転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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今回は民兵隊の山本大佐とのお話。


124 非正面戦 3

翌日 0610 マルタ島鎮守府 工廠

 

 

 

「ホントに朝飯前に納入したな」

 

 

「有言実行ですよ!」

 

 

「…無言実行もやってるがな」

 

朝食前に納入される9㎜機関拳銃(改)を確認する高塚と明石。

 

 

「とりあえず、30発マガジンにしましたけど、40発マガジンにします?」

 

 

「いや、そこまでしなくていいから…要望があったらそうするけどね。ちなみに見れば解るが、改良点は?」

 

 

「よくぞ訊いてくれました! 一番は折り畳み式L字形銃床です。これで射撃時の保持・安定性は格段に改善されました。更に20発マガジンだけでなく30発マガジンも作りました。これで持続力はありますよ」

 

 

「まあ、持続力と言ってもサブマシンガンの使いどころは護身用か閉所戦闘時での制圧射撃だからな…とりあえず、受領印を押しとくよ」

 

 

そう言って高塚はいつの間にか用意されていた受領書類に判子を押した。

 

 

 

暫くして 朝食後 高塚執務室

 

 

 

「にしても、いつかは関わるだろうと思っていたマフィア案件にこんな形で関わるとは思ってなかったな」

 

 

「よくて密輸の取り締まりや艦娘の拉致・監禁か、と思いきや邦人拉致だから…まだ確定してないけど」

 

朝食後、高塚の執務室に滝崎が来室し、今回の一件の話を始めた。

 

 

「で、その件を他の皆に…」

 

 

「話は聞かせてもらった!!」

 

 

「「うわっ!? 出た!!」」

 

いきなりの第三者の声に振り向くと民兵隊の山本大佐が張り付いていた天井からスタッと降りてきた。

 

 

「同志、何処から聞いてたんですか?」

 

 

「と、言うか、何故に天井に? キツくないですか?」

 

 

「ん? 部屋に入って来る前から居たよ。まあ、ずっと天井に張り付いてスタンバっていたよ。まあ、少々立ち眩みはするが大丈夫だ。さて、本題だが、イタリアマフィアの件は我々も協力しよう。なお、詳細については盗聴させてもらった、と言う事だ」

 

 

「「あっ」」

 

知らぬが仏、と言うべきかタイミング良く間宮が山本大佐の背後にあるドアから入って来た。

 

 

「FSB(元KGB)の諜報能力をなめるんじゃねえ、との伝言も預かっているよ」

 

 

「いや、あの、同志、諜報能力云々以前に…」

 

 

「後ろに間宮さんがいらっしゃいますが…」

 

 

「えっ…」

 

高塚・滝崎の指摘で漸く気付いた山本大佐がゆっくり後ろを見ると、そこにはいい笑顔(……)な間宮さんが居た。

 

 

「あら〜、何故か不審な電波を拾って点検してみたら盗聴器かありましたのでどなたのかと思いつつ憲兵さんに報告に参りましたら…ソ連の方々でしたの」

 

何時もの微笑み顔のまま、その盗聴器を握っているであろう右手からは先程からミシミシと聞こえ、最後にはプチと潰れた音がきこえた。

 

 

 

「ひぃっ! 仕掛けたのは俺じゃない! やったのはFSBの連中だ!」

 

 

「でも、お仲間内ですよね?(ニコニコ)」

 

 

「ちょっ! やめっ! 俺は無実だー!!」

 

 

「えぇ、わかってますよ。ですから、民兵隊の皆様は1ヶ月間の間宮出入り禁止です(ニコニコ)」

 

ホントにいい笑顔(……)のままで発言する間宮と青くなる山本大佐。

その時、ドアがノックされた。

 

 

「なあ、高塚、間宮を…あぁ、ここに居たのか。間宮、ロシア連邦政府のお偉いさんが私と間宮に電話だが話があるそうだ。少し来てもらえるか?」

 

後ろから困惑顔の民兵隊幹部を連れて松島宮がそう言った。

 

 

「わかりました。では、ちょっと行ってきます」

 

 

「お気をつけて〜」

 

滝崎がそう言って見送った。

 

「よかったですね、同志。命拾いしましたね」

 

 

「あ、あぁ」

 

 

「まあ、いずれ民兵隊にも協力を仰ぐんで話す予定でしたけど…とりあえず、盗聴はやめとくように言っといて下さい」

 

 

「そうだな、命がいくつあっても足りんな…話を元に戻していいかな?」

 

 

「はい、どうぞ」

 

 

「うむ、まずはこれを見てくれ。2人はどう思う?」

 

そう言って懐のから2枚の写真を取りだして見せる。

写真には何かの摘発時の写真らしく、押収した証拠品のベストを掲げており、もう1枚はそのベストを『解体』した時の写真だった。

 

 

「ベストの中に爆薬がたんまりなら、自爆テロ用のベストですか?」

 

 

「ただ、爆薬と一緒にベアリング球が並んでいるのが気になるところだがな」

 

写真を見た高塚と滝崎は各々の感想を言った。

 

 

「私も最初はそう思ったよ。3枚目の写真と報告書を見るまではね」

 

そう言って山本大佐は3枚目ね写真と報告書を取り出した。

 

 

「このベアリング球にはワックスで塞がれた直径0.28㎜の孔があり、しかも、ベアリング球は金属探知機に反応しない。そして、このベアリング球の中身は…」

 

そう言って付属報告書のある一点を指で叩く。

そこには『神経ガスG系剤 イソプロピルメチルフルオロホスホネート』と書かれていた。

 

 

「……なあ、似たような設定のアメリカ映画なかったけ? アルカトラズ刑務所を元軍人のテロリストが占拠する話の」

 

 

「うろ覚えだが、題名は『アルカトラズ』だったかな? あれもベアリング球系容器に入ってたな。にしても、いったい、これを何処から?」

 

 

「ほら、深海棲艦出現直後の混乱で何処かの国が保管していた化学兵器が盗まれた、とスッパ抜かれた事があっただろう?」

 

 

「あぁ、ありましたね。深海棲艦の襲撃を受けた保管施設が…当事国は流出含めて全否定してましたけど」

 

 

「うむ、このベスト500着に未確認だが艦娘が拘束されている情報もある。すまないが、それもカラビニエリのお嬢さん達に頼むよ」

 

 

そう言って山本大佐は出て行った。

 

 

「……ヤバイな」

 

 

「あぁ、話が単純じゃあなくなったな」

 

 

 

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