあない。あの自国民を平気で見捨てる人民政府が姪御さん1人に軍が動くのを容認するなんて、余程の事がないとやらないが…なんでかな?」

 

 

「…姪の父親、つまり、私の義理の叔父さんは政府と共産党にパイプがあるのよ」

 

 

「ある種のパトロンって訳だ…確かにそれなら、政府や軍も動くわな」

 

 

「そして、情報を提供する代わりにその姪御さんを助けてほしい、と」

 

高塚の若干呆れ気味の言葉に続く形で滝崎は『交換条件』を言うと春麗は頷いた。

 

 

「公司とマフィア、更に軍まで動いて失敗したんだぜ。こりゃまた、レベルが上がったな……まあ、人道の為、平和の為にやるけどさ」

 

 

「やれやれ…」

 

 

 

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