転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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12 マルタ島領海を確保せよ!

マルタ島鎮守府内

 

 

 

「提督、副官、扶桑艦隊、鈴谷艦隊、敵艦隊と交戦を開始!」

 

神通によるバレアレスの教育風景を眺めていた松島宮、滝崎、カルメンの所に大淀がそう言って入ってきた。

 

 

「戦況はどうだ!?」

 

 

「未だ不明…もう少し待てば詳細が解ると思います」

 

 

「まあ、今は落ち着いて続報を待とう。ここで自分達が慌てたところで、何の意味も無いしね。じゃあ、ちょっと御茶をいれてくるよ」

 

そう言って滝崎は執務室を退出した。

 

 

「ねえ、滝崎副官って戦闘中は何時もああなの?」

 

「ああと言えば、ああだが……本来なら、前線に出て直に戦況を把握したいが、残念ながら方法がないからな、少し焦れているだけだ。それに扶桑達をあいつは信頼しているからな」

 

そう言って松島宮は苦笑いを浮かべて続けた。

 

 

「付き合いの長い相棒だ。故にわかってしまうがな…あいつは良い奴だ」

 

それを聞いたカルメンは考えた。

松島宮がどれ程、副官である滝崎を信頼しているのかを。

 

 

 

滝崎がお茶をいれて持ってきてから暫くして、扶桑艦隊から敵艦隊撃滅の報告が入った。

 

 

「さすが扶桑達だ」

 

 

「さすが日本海軍です!」

 

松島宮の言葉にカルメンが素直に賛辞を送る。

たが……滝崎は違った。

 

 

「……おかしいな。扶桑達が担当したのは甲艦隊。鈴谷達の乙艦隊…なんで鈴谷達からの連絡はないんだ?」

 

戦力的にはどちらも拮抗しているが昨日の戦闘もあって、敵も戦力は充分でない筈…と考えて送り出しただけに滝崎は疑問を露にする。

 

 

「扶桑達には龍驤がいるのだから、早いのは仕方ないのではないか?」

 

 

「……いや、何かある。大淀、すまないが龍驤に97艦攻を出して偵察する様に指示してくれ」

 

 

「わかりました」

大淀が通信機に向かうのを見ながら滝崎は鈴谷達を気にしていた。

 

 

 

その頃……鈴谷達は……

 

 

 

「あっちゃー…ちょっと、ヤバイね〜、これ」

 

 

「そう言う問題ですの、これは?」

 

鈴谷と熊野は肩で息をしながら話していた。

その後ろに居る川内、島風、陸風も同様だ。

 

 

「にしても…あの重巡堅くない?」

 

 

「いいえ、確実に何発かは直撃・貫通していますわ……でも、『根性と精神力』で立ち続けてますわ」

 

川内の問いに熊野が答える。

そう、鈴谷隊が苦戦している原因は『乙艦隊』の旗艦である重巡洋艦リ級だった。

接触時、リ級2隻、駆逐艦2隻の艦隊で昨日の戦闘もあってか駆逐艦2隻とリ級1隻は手早く片付ける事が出来たのだが、この旗艦のリ級だけは相当数の砲弾を受けながらも未だに立っていた。

 

 

「それに装甲に対して主砲の威力が強力ですわ。至近弾であの威力…危うく直撃でもすれば危ないですわ。本当に重巡洋艦でしょうか?」

 

 

「いや、重巡洋艦で間違ってないよ…あいつだけ特別なんじゃない?」

 

……こんな会話を交わしつつ、どう攻めるかを考える鈴谷と熊野。

 

 

「……ここは数と日本海軍の十八番で戦いますか」

 

 

「あら、それは副官の真似ですか?」

「そんな訳ないじゃん。川内、島風と陸風を頼んだよ」

 

 

「任せて…島風、陸風、行くよ」

 

 

「おう!」

 

 

「はい!」

 

先ずは鈴谷と熊野による一斉射撃。

もちろん、向こうも避けるし、お返しとばかりに砲撃を行う。

対して、鈴谷達も散開し当たらない様にしつつ、撃ち返す……これはさっきまでやっていた事だ。

ただ、今回は鈴谷達は囮だった。

それにリ級が気付いた時には既に手遅れだった。

 

 

「連装砲ちゃん、砲撃開始!」

 

 

「単装砲ちゃん、お願い!」

 

 

「砲撃開始!」

背後を島風、左右を陸風と川内が就き、砲撃を開始する。

島風の連装砲ちゃん3機、陸風の単装砲ちゃん5機、これに川内の主砲が加わる。

しかし、どれも14〜12.7㎝の小口径弾な為、主要装甲部を撃ち抜くには至らない。

だが、既に『それ』はリ級の足元に迫っていた。

リ級が『それ』……川内達が発射した酸素魚雷……に気付いた時には既に回避など不可能だった。

 

 

 

3時間後……鎮守府埠頭

 

 

 

「馬鹿者!!!」

 

……戦闘を終えて帰って来た鈴谷達に先ずは滝崎の怒鳴り声が出迎えた。

 

 

「敵のリ級が手強くて戦闘に集中しなければならなかったのは仕方ない…だが、報告を度忘れしてどうするんだ!!」

なお、説教を受けているのは鈴谷、熊野、川内である。

 

 

「まあ、取り敢えず無事に戻って来てよかったよ……まったく、龍驤さんに97艦攻出して偵察してもらう前に、連絡が欲しかったな……で、島風、陸風、その子は誰?」

 

島風と陸風が2人で肩を貸す少女について聞いてみる。

 

 

「旗艦のリ級を倒したら、その子が眠って出てきた」

 

川内が2人の代わりに答えた。

 

 

「直ぐに間宮さんの所へ。鈴谷達もお風呂に入っておいで」

 

 

 

その日の夜……提督執務室

 

 

 

「……わからない?」

 

 

「はい。少なくとも日本の物ではありません」

 

鈴谷達がドロップした艦娘の艤装を調べた明石の第一声は「わからない」だった。

 

 

「うーん…両肩の大型砲塔と腰の副砲・高角砲、足の魚雷発射管……滝崎、心当たりはあるか?」

 

 

「あくまでも推測だが…ドイツのポケット戦艦…装甲艦の可能性が有ると僕は見てる」

 

艤装から推測した自分の意見を滝崎が言った。

 

 

「ふむ…だが、訊こうにも名無しの少女は眠ったまま……すまないが明石、当分看ていてくれないか?」

 

 

「わかりました」

 

 

 

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