転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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さーて、どうなるやら…。
なお、本日はPMCの方も更新致します。


115 濃霧の中で 4

クレタ島 深海棲艦側司令部

 

 

「哨戒ヲ増ヤシタノカ?」

 

 

「ソノ模様デス」

 

濃霧前にクレタ島へやって来た戦艦棲鬼と副官みたいな重巡ネ級。

襲撃後の対応をネ級に訊くと手慣れた口調で返答した。

 

 

「ドウシマス? 行キマスカ?」

 

 

「…イヤ、止メテオコウ。下手二行クト同士討チ二遭ウ」

 

なお、戦艦棲鬼は周りから『脳筋』の様な言われ方をしているが決してそうではなく、普段は冷静に戦術・戦略を考える事は出来る。

但し、熱くなると脳筋方向になってしまうだけである…なお、最近の彼女の読書トレンドは『ドラッカー等の経営手法解説本』と中々な物である。

兎にも角にも、戦艦棲鬼は下手に指揮系統上において上位にある自分が行けば混乱すると思い、下手な介入をしなかった。

それは不幸だったのか、幸運だったのかは……なんとも判断し辛い事ではあるのだった。

 

 

 

その頃 皐月達

 

 

「チィ、うざったいわね! FIRE!」

 

舌打ちをしながらワシントンは主砲を発射する。

しかし、主砲弾は明後日の方向に飛んでいく…何故なら、ワシントンは『正確』に敵を捕捉していないからだ。

 

 

「ワシントン! 下手に主砲を撃ったりしない!」

 

 

「こっちの射撃の邪魔になるから、あんまり撃たないで!」

 

 

「後手後手な上に空回りですね、ワシントンさん」

 

 

「ショー! うるさいから、貴女は黙りなさい!」

 

そんなワシントンの行動に姉のノースカロライナだけでなく、皐月やネオ・ショーも口を出す始末。

ただ、この状態になった原因はワシントンだったりする。

皐月・ネオ・ショーの背後に現れた駆逐艦イ級に条件反射で皐月が止めるのも聞かずに主砲を斉射で撃ってしまった。

これが艤装の副砲や皐月の12㎝砲なら誤射の類で深海棲艦側も判断で迷っただろうが、戦艦の主砲と言う桁違いな轟音は自らの存在を暴露してしまった。

よって、この轟音を頼りに増援警戒部隊が集まって来て、薄くなったとは言えど未だ晴れていない霧の中で自然的に戦闘状態になりつつあった。

 

 

「サツキ、そっちの部隊は!?」

 

 

「そう言われても解んないよ!」

 

 

「持ち堪えるしかないでしょう!」

 

罵倒の様な叫び声をあげながら接近阻止射撃を行う。

しかし、徐々に距離を詰められつつあった。

 

 

「大丈夫です。ワシントンさんでもあるまいし、いつかきっと、私達を見付けて来てくれますから」

 

 

「ショー、なんでアンタはそんなに冷静なのよ!」

 

 

「まあ、日本艦となって生き残ったからかもしれませんね」

 

こんな状況下にも関わらず、冷静であるネオ・ショーにイライラ度MAXのワシントンの声もマイペースで答える。

 

 

「そのネオの冷静さを妹にも欲しいわ」

 

 

「姉さん!!」

 

 

「ちょ、ちょっと! 喧嘩なら後にして〜!」

 

漫才でもやってるかのかよ、とツッコミを入れたくなる状況の中、一隻のイ級が隙を突き、不意に無警戒なネオ・ショーに飛びかかる。

しかし、寸前に上空から降って来た500キロ爆弾の直撃を受け、爆散した。

 

 

「なっ! いったい、何処から!?」

 

 

「…私にはわかります。この正確な爆撃は…ゴコウセンですね」

 

ノースカロライナの驚きながらの問いに微笑みながら答えるネオ・ショー。

そして、彼女の口から出た『ゴコウセン』の言葉に皐月は笑みを浮かべながら叫んだ。

 

 

「翔鶴さんと瑞鶴さんだ! なら、来てくれたんだ! 高速支援部隊が!」

 

その叫びに応えるかの様に霧を薙ぎ払うかの様な大口径弾の砲撃と空爆が今まで皐月達を翻弄していた増援警戒部隊を吹き飛ばした。

 

 

「皐月ちゃん! おまたせ!」

 

 

「比叡さん!」

 

1番に駆け付けた比叡に皐月はその胸に飛び込み、比叡は迎え入れるとそのまま抱き締める。

が、しかし……次の瞬間、その感動の再会モードは崩れる。

 

 

「……その格好、貴女、ワシントンね」

 

 

「あらあら、マフィア・キリシマじゃあないの?」

 

爆炎が流れ晴れた中、互いに『殴り合った仲』の再会にバチバチと電流が疾る。

そして、そのまま『再戦』に流れ込もうとした瞬間……

 

 

 

「Stop! ワシントン、ダメよ!!」

 

 

「ひぇー! 霧島、ダメだって!!」

 

 

「霧島さん! ダメだよ!! ワシントンさんも止めて!!」

 

互いの姉(+皐月)が止めた。(当然である)

 

 

「……ワシントンがここまで堪え性の無い人とは思いませんでした」

 

 

「ショー!」

 

 

「はいはい、因縁なら後にして。サッサと引き上げる!」

 

ネオ・ショーの一言に対し、ワシントンが怒鳴るが、それを無視して瑞鶴は引き上げを口にした。

 

 

 

 

暫くして マルタ島鎮守府

 

 

 

「まあ、結果的には良かったよ。素直に喜べ無いけどな」

 

報告を受けた滝崎は苦笑いを浮かべながら言った。

 

 

「大丈夫、大丈夫。なんかおきる前に俺が止めるから」

 

滝崎の言葉に高塚が笑いながら言った。

 

 

「まあ、頼むわ。さて、全部隊無事に引き上げるなら、態勢を解除するか」

 

 

「おう、松島宮に伝えてくるわ」

 

 

「うん、頼む」

 

 

 

同じ頃 クレタ島深海棲艦司令部

 

 

 

「ソウカ、逃ゲラレタカ」

 

 

「ハイ…意外ト素っ気ナイデスネ」

 

ネ級からの報告に戦艦水鬼はそう言っただけだったので、思わずネ級が訊いた。

 

 

「奴ラノ目的ハアクマデモ、威力偵察ト逸レタ味方ノ収容ダ。目的ヲ達シタノダカラ、帰還シテモオカシクハ無イ」

 

 

「マア…ソウデスガ…」

 

 

「ソレニダ…焦ラズトモ、向コウハ再ビヤッテ来ル」

 

そう言って戦艦水鬼は美味そうにワインを飲んだ。

 

 

 

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