転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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少し息抜きです。
まあ、神頼みは仕方ない。


125 閑話『墓参り』

翌日 マルタ島鎮守府

 

 

 

「んーと、金剛に比叡、天龍、龍田、それに吹雪……ウチからも1人出したな…」

 

そう呟きながら宙に視線を向けながら指折りで数えながら高塚は廊下を歩く。

そして、ふと見ると富山が居た。

 

 

「確か富山は……うん、富山、少しいいか?」

 

 

「なんだ、少佐か。どうした?」

 

 

「富山、これから滝崎達と墓参りに行くが、2時間程大丈夫か?」

 

 

「いいぜ…でも、誰の墓参りなんだ?」

 

 

「付いて来ればわかる」

 

そう言って高塚は踵を返した。

 

 

 

暫くして

 

 

「……なあ、場違いじゃない?」

 

 

「いや、問題無い」

 

 

「そうそう、問題無し」

 

高塚が運転する高機動車の助手席に滝崎、後ろに金剛達を乗せ、富山は天龍と吹雪の間に座らせて乗せている。

そんな中での富山からの問いに高塚と滝崎は気軽に答えた。

 

 

「むしろ、遅くなったぐらいだ。それに陸の人間からも誰か連れて行きたかったし」

 

 

「だからって、ほいほい気分で連れて来る憲兵殿は中々やるネ〜」

 

 

「おいおい…」

 

金剛の言葉に皮肉にしか聞こえない、と高塚は運転しながら苦笑いを浮かべる。

 

 

「あー、で、墓参りの件は…」

 

 

「あぁ、すまん、それだったな。富山は学校の授業で第一次世界大戦は習ったよな?」

 

 

「……ごめん、学校の授業の大半は寝てた」

 

 

「「「「「おいおい」」」」」

 

高塚と吹雪が苦笑いを浮かべ、滝崎達が呆れながらツッコミを入れる。

 

 

「仕方ないじゃん! 歴史なんて黒板の前でセンコーが喋るだけなんだもん」

 

 

「いや、まあ、そうだけどさ……ダメだ、教育の話をしたら、日本の教育行政破綻とその批判話になる」

 

 

「あはは…だが、まあ、変な風に染まってないだけマシだな、実際に」

 

富山の反論から滝崎は額に手を置き、高塚は微笑みながら言った。

 

 

「話が進まねえ…とりあえず、簡単に言っちまうと、第一次大戦の時に地中海海域で商船護衛をしていた艦隊の戦死者・戦病死者の墓があるんだよ」

 

話が進まない為、天龍が代わりに大雑把に概略を説明した。

 

 

「ふーん………え、なんで?」

 

富山の予想通りな言葉に高塚以外の全員が(車内ながらも)ズッコケた。

その後、墓所の到着まで『楽しい楽しい』歴史の授業をやっていたのは予定外ながらも予想通りで別の話である。

 

 

 

マルタ島 イギリス海軍墓地

 

 

敷地管理者に挨拶を済ませ、敷地内の慰霊碑兼墓地に向かう一行。

 

 

「……なんか、ホントに『墓地』なんだな」

 

 

「当然だろう。マルタは第二次大戦後の独立までの約数世紀間、イギリス領だったからな。地中海の要所だけに、特に第一次・第二次の両大戦を含めた死者の墓は多いからな」

 

富山の呟きに高塚が答える。

 

 

「でも、皮肉なもんだよな〜。100年前に先輩たちが命を掛けた海域で人の形をした後輩の俺らが戦ってるって」

 

 

「そうネー、しかも、今回はMay'n guestだから、皮肉ネ〜」

 

 

「それだけマルタの重要性は変わって無いって事さ」

 

天龍の言葉に金剛が苦笑いをしながら答え、滝崎が補足を入れる。

 

 

「でも、『人』だから、こうして来れたわけですよね? 私、一度来てみたいと思ってたんです!」

 

吹雪の言葉に龍田が手を打った。

 

 

「そう言えば吹雪ちゃんと比叡さんはフィンランド派兵から帰る時にマルタに寄っていたのよね」

 

 

「Oh、そうネー! 提督や副官と一緒だったネ!」

 

 

「あ、そうでした、そうでした! 確か、その時にレナータさんを…」

 

 

「比叡、その話はやめてくれ。青葉に聞かれたら面倒だし」

 

 

「いや、ここ、鎮守府の外…あ、盗聴機使うかもしんねーし」

 

 

「いや、それは無いだろう」

 

 

「うん、アイドルのパパラッチでもあるまいし」

 

そんな風にワイワイと話している内に目的地に着いた。

 

 

「綺麗にされてる」

 

 

「言っとくが、ここは墓地内でも一等地に当たる場所だからな。幾ら管理者やボランティアが綺麗にしてくれているからって周りを汚すなよ」

 

 

「うえ、そうなの?」

 

 

「そうなんだよ」

 

そして、手早く花と確保しておいた配給品の日本酒を供え、敬礼を捧げる。

 

 

(約80柱の英霊よ。参拝が遅くなり申し訳ありませんでした。されど、同じ任務に就いていた事から御容赦下さい。されど、こうして参りましたるわ………)

 

 

(……事情を知っているから仕方ないが、ちと長いぞ、高塚…)

 

高塚の真剣な表情を横目に滝崎は内心「それぐらいにしとけ」と言いたげながらも静かにしていた。

 

 

 

 

暫くして マルタ島鎮守府

 

 

墓地から帰って来た後、滝崎・高塚は富士・天龍達を解散させ、業務に戻る。

 

 

「……墓参りの件、神頼みか」

 

 

「海軍軍人なんだから理解してくれ。験担ぎぐらいしてもいいだろう」

 

 

「わかってるよ。なにせ、下手をしたら、陸自…いや、陸軍の海外派兵最初の戦闘になるかもしれないからな」

 

 

「バカ野郎、艦娘も含めてだ。まあ、彼女達は場慣れしてるから、ホローさえ入れれば大丈夫だ。問題は生身の人間である、ウチらだからな」

 

 

「更に民間人の命も掛かってるからな…当然と言えば当然だな」

 

 

「なら、意地悪するなよ」

 

 

「わかってるよ…にしても、何も情報が来ないな」

 

 

「マフィアも数あるからな。イタリア当局も探すのは大変だろう」

 

 

 

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