転生提督・副官のマルタ島鎮守府戦記   作:休日ぐーたら暇人

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……またもや意味のわからない(そして、話題と合致するか怪しい)題名。

後半部分は伏線(一応)


107 宿命と思い

翌日 マルタ島鎮守府 滝崎執務室

 

 

「十七駆逐隊を預けてほしい…?」

 

 

「あぁ、これは神通さんからの提案だ」

 

 

「神通さんが…ね」

 

それを聞いて滝崎は顎に手を宛てて考える……が、直ぐに納得した様に頷く。

 

 

「わかった。松島宮には『陸戦訓練』とか何とかで説明しておくよ。どうせ、お前と神通さんなら、その関係だろうし」

 

 

「あはは…いや、すまん。恩にきる」

 

 

「なに、慣れた事だ」

 

そう言って高塚の要請書にスラスラと名前と判子を押す滝崎。

 

 

「……にしても、平和…いや、平静だな」

 

 

「あぁ、平静だな」

 

そう言って互いに外に視線を移す。

視線の先には先の戦いで負傷・収容されて治療を受けていた深海棲艦で回復した者達が第六駆逐隊をはじめとした艦娘達と共にリハビリに励んでいる光景だった。

 

 

「……そう遠くない先で、また彼女達を砲火の下であの深海棲艦と戦う事にするんだな…俺達が」

 

 

「俺なんか、陸自でやれない事を結構やってるからな…更にヤバイよ」

 

 

「「やっぱり、因果な商売だな」」

 

互いに苦笑いを浮かべながら言い放つ。

そして、飽きるれる様に互いに溜息を吐いた。

 

 

 

その頃 甘味処間宮店内

 

 

「……なあ、ズイカク、リュウジョウ」

 

 

「なによ、バカE」

 

 

「瑞鶴、そろそろ、その言い方直した方がええで。で、なんや?」

 

 

「いや、今更だが…私の事をどうとも思っていないのか?」

 

エンタープライズの言葉に瑞鶴と龍驤は互いに顔を見合い、そして、その意味合いを理解して「あぁ〜」と言いながら頷き合う。

 

 

「ホンマに今更な話やな〜」

 

 

「時々、あんたの事がわからなくなるわ。哲学者みたいな事も言うし」

 

 

「いや、まあ、確かにそうだけど…ほら、なんか、こう、ね?」

 

 

「まあ、言いたい事はわかるで、ウチもいきなり君が配属された時はごっつう内心複雑やったしな」

 

ニヘラニヘラと笑いながら龍驤が言葉を続ける。

 

 

「しかしや、それを聞きたいんやったら、憲兵さんやろな」

 

 

「なんで?」

 

 

「あれ、知らんの? 憲兵さん、あれでも元は砲術の人間やで? 初期の深海棲艦迎撃戦に参加してるんやで?」

 

 

「いや、それは聞いた覚えがあるような気もするけど…それが?」

 

 

「それが、って、ホンマに何も知らんの?」

 

余りにも瑞鶴の知らなさぶりに龍驤も訊く。

 

 

「だって、後片付けとか色々あってゆっくり話もしてないもん」

 

 

「なんやねん、それ」

 

 

「…まあ、私も似た様な状況だから、なんとも言えないけど…」

 

 

「あー、もう、2人は後で加賀さんにでも聞いとき。兎にも角にも、あの憲兵さんに深海棲艦は仇敵かどうか訊いてみ? 多分、『仇敵? 復讐なんてナンセンスだ』なーんて、答えるで、きっと」

 

 

「「……あの憲兵さんだと、容易に想像出来るんだけど?」」

 

 

「…ホンマ、君ら、良いコンビやな」

 

呆れ気味に龍驤がぼやいた。

 

 

 

 

その頃 日本本土 東京 防衛省 陸軍部会議室

 

 

 

「……マルタでの一件、どう思う?」

 

上座に座る将官の言葉に集まっていた陸軍幹部達が苦悩の表情を浮かべる。

何故かと言うと…マルタ島鎮守府に派遣した高塚が本来の仕事(提督の粗探し)を忘れてチャッカリと向こうに溶け込んで活躍しているからだった。

しかも、前回の作戦では自ら鎮守府の残存戦力を率いて撃退し、その指揮能力の高さを地中海諸国に見せつけ、各国からも賞賛されていた。

本来であれば陸軍上層部としては嬉しい事なのだが……そうならない理由がある。

何故なら…高塚本人はわかりきっている事だが…陸軍としては現体制下(指揮系統・統制下)で勝利したいのであって、高塚の様に指揮下から外れた状態は『独断的戦闘』であり、『今までの常識的』には『認められない』のである。

これが表面的になれば『陸軍(旧陸自)の暴走』であり、世論的・政治的に衝き上げをくらい、自らの人生に関わるからだ。

 

 

「やはり、今からでも彼を本土に帰すべきかと…」

 

 

「その一件だが、無理だ。今まで向こうの提督…松島宮少将が『勝手な本土召還は許可しない』と海軍部を通して言ってきていた。更に今回の事で各国にも名が知られてしまった。特に先日、イタリア大使館武官がやって来て『高塚少佐が間に立っている為、カラビニエリもドイツ海兵隊も何の不都合も無く鎮守府と連携がとれている』と言われたからな」

 

 

「つまり、下手に召還したら、派遣部隊も黙っていない、と」

 

 

「それどころか、政治的に不味い。今の状態で人事的に下手な事をすればあっという間に騒動になってしまう」

 

 

「艦娘の『青葉新聞』に知られれば更に厄介だ。なぜなら、下手な零細メディアより影響力がある」

 

そんな意見が出て、誰もが溜息を吐いた時、ある幹部が閃いた。

 

 

「召還出来ないのなら、こちらから人を送って監視させては?」

 

 

「ふむ、粗探しの監視が…まあ、不味い物を見付けて、それを証拠に彼を召還するのか」

 

 

「大丈夫ですかね? そもそも、彼の親戚が副官として居ると言う事は松島宮少将も知ってると言う事では?」

 

 

「ならば、松島宮少将達も共謀している、と言う事では無いか。ちょうどいい話だ」

 

 

「……下手をしたら、マルタ島鎮守府だけではなく、地中海戦線にすら影響がありそうですが?」

 

 

「そこがやり取り…交渉と言う物だ。流石にこれには首を縦に振るしかあるまい」

 

……そんなこんなで決まった事が別の意味で仇となる事に陸軍上層部が気付かなかったのは『旧陸自』のままであったからかもしれないが……この時、この場の誰もが思いもしなかった。

 

 

 

 

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