転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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一話で纏める予定が、やっぱり無理だった。
因縁の対決、姐さんVSアメリカンヤンキー。(そのまんま)


119 タイマン対決 前編

数日後 朝 マルタ島鎮守府 食堂

 

 

「あ〜ら、キリシマサン、朝から姐さん顔、似合ってますね〜」

 

 

「あら、ワシントン。偏食とはいい度胸ね」

 

……普段なら喫食時間が違う為、この時間帯に好敵手な2人が遭遇する事は無いのだが、今日はワシントンが早起きしたので鉢合わせになった。

そして、2人の何時もの罵倒から始まる一触即発な展開となる。

 

 

「だ、か、ら、私はこのハンバーガーが燃料なの」

 

 

「あ、な、た、それはやめなさい、と周りから言われてなかったかしら?」

 

 

「いいじゃない、誰も困ってる訳でもなし」

 

 

「あら、流石にこれは不味いと思うけど?」

 

そう言ってワシントンのお腹をムニと摘む霧島。

もちろん、この痴話喧嘩(?)の様な状況な為、周りの視線も集中している中での『わざと』な行為である。

 

 

「……どうやら、もう一度ソロモンの海に沈みたいみたいね」

 

 

「あら、なら、東シナ海に案内しようかしら?」

 

 

「ストープ! 止め止め! 私闘禁止! てか、もう少し穏やかにやれ!」

 

そこへ高塚が登場し、場を収める。

 

 

「まったく、元気ありすぎだろう、朝から」

 

 

「「だって〜」」

 

 

「『だって〜』じゃあない。とりあえず、この私闘は預かる。てか、このままにしとくとヤバイ…青葉、記事にするなら、こんなのはよせ」

 

 

「うぇ!? 何でメモしてるってわかったんですか!?」

 

食堂の入り口でコソコソと愛用のメモ帳にメモをしていた青葉は高塚の言葉に驚きながら訊いた。

 

 

「当たり前だ…それより、号外出せ。『霧島とワシントンは午後からタイマン演習をやる』とな」

 

 

「「「…えッ??」」」

 

高塚の突然の言い様に固まる青葉、霧島、ワシントンの3人。

 

 

「おいおい、天下の青葉新聞がまさか号外を出せないなんてないよな、青葉?」

 

 

「え、あ、と、当然、出せますよ! 今から早速出しますね!」

 

そう言うと青葉はダッシュで廊下の彼方へ消えていった…煙を巻き上げながら。

 

 

「あの…タイマン演習って…」

 

 

「私闘はダメだが、『演習』は禁止されてないからな…そっちの方がスッキリするだろう?」

 

霧島の問いに高塚はそう答えた。

 

 

 

 

昼休み中 食堂前

 

 

「少佐、ワシントンと霧島をなぜ罰しないのですか!?」

 

昼食を終えたところで高塚は筑波に捕まり、こう問われた。

 

 

「なにを根拠に? まさか、私闘未遂で?」

 

 

「そうです! これでは風紀と規律と統制が…」

 

 

「あのな…それを言い出すと別の意味で統制が取れないの。それにそれは互いの為にもならない。だから、この演習をやるんだ」

 

 

「まさか、演習の名を謳った私闘を…少佐、明らかに自衛隊法違反です!」

 

 

「少尉、君もなかなか頭が硬いね。しかしだ、すでにこれは認可されている。まあ、そう見えても仕方ないがな」

 

そう言うと後は聞く気もないと高塚は筑波の前から去って行った。

 

 

 

暫くして 訓練場

 

 

「さあ、さあ、さあ! 会場の観客席は大いに盛り上がっております! 突然始まりました、霧島さんVSワシントンのタイマン対決! 司会兼アナウンサーはこの青葉が、解説は高塚少佐と滝崎副官が担当致します!」

 

 

「「よろしく」」

 

 

「ところで、松島宮司令は?」

 

 

「『解説ならお前の方が適任だ』と言って観客席で観戦するそうです」

 

青葉の問いにそのまま答える滝崎。

 

 

「にしても、タイマン演習とは考えたな」

 

 

「私闘で怪我されるより、演習でボテクリカマしてスッキリしてくれた方がマシだ。それに良い宣伝になる」

 

 

「宣伝はねーだろ、宣伝は」

 

高塚の答えに滝崎は苦笑いを浮かべる。

 

 

「ではでは、両選手のコメントを。ワシントンさんは『古老マフィアはとっととソロモン海に帰れ!』だそうです」

 

これを聞いて観客席の日本勢からはブーイングが飛ぶ。

 

 

「ヤル気満々だな」

 

 

「笑えないから、やめてくれ」

 

「続きまして霧島さん。『船の性能だけが戦力の差で無い事を教えてあげます」との事」

 

 

「「ガンダムだな〜」」

 

そんな2人の声を搔き消す程の歓声が観客席から巻き起こる。

 

 

 

「解説、要らなくね?」

 

 

「何を言ってるんですか、やっぱり、こう言った事は解説がいないと盛り上がりませんし」

 

 

「いや、充分盛り上がってると思うが…」

 

解説に関してどうでもよくなった2人が呟く。

 

 

「それで、この演習をどう見ますか?」

 

 

「確かにワシントンは脱軍縮型戦艦であるノースカロライナ級の二番艦だ…あっ、あそこで「フラグを作るなー」と叫んでるノースカロライナさんの妹ですから、性能面では速力を除き、金剛型の上ではある」

 

 

「だが、『世界最強の巡洋戦艦』の名で金剛四姉妹を恐れてアイオワ型を造ってしまうだけのネームバリューがあるし、世の中やってみないとわからない事があるからね〜、とりあえず、互角かな」

 

 

「さすが御二方ですね! 冷静かつ、わかりやすい解説、ありがとうございます!」

 

おいおい、ホントかよ、とツッコミを入れる暇もなく、青葉が続けた。

 

 

「では、両者準備が整ったようですね! 大丈夫だと思いますが、念の為に審判に大淀さんを入れて行います。ただいま、ゴングが鳴りました! 演習開始です!!」

 

……こうして、霧島とワシントンのタイマン対決が始まった。

 

 

 

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